クエスト選び
【アミル水源の沼スライム駆除 50匹につき800コル】
【ザオリク森林保護地区の森の管理人ヒョウラー族の品物回収 2500コル】
【ドークル酪農の酪農地見回り依頼 七泊八日(食事付き六人まで) 1200コル】
冒険者ギルドのクエスト斡旋窓口で案内された書類を五人(一人は窓際でこちらを見ている)で眺めながら相談していた。
冒険者ギルドの建物は四階建ての大きな石造りだけどあまり冒険者はいなかった。六人掛けのテーブルに座りつつ相談し合う。
僕の本命は沼スライムだ。沼スライムはレベル四ぐらいで手頃なモンスター。経験値は美味くないけど50匹も狩ればそこそこたまるだろう。
「沼スライムが経験値ためれそうでよさそうだと思う。場所も近いし」
アルミ水源はこの辺りの水源になっていて距離も40キロぐらいしか離れていない。一日かけて行き、二三日キャンプしながら狩れば余裕だろう。
逆にザオリク森林保護地区はここから300キロも離れているし、ヒョウラー族っていうのが厄介だ。
ドークル酪農の見回りは食住がちゃんとしていていいけども、何も出なければ経験値は入らず、もしかしたら強いヤツもでるかもしれない。こういった個人の依頼はちょっと怖い経験もあって手が出しにくいのだ。
「沼スライムでありんすか・・・?」
「いやかな?」
「服が汚れるでありんすね」
ちょっと嫌そうにルーティが顔をしかめた。彼女は血で汚れるからといってアーチャーに転職した人だから沼スライムはいやなのだろう。
いやそんなこと言っても仕事だからさ。
「シーカーさん、このヒョウラー族の品物回収はかなりいいです」
カチカチとそろばんを叩きながらミリヤが頷くようにいった。
「どうして?」
「ザオリク地区に行くまでに町を二つ通ります。ちょうど商人ギルドでそこに持って行く品があります。転売できるのでこの倍ぐらいは稼げますよ」
ぬっ・・・。
倍と言えば5000コルか。それだけあれば一ヶ月は余裕で宿暮らしができるな・・・。
しかし、300キロは遠い。それだけの距離を歩いて行くのも一苦労だし、それだけの準備にもお金がかかる。
根無し草生活が長いので道具自体はあるのだが食料などを考えると・・・。雨も降って足止めを喰らうかもしれない。少なくとも300コルぐらいの準備金がないと。
しかも問題はヒョウラー族の習性だからな。依頼金が高いのは何も遠いだけではない。
「ヒョウラー族かえ? モウシャンは元気にしておるでありんすかねぇ」
「お知り合いがいるんですか、ルーティさん?」
リクスが懐かしそうにしていたルーティに聞いた。
「そうでありんす。モウシャンとは昔パーティーを組んでいたこともありんした。久しぶりにあって酒でも酌み交わしたいでありんすね」
「ああ、ならシーカー、これでいいのではないでしょうか」
リクスが何も考えずにのほほんと笑顔で言う。
「いや、行きたくても準備金がさ。遠いよ」
「ならミリヤローン使いますか?」
「え? 使っても良いの?」
「いいですよ。このクエストなら回収できますし。最大投資は466コルですね」
財務担当のミリヤがお金の問題を一瞬で解決した。
ミリヤローン。我がパーティ内ではもっとも堅実なローンだ。
ミリヤの稼いでいるお金からローンを組んで借り受けることのできるシステム。ただし、審査が滅茶苦茶厳しいのでめったに下りない。利子はないけどそのかわり彼女がクエストの途中で売る商品を運ぶという作業がつくが、運ぶのはマリアなので問題なし。
「じゃあミリヤローンの方向で」
「わかりました」
あと、問題はヒョウラー族のことだ。彼らは豹の獣人で定住せずに移動しつつ暮らす。なのでザオリク森林保護地区すべてを探索しないと見つけることができないのだ。
「ルーティ、そのモウシャンさんの居場所とかわかるの?」
「わかるでありんすよ。特別な者だけにわかる目印を置いてくれてるでありんす」
おおお!
なら話は早い! めちゃくちゃいいクエストじゃないか!
我がパーティーは収入の半分をファミリーの財布、もう半分を六人で公平に分配する。5000コルってことは、えー、一人頭600コルぐらいはお小遣いになるということだ。
よし、それだけあればスキルを買えるし、武器もレベルアップできるかもしれない。
「なら決まりだね。リクス、これをギルドから受諾してきて。僕は先にミリヤと準備するから。準備できたら直ぐに出発しよう」
「わかりました。こちらは任せてください」
「よろしく!」
僕はやる気がいっぺんに出てくる。
よし、まずは準備を頑張ろう!