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死憶の異世界傾国姫  作者: ぎむねま
9章 皇子の悲願と世界の終わり
268/321

ロンカ要塞 1

ども、体調不良などで不定期でスマン……

「あー、眠い」


 俺は積み上がった干し草に頭から飛び込み、中であくびを噛み殺していた。

 夏にそんな事をしていればクソ暑くて仕方が無いハズだが、今の俺には暑さなど苦にならない。丁度良い休憩時間だ。


 ここ数日、俺は空を飛び回り、周辺の村を救って回っていた。焦土作戦を防ぐ為だ。

 難しい事は何も無かった。俺や木村が心配していたのは、帝国兵が王国兵になりすまして略奪をする事だった。そうなれば物資が手に入らないばかりか、王国への感情がますます悪化してしまうから。


 だけど、帝国はあろう事か「皇帝陛下の思し召しだ!」と書状まで見せつけて物資を徴発して畑を焼いていた。何かの罠を疑うぐらいの愚行である。

 後で聞いた話だが、初めこそ王国兵になりすましていたらしい。世間知らずの軍人達だ、我らが悪名高い王国兵だと宣言して、これ見よがしに銃で脅せば、村人など黙って全てを差し出すと考えていたのだろう。

 だが皮肉にも、帝国への愛国心が強いからこそ、村人達は必死に抵抗した。

 更に言えば、略奪をするにも()()がある。種もみまで全部奪って農地まで焼かれれば、農家は死ぬしかない。だったら戦った方がマシと腹を括ってしまう。略奪はやり過ぎてはいけないのだ。

 まして、死ぬ気で突っ込んで来る相手にマスケット銃という武器はひたすらに相性が悪かった。


 だから慌てての方針転換、皇帝の名の下に略奪を開始したと言うワケ。とにかく物資を干上がらせれば、焦土作戦としては成功するからだ。

 愛国心が強い帝国の民である。今度は物資の提供までなら従った。自分達を見捨てて撤退するのだと聞いても我慢していた。勇ましい帝国兵がすぐに領土を取り返してくれると心の底から信じていたから。


 だけど、畑まで焼くと言われれば話は別だ。そんなのはこの世界の常識に合わない。村人達は収穫した作物を王国兵に渡すつもりがないだけに、帝国兵の行動が少しも理解出来なかった。説明しようにも、魔女から焦土作戦と言う概念を聞きかじった皇帝の発案なのだから、誰も詳しい事を説明出来ない。

 村人達は絶望した。愛する祖国に苦しんで死ねと言われたに等しいのだから。


 ――だが、その時、奇跡が起こる。


 信じていた祖国に裏切られ、焼ける畑の前で呆然と立ち尽くす彼らの前に、空から天使が舞い降りたのだ。


 俺だよ!


 そう、俺は行く先々で、タイミングを見計らって、彼らの前に現れる事にした。するとどうなるか?



 じゃあ早速やって見せようか。丁度今から、始まるところだ。

 俺だって、何も好き好んで牧草の中で何時間もスタンバっていたのでは無い。鈍足の帝国軍に先回り、村の片隅でジッと待っていたのである。

 そろそろ頃合いかな? まだかな? 俺は牧草に身を隠し、集音の魔法で村の様子を窺った。


「おら、燃やせ燃やせ! 燃やし尽くせ」

「オイ! 女も犯していいんだよな?」

「やれやれ、皇帝陛下は略奪をお望みだ」

「ヒュー」


 あーあ、ダメだこりゃ。コイツらただの略奪と焦土作戦の区別がついていない。所詮は寄せ集めの兵士だ、こうなれば山賊と変わらない。

 意気揚々と非道な略奪の真っ只中。だが、まだ早い、村人達が絶望した辺りで登場するのが望ましい。俺は干し草の中でジッと待つ事にした。


 しかし、季節は夏、時刻は正午過ぎ。牧草の中で待っているのが、流石に暑くなってきた。俺は星獣の細胞を取り込んで、暑さにはかなり強くなったつもりだ。それでも暑いんだから相当である。

