ただ今、列車内が大変込み合って・・・
よぉ
わっ!! …ビックリした、今折角試験勉強始めようと思ってたのに
悪ぃ悪ぃ、ちょっと顔見たくなったもんで
どんな理由だよっ!
えー、いいじゃねぇかよ。減るもんじゃないし
そーゆー問題じゃなくて!!
「慶はさぁー」
さっき近所のコンビニで買ってきたペットボトルのサイダーの蓋を開けるのに苦労しながら、線路と道路を隔てる金網の上に座っている幼馴染を見上げた。
「何で女の子達の告白を断ってるの? 誰か好きな人居たりすんの?」
「!! ゲホッ、ゴホゴホ…」
飲んでいた缶コーヒーに咽たのは、座っているせいでよく分からないがすらっとした長身の男。
「大丈夫?」
怪訝そうな顔をして見上げるその先には、都会の喧騒と照明によって薄汚れ、淀んでしまった闇空があった。
「大丈夫だけど…てか、考えても見ろよ。よく知らん奴がオレのこと好きだから付き合えっつーんだぜ、オレの何に惚れてオレの何を理解してんだっつの」
「ま、まあね…。でも、満更でもなかったりするんでしょ」
「うーん、女の子に好かれるのは悪い気はしないけど…」
け、けどって……。
「オレはせめて友達から始めて欲しいな。まっ、多分ずっと友達止まりだろうけどなー」
「分かるー! 流石に私にコクってくるバカな奴は居ないけど、多分同じ事思うと思うよ」
半分冗談のつもりで言ったその言葉に、一瞬で慶の顔から表情が消えた。
「じゃあ、友達からならいいんだな」
へ?
「ど、どういうこと?」
シャンッ
金網から飛び降りてちょうど私の隣に着地した慶は、蒼い月明かりと街灯の光を受けて、知らない男に見えた。
「紀陽……」
「な、に…?」
「蓋、開けてやろうか?」
そういえばさっきから開けようとして、手が滑って全然開かない蓋にイライラしてたんだった。
「いいの? やった、ありがと」
プシュッ
炭酸独特の空気が抜けるような音がして、私があれだけ悪戦苦闘していた蓋はカンタンに開いた。
「うわぁ…、簡単過ぎてなんかムカつく」
「お前が力なさすぎなんだよ」
「るせー」
顔をしかめて舌を出す。
「そんなトコも、大好きだけどな」
………はい???
え、今、サラッと流されてよくわかんな…
えぇ??!
「だから、大好きだって」
これ、最初考えてたのとはちょっと変えました。
あんまり展開速すぎてもアレですから。
ただ今、自分を焦らしてます。