傍観者の姉令嬢はいつも忙しい。ずるいずるいといつも文句を言う妹観察をしていたらなぜか王太子殿下と婚約をすることになりましたが? どうなってるのですか。妹がお姉さまずるいとうるさいのですが!
「どうしてどうして、お姉さまがレオナルド様と婚約するのよ!」
「それはこちらも疑問ですわ」
私は妹が地団駄踏んで床に転げまわるのを観察しながらこう答えるしかありませんでした。
いつもこの攻撃をしてくるのですが、これで2506回目です芸がありません。
この妹はリデルといい2歳年下です。
見ているといつもずるい、泣く、転げまわる。大声叫び攻撃のスキルをもって両親と私を攻撃してきます。
この頃あまり芸がないなあと思うようになってきました。
私はアネット・ミレニアムといいます。当年とって15歳、妹は13歳です。
結婚適齢期の私と、まだ二年ある妹とだから、私が婚約者に選ばれたと思うのですが。
そう言ってみたら「それは間違ってますわ!」と屁理屈攻撃が来ました。
「将来的にはどうなるかわかりませんし、そろそろ泣き止んだらどうです?」
「……いつもそうですわ。そうしていつもいつも私の大切なものをお姉さまはとるのですわ!」
それはこちらのセリフですよ。
いつも私の誕生日プレゼントをずるいずるいといって大声で泣き叫びとるのはあなた。
そして私が文句をいえば両親がお姉ちゃんだから攻撃で黙らせる。
いつものことでありました。慣れてしまったほどですわ。
仕方ないのでこのずるいずるいと泣き叫ぶ生き物を観察することにしました。
芸がないなあと思う今日この頃です。
「まあいつかあなたも婚約者になれますわよ」
「誰のですかあああ!」
「どなたかの」
「それではだめなのですわああああ!」
ああ頭が痛くなってきました。
いつもいつもこれでした。
このはじまりはなぜか私が王太子殿下の婚約者に選ばれたことからはじまります。
私が魔法学園の入学テストに受かりまして、そしてうきうきしてこの妹と離れられると期待して、寮生活をしようとしていました。
するとなぜか私が王太子殿下の婚約者に選ばれたと父が青い顔をして館に帰ってきたのです。
うちは伯爵、しかも下位、私が選ばれる可能性など皆無。
なぜかと考えても思い浮かびません。そしてこの妹の攻撃がずっと続いているのです
私はどう考えてもあり得ないなあと考えていました。
観察してそして俯瞰する。私が思考を巡らしていると、挨拶にいかないとと慌てるように父が言い出したのです。母も同様です。
まあそうですけど……このずるい攻撃の妹もですか?
王宮にいくのも社交界デビュー以来なのですけど。
どうしてこの地味なお姉さまがあああああと絶叫する妹を見ながら、どうしてこうなったのかなあと私はため息をつくしかありません。
たしなめたら嫌味、そして黙っていればぴいちくぱあちく。
私は慣れていますが、殿下には相当な負担のようでした。
そして私は……。
「すまないが、君とは婚約破棄させてほしい」
「そうですか、わかりました」
「申し訳ない、君の妹とつながりがあると思うだけで頭が痛いんだ」
「わかります……」
私は殿下と婚約を解消しました。
気持ちはわかります。私はあれと血のつながりがあるだけで離れられないのかと絶望していますもの。
しかし殿下の考えは甘かったのです。
妹は猛然と殿下にアピールをはじめました。
まあこうなるかなとは思っていたのですが……。
「……すまない、君とまた婚約をしたいのだが」
「はあ」
「アネット、申し訳ない。君自身は僕は好きだったんだ、あれの対処法をようやく思いついたんだ」
「わかりました」
私は殿下が疲れ果てた顔をしながらも、私に再び婚約をしたいという申し出を受けることにしました。
私とて無口であまりお話しないタイプの殿下が好みだったのです。
あの口うるさいのと四六時中一緒だと正反対を好むようです。
「嘘ですわ、どうして私が国外追放なのですか!」
「姉であるアネットの大切なものをいつも盗り、反対にアネットがお前をいじめているという嘘を私に申し出た罪によりだ」
なぜか妹が断罪され、辺境に追放になりました。
まあなぜというよりこういう嘘つきを殿下が大嫌いだったからもありますが。
相手の好みのタイプくらい把握しておくべきでしたわよね妹よ。
私は殿下の横に並びたち、おしゃべりは嫌われますわよとにっこりと笑いかけたのでありました。
妹がいつもする最上級の笑みで。
そして私はいつまでも殿下と幸せに暮らして、え? 妹の行方はわかりません。
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