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とりま、ここから

とある日、とあるマンションのリビングダイニングの風景。


オープンキッチンで初老の男が二人忙しく動き回る。


男たちの戦場と化したキッチンにつながるリビングのドアの向こうから、ガチャっと重いドアの音と一緒に「ただいま〜」と女性の声が響く。その声に後に「お邪魔しま〜す」と男の声。


キッチンで闘う男たち二人が声を揃え


「「お帰り〜」」


リビングのドアから現れた若い男女が現れると、キッチンで冷蔵庫と流しを行き来する男が野菜を洗いながら


「あんた達いきなり帰ってくるって、なんなの〜」


女はその言葉を聞き流すかのようにダイニングテーブルの椅子をひき座ると、キッチンのコンロの前で鍋を回し肉を焼いてる男が


「ゆうちゃん、いらっしゃい。もう少しでできるから、座って待っててよ。そうしたらみんなでご飯食べよう」


さっき座った椅子から女が立ち上がり、キッチンを覗き込み言う


「今日はチキンステーキとミートソーススパゲティとサラダだね。オクラもある!私の大好物ばかりだ、やっぱり」


「あんたは本当にオクラが大好きだったから、いつ帰ってきてもいいように夏じゃなくても冷凍食品で用意してあんの」


すると女の後ろで男が立ち上がり


「いつ帰ってもいいってどういうことですか?未希はお返ししませんよ」


するとキッチンの男二人は口を揃えて


「「返品不可」」


それに続けて未希は


「ちょっと私を物みたいに言うのやめてよね」


4人は顔を見合わせ笑う。


その笑い声が引きかけた時、未希は家について以来言いたかった事を言う。


「お父さんたち、あたし妊娠したの」


鍋に張り付いた男が振り向き女を見つめ、流しに立っていた男は出来上がったサラダをテーブルに置きプチトマトをつまみ食いしながら


「あんたね、そういうことはしっかり言うタイミングってのがあるの。いきなり帰ってきて前置きもなく、ご飯作らせながら言う事〜?冗談いわないで」


とダイニングテーブルにサラダを置きキッチンに踵を返すが、振り返り女の満面の笑みを見て甲高い男の叫び声を大きく響かせる。


「冗談でしょ?いやぁ〜〜〜ぁぁぁ」


胸の前で両手を握りラッコの様に振るいながらカンガルーのように飛び跳ねながら女に近づき抱きしめる。


もう一人の男はデカい図体のデカい顔の口をデカい手で覆い、手から溢れた顔をくしゃくしゃにして大粒の涙をボロボロ流している。

女が笑みを向けると、口を覆ったまま歩いてきて入れ替わりで女と抱き合うと、近くの椅子にもたれかかるように腰を下ろした。その様子を見ていた初老ではない男が立ち上がり、その男の肩へ手を置く。



4人以上、5人までは〜、まだ未満の家族になんとも言えないエモーショナルな小春日和だった。

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