タロウの居場所
嫌な臭いの二本足に身体の自由を奪われたボクは、めちゃくちゃ眠くなった。
この場から逃げないと危険な感じが強くなる。
でもボクは逃げることができない。
お腹が痛くて仕方ないのも手伝って、ボクは逃げることを諦めた。
ボクがボクじゃなくなった感じと言うか、ボクは何もできなくなって、怖くなってハナ先生の姿を探したけど、見当たらないし、大好きなハナ先生の匂いが無い部屋で、お腹にギラギラ光るものを押しつけられた。
ボクの牙より鋭いそれはボクのお腹の皮膚に当たった。
痛くないけど怖かった。
ボクはもう助からないと思った。
ボクはハナ先生のところに帰りたいと願ったけど、それは叶わない願いだと感じた。
どれくらい経っただろうか。
長いような短いような怖い時間が過ぎて、ボクのお腹の痛みは酷くなった気がする。
やがてハナ先生がボクを迎えに来た。
ボクはハナ先生の温かい腕の中に飛び込みたかったけど、足がボクに逆らったように動かない。
嫌な臭いの二本足がハナ先生に何か伝えたら、ハナ先生の顔色が悪くなった。
「タロウ。ごめんね。先生ありがとうございました」
「ハナさん。医師として手の施しようが無くすみません。ここまで内臓に癒着していると町医者の手ではなんとも」
「私は諦めませんことよ。タロウおいで」
ハナ先生の腕の中で、ボクはボクである時間が残り少ないなんて知らなかった。
お腹の痛みが酷くなった。