 ……いや、幾ら何でも暑過ぎる。この辺りの夏は暑いって言うけど、コレは殺人的だ。まるで燃えてるみたいに暑い。


「牧草は始末したか?」

「うっせーなやってるよ、馬のエサがなけりゃ、奴らも追って来れねぇからな」

「火には注意しろよ、俺達の分まで焼けたらシャレにならん」


 はい、燃えてますね。このままじゃ美少女の蒸し焼きだ。


 俺は慌てて魔法で上昇気流を生み出すと、干し草と共に空へと舞い上がる。

 空飛ぶ干し草まみれの美少女。流石にマニアックが過ぎる。おのれ帝国め! 何時間も暑いのを我慢して、最高の登場シーンを狙っていたのに台無しだ。

 するとどうだろう? 俺の怒りが燃え移ったのか、舞い上がり空気と攪拌された干し草は瞬く間に燃え上がり、巨大な火柱へと変じてしまう。コレには俺も驚いた。

 地上は大騒ぎ、家畜小屋などに次々に引火して大変な事になっている。

 俺は大慌てで風を止め、火柱を打ち消した。今の俺にはこの程度、何でも無い。


 ふぅ、何とかなったか? いや、村人も帝国兵も隔てなく、全員が呆然と俺を見上げている。

 なるほどなるほど。突如吹き上がった火柱の中から、天使の如き美少女が現れたのだ。驚きもするだろう。

 想定より派手な登場をキメてしまった。派手なのは良いけれど、問題は天使というより悪魔寄りの演出ってトコ。


 いや、まだだ、まだリカバリー出来る。


 雲の合間から差し込む光を、大きく広げた翼に受けて、俺は空から拡声の魔法で大音声の託宣を下す。


「帝国は神に仇なす外道に堕ちました。私、ユマ・ガーシェントが、主に成り代わり天罰を下します」


 天使っぽい武器と言えば弓で決まりだ。言い終わるや否や、上空からひたすらに帝国兵を射貫いていった。人間など俺にとって的でしかない、俺が矢を放つ度、帝国兵はギャーギャーと喚いていたがすぐに沈黙した。永遠に。

 あとは消火活動だが、良い感じに雨雲が出ている。これならと死苔茸(チリアム)の粉を上昇気流に乗せてやれば、程なくして雨が降り始めた。ここまで完璧である。

 全てが終わった事を確認し、俺はしとしと降る雨の中、彼らの前に舞い降りる。


「おおっ!」

「なんと、なんとぉ!」

「天使だ!」


 そしたらもう、村人達は泣いて大喜び。雨だか涙だか解らんぐらいにグチャグチャにになって、泥だらけで俺の足下に跪く。

 一時はどうなる事かと思ったがリカバリーに成功したようだ、こうなれば後は良く知る流れである。いや、むしろ皆の反応はいつもより良いぐらい。すっかり俺を天使だと信じている顔だ。


 俺は、彼らを無視して宣言する。


「魔女に与する皇帝を、私は討たねばなりません」


 これには村人一同、流石に息を飲んで黙り込んだ。

 祖国に裏切られた彼らであるが、それでも皇帝とは神に等しい存在と、帝国人民の根っこの部分まで染み込んでいる。

 俺の罰当たりが過ぎる宣言に、婆さんなんて一心不乱に聖句を唱えているし、村長らしい爺さんなんて「恐ろしや」と連呼し続け、なにがしかに祈り続けている。

 だけどそんなのは知った事ではない。


「皇帝を名乗るかの者は、非道な兵器で地上を焼き、疫病をばらまいた」


 思い当たる所があるのだろう、村人たちは揃って棒を飲んだような顔をした。

 寒村であるこの村にも、戦場の噂は届いている。極めつけに先ほどの凶行だ。彼らだって帝国がおかしいと思い始めている。それでも俺にこうまでハッキリ言われれば、大変にショックだったに違いなく、誰もがぐったりと項垂れた。

