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死憶の異世界傾国姫  作者: ぎむねま
6章 吸血鬼の悲恋
173/321

雑な男

 一人の工作員が肉へと変わった。

 ソレを成したのは一人の美しい女性で、側に佇む黒衣の剣士はその作業を楽しげに眺めるだけ。


 解体された男が埋まっていた穴は、今や男の血と内臓がドッサリと溜まっている。

 そして体はスッカリ解体されていた。


「こうしてみると、案外旨そうだよな。肝臓あたり、わさび醤油があればワンチャン」

「塩でも食える」

「いや、止めておく。食い物の禁忌ってのは理由があるモンだぜ?」

「…………」


 イラつく田中の言葉を聞き流し、シャリアちゃんは脳味噌をナイフで掬って――食べた。


 ――苛立ちで味がわからないわ。


 人間では一番好きな部位だったが、茹だる程の怒りで味覚は鈍っていた。


「なあなあ? それって旨いの? あ、いや食いたい訳じゃ無くてな。純粋に興味がさ」


 シャリアちゃんの口からギリッっと歯ぎしりが漏れる。全ては規格外なこの男の所為だった。

 半ば脅すつもりで目の前で人間をバラし、食しても。ヘラヘラとした態度が一向に崩れない。

 苛立ち混じりに脳にナイフを突き立て、掬い、突きつける。


「食え! 絞めた直後じゃないと食えない」

「あ、いやー流石にな、恐いって言うか」


 急にモジモジとしてみせる。


 ――コイツ! 苛立たせる天才なのね……


 苛立ちで言葉がカタコトになるなんて経験をシャリアちゃんは初めて味わっていた。

 相手のペースに乗らない様にと、ゆっくりと胸に手を当てて深呼吸を繰り返す。

 しかし、田中はソレを無視して言葉を掛けた。


「なぁ? どうする? 敵さん、俺を待ち構えて罠を張ってるらしいが?」

「解ってる!」


 思わず声を荒げる。

 敵を締め上げ解体した成果にシャリアちゃんは焦っていた。


 ユマ姫が意気揚々と潜った遺跡は既に敵の手の内。それだけでなく魔力を奪う霧の悪魔(ギュルドス)の配備もあると言う。

 何より、このクソ男を嵌める為、敵の罠が準備万端と来ていた。

 何というクソ迷惑な男! 苛立ちばかりがこんこんとこみ上げる。


「悪いニュースばかりじゃねえじゃん。培養槽ってのでノエルの腕が治った。つまりユマ姫(アイツ)の腕だって治るって事だ」

「それも解っている!」


 その為にはるばる遺跡まで来たのだ。本来朗報のハズであるが、それでもこの状況は手放しに喜べない。

 目当てのモノを目と鼻の先にして、張り巡らされた敵の罠。

 どんな軍師だって欲に目が眩み判断を間違う配置。ましてやユマ姫は抑えが効く性格では無い。

 シャリアちゃんは気が狂いそうだった。


「ま、俺が行けばなんとかなるだろ」


 田中が気楽に言う。ソレを恨めしそうに()め上げるシャリアちゃん。

 これが全くのハッタリでも強がりでも無いのがこの男の厄介な所だった。

 シャリアちゃんの見立てでは、タナカ一人で帝国兵の十や二十は軽く(ほふ)れる。それだけ図抜けた力を肌で感じていた。


「私も行くわ」


 それでも、この男を野放しに出来ないと強く思う。


「良いけどよ……」


 情報部員が知っていた遺跡のショートカットには少し距離があった。

 田中としてはバイクでひとっ走りの距離なのだが、シャリアちゃんはどうするか?


