ちょっとの浮遊。
短い短編小説、ショートショートです。
え?手品か何か?
「いや、手品じゃない現実だよ。」
だって、浮いてるじゃん。
「うん浮いてる。地面から1㎝ぐらい常に浮いているんだ。」
浮いてるんだ。って・・・。
「・・・。」
何で?
「知りません。」
いつから?
「・・・。いつ頃だったかな、仕事辞めてフリーターになった頃からかな。わりと最近。」
ふーん。何で?
「いや、だから知りませんて。」
1㎝だけ浮いてて何か良い事あるの?
「ない。」
えっ!ないの?
「いや。疲れないかな。」
疲れない?
「足が。」
足が疲れない?
「ふわふわしてて、緊張感がない。現実味がない。」
比喩か?
「いや。」
その他メリットは?
「ない。」
その特技ってなにか、意味あるの?
「意味?」
意味。
「知らんよ。」
てか、得あるの?
「ないよ。」
すごいんだから、テレビとかでたら良いじゃん。
「いやだよ。」
何で?
「ただの見せ物じゃん。」
うん。
「それにすぐに飽きられる。」
そうかな?
「そうだよ、だって人よりちょっと浮いてるだけだよ。」
すごいじゃん。
「いや、すごいけど意味ないもん。で?てなるよなきっと。」
なるな。
「人よりちょっと浮いてるだけ。」
すごいけどな。
「でもただそれだけ。」
何かの役に立つ気がするけどな。
「役にたつかな。」
たつよきっと。
「でも、地に足つけたい。」
比喩か?
「いや。」