 そこに、追い打ちを掛ける。


「あなた方は狂った皇帝に与したばかりか、命じるままに我らが協力者を裏切り者と罵り、天使である私を悪魔と断じた。その罪、軽くはありません」

「そ、そんな!」


 話の雲行きが怪しくなったのを感じ、彼らが一斉に顔を上げる。これもまた知ってる流れだ。俺は跪く村長の肩に手を置き、宣言する。


「見たでしょう? 帝国の横暴を。私の故郷も同じく帝国に蹂躙され、家族は全員、殺されました。そんな横暴を他人事と見過ごしていた罪が、今度はあなた方の家と畑を焼いたのです」

「そんな、まさか……」


 俺の言葉に覚悟を決めた村長が、泥だらけの顔で必死に縋る。


「悪いのは私です。ユマさま、私がユマさまを悪魔と罵るべしと、皆に命じていたのです、罰するなら私を」


 どうもそうなのだ。最近は帝国でも俺の人気が高まっているらしく、それが気にくわない帝国は、俺を悪魔と宣言せよと、こんな小さな村まで強要していた。だから、村の全員が俺に引け目があるのだ。

 村長は地面に顔をこすりつけ、首を差し出すように俺の足元に蹲る。


「どうか、どうか、私めの首一つでご容赦くだされ」

「良いでしょう」


 言わなければ無理矢理引っ張りだすつもりだったのに、今回は手間が省けた。


 支配には暴力も必要。痛みを忘れれば罪も忘れる。だけど罰するのは一人で十分だ。

 別に丸くなったつもりはない。俺は今でも家族の死に様を夢に見て、そのたび帝国人を殺して回りたくなる。

 人畜無害なコイツらだって例外じゃない。エルフの都が焼かれていた時、コイツらは何も知らずぬくぬくと暮らして居たに違いないのだ。ただソレだけの事が、どうしようもなく、苛立って、悲しい。


 でも、ここは帝都じゃない、ただの田舎の寒村だ。彼らには帝都を攻め落とす俺の為に働いて貰わねばならないのだから。

 殺すのは必要な分だけ、それで十分だ。


「覚悟は、良いですか?」

「お許しを! お許しを!」


 ひたすらに懺悔を繰り返し、村長は俺の靴にキスでもするように、泥だらけの地面に頭をこすりつける。


「黙れ! 見苦しい」


 俺はそんな小汚い後頭部をブーツで思い切り踏みつけて、しゃらりと腰のサーベルを抜き放つ。


「空っぽの頭に罰を」


 顔面が泥に埋まり、村長はバタバタと暴れる。このまま殺す気は無い、すぐさま頭を蹴飛ばしてひっくり返すと、今度は顔面をぐりぐりと踏みつけて、抜き身のサーベルを突きつけた。


「真実を見ようとしない目、噂に惑わされる耳、嘘を垂れ流す口、全てが罪深い」


 そのまま顔面を踏みにじり、泥をこ擦り付ける。


「役立たずの頭には泥を詰めた方がマシだ。誓え! 愚かな皇帝を捨て、私に従うと」

「ち、誓います。ユマ様」


 村長は迷いなく宣言した。狙い通りである。

 命惜しさに見えて、コレが案外苦労するのだ。それほどに帝国人民の忠誠心は厚い。ここまで色々試してきたが、こうやって物理的に踏みにじりプライドをへし折らないと、彼らは恭順を誓わない。


「良いだろう、我らへの献身をもって、汝の罪を赦そう」


 これで今後は補給には困らないだろう。結局使わなかったサーベルを鞘に収め、ホッと息を吐く。トップがこうして裏切れば、殺すよりもよほど話が早い。


「おおっ!」

「赦された!」

「天使ユマ様、バンザーイ!」


 村人達はこれで全部解決と大喜び。

 呑気なモノだ、略奪する兵士が略奪する天使に変わっただけなのに。考えさせる隙を与えないのが略奪のコツと言える。


 今回も上手く収まった。全部狙ったとおりに決着した。


 ただ、完璧に見えるこのやり方、一つだけ問題がある。純真な彼らは本当に俺が天使だと信じてしまうのだ。

 そして、教会もないこんな寒村に、天使が舞い降りたらどうなるか?