「乗れよ」


 田中の選択は彼女を背後に乗せる事だった。

 殺人鬼であり、食人鬼でもあるところを見せつけて尚、余裕綽々でそんな事を言う。

 途轍もない豪胆さ、いや、舐められているのだとシャリアちゃんは歯噛みした。

 しかし、敵わないのは事実。そして乗れと言うからには速いに違いない。


「解ったわ」


 シャリアちゃんにとっては見るのも初めての機械。なにしろ魔力視で強大な魔力のカタマリである事が解ってしまう。おっかなびっくり跨がろうとするが……


「焦れってぇ」

「いやっ!」


 田中は強引にシャリアちゃんを持ち上げ後ろに乗せる。

 田中はシャリアちゃんのプライドを傷つける事ばかりを自然に選んでいた。

 怒りに顔を歪めたシャリアちゃんが後部座席に収まる。


「しっかり掴まってろよ」

「こう?」


 痛いぐらいに強く抱きしめたつもりであったが、田中は全く意に介さなかった。


「そうだ、行くぞ!」


 バイクは一気に速度を上げ、驚くべき勢いで景色が流れていく。

 乗ってしまえば馬よりも視線は低いぐらい。馬であればシャリアちゃんも淑女の嗜みとして殿方の後ろに乗るぐらいは経験が有る。


 ……いや、カディナール王子の後ろだったなと思い出す。


 しかし、あの生臭王子とは肉体のモノが違う。いや、今まで見てきたどんな男とも。


 ――なんてカラダなの! ドコまでもしなやかな筋肉。バランスも気味が悪いほどに完璧だわ。


 しがみついて初めて解る事もある。その均整の取れた肉は芸術品のようであった。

 内側から弾けそうな程のパワーを感じる。


 ――ふざけている癖に、なんて男なの!


 シャリアちゃんは初めて男の肉体を羨んだ。

 自分の体こそ、強さと同時に女性としての美しさまで兼ね備える最高のモノ。そう自負してきたが、可憐さと儚さと言った自分に無い美しさを秘めたユマ姫を見た時と同等の衝撃であった。

 シャリアちゃんは悩んだ末、悔し紛れの憎まれ口しか叩けなかった。


「いいの? 私を後ろに乗せた殿方は、さっきよりもバラバラになったのだけど?」

「ヒャッ! 刺激的じゃねーの! どうせ死ぬならいっそ可愛い子に美味しく食べて欲しいね、俺は」

「チッ」


 シャリアちゃんから派手な舌打ちが漏れた。

 誰がお前なんか食うものかと言う思いだった。


「っと、着いたぜ」


 大穴まではあっという間だった。


「ここが?」

「そうみたいだな」


 巨大生物が這い出たみたいな穴。情報部員も詳しくは知らなかったが、ココから潜るのが一番早いらしい。


「こういう所を駆け下りるのは得意なのですけど」


 シャリアちゃんは歯噛みする。殺し屋家業で鍛えた身軽さを見せる場面だが、穴の底には恐ろしい程の魔力が漂っているのが見える。

 飛び込めばあっという間に魔力酔いを起こすに違いないのだ。


「俺は行くぜ?」

「きっと魔力でマトモに動けませんわ」

「大丈夫だ、俺は並のエルフより魔力に強い」

「どういう体よ」


 信じ難いがありそうに思えてしまう。


「それに、俺にはコレがあるからな」


 田中が取り出したのは金属のワイヤー束。


「それは?」

自在金腕(ルー・デルオン)。まぁ見てな」

「え?」


 田中はワイヤーを右手に嵌めるや、一気に大穴に身を投じる。それは底まで一直線の落下死コース。

 しかしシュルンと崖際の木にワイヤーが巻き付いて、巨漢である田中の体重を支えた。まるで意思を持ったようであった。


「なんなの?」

「コイツも秘密兵器さ、どうやらお前は魔力に敏感過ぎるみたいだな」


 田中は今までのシャリアちゃんの様子で彼女の特性を見切っていた。


霧の悪魔(ギュルドス)で魔力が消えるまでは大人しくしてな、最前線に乗り込む女なんてアイツだけでいい」


 そう言い残して田中は穴の底へと消えていく。


 ……アイツとはユマ姫の事だろう。シャリアちゃんはそう思った。

 取り残された。それが猛烈に悔しく、悲しかった。しかし突っ込んでも足手まといになる事が、どうしたって解ってしまう。

 戦力差の見極めが完璧であるが故、無謀な行動が出来なかった。


「なんで……」


 穴の縁で悔しくて涙を拭う。それこそ少女の様に。

 それ自体が本当に屈辱であった。


 因みに、田中が言うアイツと言うのはお騒がせキャラである、セーラ女史なのだが……そんな事をシャリアちゃんが知る由も無い。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【田中視点】


