「二本足のぼく」
第3話「二本足のぼく」
ある日、ボクは不思議な匂いのする水が入ったものをみつけた。
いつも飲んでるお水と違って、植物の匂いが複雑に混じっているの。
ボクの自慢の鼻でもよくわからないものだけど、毒じゃなさそう。
ハナ先生のお部屋でみつけたそれをイタズラすると怒られるかもしれない。
でも、少し嘗めてみたくなった。
二本足たちが「びん」て呼んでるものに入って「てーぶる」の上にあるそれを前足で突いてたら、丸い「びん」は静かに転がって、下に落ちて割れちゃったの。
どうせ怒られるんだし、せめて嘗めて床を綺麗にお片付けした方が良いに決まってる。
ボクは、その不思議な匂いの水を嘗めてみた。
すると、モクモクと煙が立ち上って、ボクの体が熱くなった。
あんまり熱くて苦しいから転がって暴れちゃった。
熱いのが終わると、ボクは驚いた。
ボクの前足がハナ先生と同じ長い指のすべすべになってた。
後ろ足も伸びて、よく視るとお腹もお尻もすべすべ。
ボクはひょっとして二本足になってしまったのだろうか?
いつもより鼻が利かないし、尻尾もなくなって、上手く歩けない。
どうしよう。
助けてハナ先生!
ボクの願いが通じたのか、ハナ先生が帰ってきた。
「ただいま、タロウ~!良い子にしてたかしら?」
ハナ先生だ!
ボクはいつものようにハナ先生をお出迎えしたくて藻掻いた。
上手く歩けない。
前足でつかまったてーぶるが倒れてしまった。
物音に驚いたハナ先生がボクを見つけた時、金切り声を上げてボクに向かって「あなた誰よ!?」って鳴いた。
「あう・・・・・・おお~う」
ボクは上手く鳴けない。
ハナ先生がボクの足下で割れたビンを視て、ボクがやったイタズラを理解してくれるまで、ボクは部屋の真ん中でお座りして頭を垂れて「おん、おん」と不器用に鳴くしかなかった。
「もしかしたら、と言うか、もしかしなくてもあなたは私のタロウみたいね。最長老様の新しい魔術を施した薬瓶が割れてて、赤柴のタロウが全裸の男の子になって首輪付けているって図は笑えないわ」
ハナ先生はボクの失敗をすべて理解した上で、ボクの頭に手を置いて鳴いた。
「とりあえず、服を着てもらうわ。タロウ、困った子ねあなたも」