彼昔話―ニ 「種族をこえた友情」
一体の龍は、一人の少年と出会いました。
出会った子どもは酷く臆病で、酷く衰弱しているように見えました。
龍は少年を助けた後、地脈から偶然にも少年の過去に触れてしまいます。
少年の過去を知った時、龍はその少年と「同じ時間」を歩むことに決めました。
龍と人。
種族違いの二人は、決して言葉を交わすことはできませんでした。
しかし、時間が経つにつれて、少しずつ互いの気持ちを理解できるようになっていきました。
いつしか、言葉が通じなくとも互いに「親友」と思うようになっていました。
ですが、少年が青年となった頃、一つの事件が起きてしまいます。
それは「龍狩り」。
多くの人間が龍に向かって襲い掛かりました。
龍を庇おうとした青年は、欲望に塗れた人間達に「愚者」と蔑まれ、剣を向けられます。
彼らの魔法によって怪我を負った「親友」を見て、龍は大きな咆哮をあげました。
そして、青年が逃げる時間を稼ぐために、己の命を狩りたいと願う「愚者」達の前に立ちはだかります。
『我が盟友のために――命を……捧げよう』
龍にはその選択が正しいのか――分かりませんでした。
しかし、龍は最期の最期まで信じ続けるしかありませんでした。
その選択は間違っていなかったと。