 自在金腕(ルー・デルオン)を使いながら大穴を快調に飛び降りた。

 途中で、霧の悪魔(ギュルドス)が発動し、自在金腕(ルー・デルオン)が力を失ってピンチだったのは内緒な。微妙に時間を食っちまった。

 そんなこんなで、いよいよ最下層が迫った所。

 俺は奇妙な気配を察知する。


「性格が悪い奴だな。間違い無い」


 それは捻れて歪んだ気配を纏っていた。そしてそんな気配と裏腹に強烈で真っ直ぐな悲しみを感じる。

 まさかと思って近づいたがアタリだった。


「勘弁してくれよ、神様お願いだ、コイツを生き返らせてくれ!」


 木村だった、滅茶苦茶泣いてる。しかもなんか千切れた女の下半身を抱いている。

 さしもの俺もドン引きである。


「いやぁー、その状態で治せってのは神も困るだろ」


 抱いているのはユマ姫の下半身か、いやーおっかない趣味だな木村の奴。

 しばらく見ない間に、性癖変わったか?


「田中!」

「よっ! どうやらギリギリで間に合ったみたいだな」

「間に合ってねぇ! 間に合ってねぇだろ全く! ドコ見て言ってんだ!」


 木村はアイツの下半身をグイグイと突きつけてくる、俺にそんな趣味は無いので止めちくり!


「まぁまぁ、待てよ。ギリギリアウトかギリギリセーフかで分けるならセーフ寄りのアウトだろ?」

「アウトど真ん中だ! クソッ!」


 だから下半身突きつけるの止めろ! 灯油臭い! え? 紐パン? それもまさかお前の趣味? 恐いわぁ。

 久しぶりに「結局アウトじゃネーか」ってツッコミを期待したのにクスン……


 で、俺は下半身フェチじゃ無いので目当てのモノを拾う。かなり薄まったがギリギリアウト寄りのセーフ。


「お前が下半身なら、俺にはコイツをくれよ」

「それは?」


 木村が呆然と見つめる。俺の手の中にはユマ姫の魔石? と言うのか魔力溜まりがあった。

 エンディアン王国では多くのエルフの気配を見たが、驚いた事に人間とは気配を感じる場所が違った。頭ではなく、胸の辺り。

 実際に今もココからアイツの気配がする、……スッゲェ微細だがな。

 逆に言えば微細でも運命が尽きていない。アイツはまだ生きられる可能性があるってこった。


「エルフの本体みたいなモンよ、知ってるか? この地下には回復カプセルがあるんだぜ? どんな怪我でも治るってハナシよ」

「そう言えば……ユマ姫も怪我を治す手段がこの地にあるって……」

「そそ、そこにコイツを入れればイケる……かも?」

「カモかよ、でもソレに賭けるしかねぇか」

「そう言うこった、あ、一応、体のパーツも集めておこうぜ、役に立つのかも」

「解った」


 そうして二人で肉片をかき集める訳だが。


「エッグイなオイ! アイツどんだけ恨みを買ったんだよ」

「ヒデェ事しやがる」


 脳味噌が飛び散って壁のシミになっている。どうしたモンかと思ったが仕方が無いのでマントに包んで持っていく。

 うぅエルフの王国製のお気に入りだったのによ。


 ……さっきの女、脳みそ旨そうに食ってたな、コレ、ひょっとして食えるのか? なんかキモい男の脳と違って艶々していてメチャクチャ美味しそうって言うか……


「オイ、何してるんだよ」

「あ、いやスマン」


 木村に声を掛けられ正気に戻った。マジで人としてヤベェモンを失う所だった。


 そうして俺は地下三十階、最下層へと降りる。

 美味しく脳みそ食べられちまった男によると、ここが遺跡の最下層。そしてカプセルもあるハズだ。


「コッチか? いやコッチ!」

「どっちだよ!」


 部屋の番号とかは聞いたけどな、中々見つからないモンだ。

 頼りになるのは手の平のアイツの気配。

 それが薄まる場合は目当てのモノから遠ざかってるって事。


 ……コレが消えたらゲームオーバーってのは解るがこの気配って奴は神が言う所の魂なんだろ?