 居合わせた農民が、揃って俺の足元で頭を下げる。懺悔大会が始まってしまうのだ。


「俺もだ、俺も、罪深い」

「こっちもだ、ユマ姫が悪魔だと、何度も罵った」

「罰してくれ、役立たずの頭を」

「踏んで! 踏んでくれ」


 いや、これ懺悔か? なんか違う気がするが?


 ……何故か、俺は全員の後頭部をゴリゴリと踏むハメになるのであった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「と、言う訳でね」

「はーくだらねー」


 俺は軍に合流した。気が付けば前線は帝都最後の盾と呼ばれるロンカ要塞を望む場所にまで進んでいた。

 張られた天幕の下、俺は木村と田中に首尾を報告したのだが、褒められるハズか呆れられた次第である。納得いかない。


「いや、補給路の襲撃やら蜂起を心配するどころか、周辺の村が率先して物資の提供、交換に応じてくれるから成果は疑ってませんけどね」

「俺らが必死にゼスリード平原から食料を提供したり、色々工作して恭順させて来たってのに、お前は踏んづけるだけかよ」

「別に踏んづけただけではないですが?」


 むしろ踏んづけたのはオマケで、まるで意味はないと思うんだが?


「とにかく、後はあの要塞を落とせば終いだ」

「帝国の盾、ロンカ要塞ですか」


 遠くからでもその威容が解る。水を入れた堀と厚さ3メートルで高さ10メートルの壁が四方を覆い、立ち並ぶ側防塔は30メートルにも達する。普段は練兵場として使用する中庭は、有事の際は帝都市民を避難させる役割も果たす。地下には大量の物資を保管出来るスペースがあり、何年でも戦えるとかなんとか。

 ここが落とせたら帝都まではすぐそこ、何も遮るモノがないと言うだけあって強固な守りとなっている。


「普通に戦っても難攻不落なんですがね」


 ため息混じりに木村が付け加える。どうも火薬も火器もかなりの量が運び込まれていると言うのだ。


「知っての通り、城を守る兵を破るには倍以上の兵力が必要です。でもコレが銃を揃えて待ち構える相手では、もう倍じゃ済まない。籠城戦では何と言っても射程兵器が重要ですからね」


 確かに、城に籠もった剣豪なんて城が落ちる間際にしか役に立たない。かといって弓を引くのも訓練が必要だ。農兵に弓を教え込むのは手間が掛かる。

 それが銃ならば引き金を引くだけ、曲射や偏差射撃も殆ど不要だ。農兵だって熟練の弓兵と同等以上の戦果を期待出来てしまう。

 トリガーを引くだけと言うのはソレだけ簡単で、現に訓練も受けていない侍女のネルネが父様にクロスボウを命中させている。

 なにより帝国にはそれこそ銃が売るほどあるのだ、城壁や側防塔に、ズラリと鉄砲隊が並ぶ光景がありありと目に浮かぶ。当然だが大砲だって設置されているだろう。


「うえぇぇ」


 想像するだに面倒だ。俺は作戦卓にグデッと身を投げる。

 やるとすれば、俺が空からチクチクと削るしか無い。気の長い作業だし持ち前の『偶然』で穴だらけになるに違いないのだ。


「仕方ありません」


 そうは言っても、ま、やるしかないよな。俺は椅子を蹴飛ばし、立ち上がる。


「いや、ジッとしてて」

「座ってろ」


 飛び出そうとした所を止められた。どうやら違うらしい。

 と言う事は、要塞を落とす方法が他にあるのだ。俺はジッと卓上の地図を見つめる。


 帝国へは一本道、見事にロンカ遺跡を通過している。平時なら関税の徴収や荷の改めもココでやってしまうらしい。周囲には目立った地形もなく、平地で戦いを挑むしか無さそうだ。

