ツン、とした……
彼女は真面目。
「だらしないわね、はやく起きなさい」
ツンとした彼女は、遅刻しそうな僕を叱る。彼女は僕の幼馴染みで、毎度家まで迎えに来るのだ。
彼女は賢い。
「今日は数学のテストよ。自信あるわよね?」
もちろん、と僕は答える。昨日は君と勉強会を開いたのだから。
彼女は食わず嫌い。
「これ、私はいいから食べてよ」
そう言って自作のお弁当から、おかずを渡してくる。それは僕の大好物だ。美味しく頬張る僕を君はニヤニヤと眺めていた。
彼女は自分勝手。
「明日の休み、買い物に付き合って。久しぶりにあなたと遊びたくなったわ」
彼女の久しぶりは1週間ぶりらしい。
彼女はお節介。
「明日のために、しっかり寝ること。慌てないように準備しておいて、それから……」
彼女の家まで送り迎え。それまでずっとお小言を聞かされた。
彼女は強い。
「さっきのチャラチャラしたナンパくらい、あなたが追い返してほしいのだけど」
昔はいじめられていた私を助けてくれたじゃないの、と。ナンパを力ずくで追い返した彼女は呆れるように苦笑い。
彼女は時間に厳しい。
「遅いわよ。朝7時に集合の約束でしょ」
前に似合うと褒めた服を着た、ツンとした彼女に、寝不足気味の目で睨まれた。
彼女は欲しがり。
「これを買いましょう。あなたもいいわよね?」
僕のお小遣いが、ペアのキーホルダーに。
彼女はよく食べる。
「あなたのも食べさせてよ。いいでしょ?」
同じ味のソフトクリームを、僕の食べた部分ごとパクリといただかれた。
彼女は覚えている。
「この場所からみる景色は、いつ見ても綺麗ね」
夕日の眩しい高台は、かつて僕が告白した場所。
君は……なに言ってるのよ恥ずかしい、と帰ってしまった。
てっきり振られたと思ったのに……次の日、君は僕を迎えに来てくれた。
「好きだ」
「……はあ?」
君は少し驚いた表情をした。顔が赤いのは夕焼けのせいだろうか。それとも――――――
「君が、好きだ」
「……そんなの」
ツンとした彼女を――――――
「お互い様よ」
僕は、愛している。