 水はどうか? 堀に水を張れるぐらいだから、川から水を引いている。しかし城内には井戸もあるらしく、毒を撒いても効果は薄いだろう。地下の備蓄だけでなく、背後の帝都から物資も運ばれるので、兵糧攻めも無理。石造りだから火攻めも効果は限定的。


 うーんわからん。唸りながら爪を噛む俺の仕草をギブアップと取ったのか、木村が駒を卓上に並べ始めた。


「まず、兵をですね……」

「ちょっと待って下さい」

「えぇ……」


 もうちょっとで思いつきそうなんだよ、この要塞を落とす一世一代の作戦がさ!


「…………」

「…………」

「…………ぐぅ」


 いや、嘘。全然解らんわ。田中なんて寝ちゃったし、俺も寝て良い? 今更まるで解らんとか言い辛いわね。デュフフ。

 小首を傾げて木村を見上げ、はにかむ笑顔で誤魔化していく。


「無駄な可愛さ! はぁ、えーと、まずは兵をこう動かします」


 木村は駒を摘まんで、要塞から遠く離れた森林地帯に並べていく。

 なるほどね、俺もその森が怪しいと思ってたんだ。


「そこまで敵を釣り出すのですね?」

「違います」

「じゃあ、森を焼く?」

「違います、そんな事すれば、姫様以外は全員焼け死にますよね?」


 失礼な! 俺だって焼かれれば暑いぞ! この前も焼かれたし。


「ここから狙撃出来る兵器が……」

「ありません」

「じゃあ、じゃあ……」


 参った、解らん。


「あの、どうするのですか?」

「森から要塞を迂回して」

「それで! それで?」

「そのまま帝都を攻めます」

「ふざけんな」

「痛っ!」


 駒を掴んで木村にシュート。超エキサイティンッ!


『普通は知識チートで要塞を攻め落とすトコだろ!』

「あ、ごめんなさい、それ品切れなんですよ」


 入荷しろ! ひり出せ!


「いっそ、魔女に習って疫病を流行らせるとか」

「ですからごめんなさい、それは冬場だけのメニューでして」

「死ねっ!」


 ふざけているけど、本当に冬じゃないと病気を広げるのは難しいと、木村は力説する。


「ただでさえ健康値なんて守りのある世界ですからね。この世界に来て10年以上、深刻な疫病の話は聞きませんでした。湿度も温度も低い冬のスールーンにはパンデミックもあったようですが、今は夏ですよ? それに疫病なんて流行ろうもんなら、良いんですか? 復讐どころじゃなくなっちゃいますよ」


 ……それも、そうか。


「しかし、迂回などすれば、結果的に帝都と要塞の兵に挟撃されるのでは?」

「その為に、射線の通らない森の中、高地を選んで進みます」

「こんな場所、進軍可能なのです?」

「星獣との追いかけっこをお忘れですか? アレに比べれば何でもないですよ。我が軍の士気と練度は驚く程に高く、山間部の移動も可能と判断しました。地元の道になりますが、姫様のお陰で近隣の猟師から協力も得られています」

「そう言う事でしたか」


 なるほどと頷いたモノの、どうにもスッキリしない。俺は派手に要塞を落としたいのだ。最終決戦なのに、活躍の場面がまるで無いではないか。


「で、でもドーンと! 上空から私が狙撃してみると言うのは?」

「と言う事で、姫様は余計な事をせずに控えて下さい」

「空から偵察など……」

「座ってて下さい、それで十分に士気の向上に繋がりますから」

「わかりました、士気の向上に努めます」

「無駄に兵を刺激しないでください、作った服ですがサイズが合わなくなってますよ」

「…………」


 完全に封じ込められている。

 いや、待てよ? 俺には秘密兵器がある。ポケットをまさぐると、布面積の足りないマイクロビキニが。


「しまって下さい」

「はい」


 流石にコレはないね。


 そうして俺達は山間部からの迂回路を巡る事にした。

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