 なんとなく俺にはソレが解る。

 そして思っていた以上に制限時間がギリギリだと言う事も解ってきた! 今にも消えそうじゃねぇか! クソヤベェ!


 エルフがこんなカタマリになっても再生可能だとすれば、何故時間制限なんてものが存在するのか?

 頭が吹っ飛んでるのに、これ以上何がマズいのかが解らない。


 そういえば今まで、死体から魂の気配を感じる事は無かった。

 では魂の気配があるコイツとの差はなんなのか? 今、俺達が助けようとしているから詰んでいないのだろうとは思う。

 だったら、俺が思い立って、死んだエルフの魔石から一人、復活させようと考えた段階でソイツの魂が蘇るのか?

 いっそ、クローンネズミみたいに数を増やしたらどうなるのか?

 なんとなくだが、想像は付く。


 俺はこう見えて、パソコン音痴じゃ無いからな、魂はIPアドレスに近いって神サマの話は一応理解出来た。

 だとしたらよ、同じパソコンの機種でも、IPアドレスってのは違うのが当たり前。

 そして、パソコンが壊れていなくても。電源を切るだけでIPアドレスなんざ変わったりする。

 つまり、死亡判定が出たらアッサリと魂は返還されるんじゃねーか?

 復活したらその時点でまた付け直せば良いだけの話。

 別に記憶が魂と紐付かない俺達は、魂がコッソリ変わっても気が付かないとも言われたな。


 だが、コイツだけは違う。この魂あっての『高橋敬一』なんだ。そうじゃないと生まれ変わった意味が無い。

 だとしたら魂から死亡判定が出て、魂が返還された時点が死んだって事になるんじゃないか?

 今のコイツは、客観的に見たらどう考えても死んでいる。

 魂が何故か死亡判定を遅らせているだけだ、まだ核が生きているって理由でな。

 これロスタイム的なアレじゃねーのか?


「マジィ、焦るぞ!」

「ンだよ!? オイ!」


 木村が下半身を抱えて走る。ホント好きだな、ソレ。


「時間がネーんだ! 急げ!」

「意味が解らねぇ!」


 そうして、ようやく見つかった一室。中央のカプセルにポポーイと材料をぶっ込んだ。


 今日の献立

 ユマ姫の水煮 ~ネバネバ粘液のカプセル包み~


 ・脳みその破片少々

 ・黒焦げの下半身

 ・下顎と舌

 ・胸元に有ったであろう魔石

 ・紐パン


「やっぱダメだろ! コレ!」


 木村が叫ぶのも解る。明らかにパーツ不足。ぷかぷかと培養液に浮かぶこれらで、人間が再生可能とは信じ難い。


「やるしかねーんだよ。足りないパーツは培養して増やすらしい。現に目の前で腕が生えたらしいぜ」

「マジかよ」

「で、操作は任せた!」


 俺は操作パネルの前に木村をご招待。


「は? え? 解る訳ネーだろ!」

「古代とは言え言語もそう変わってない、操作もなんだかスマホみたいじゃ無い? 得意だろ? 雰囲気でイケる!」

「嘘だろ?」

「俺だって詳しい操作方法まで聞いてないし、どうせ知らなかったと思うぜ? 敵の大将なら知ってるだろうが、いまさら絶対に間に合わねぇ」

「クソッ!」


 気配はマジのガチで消える寸前だ。木村はコンソールをトントンとタッチしていく。


「助かる! 対話式インターフェイスだ、所々意味が解らない単語が有るが、想像で補える」

「頼もしいぜ! 木村先生!」

「モード選択とか解らねぇぞ! 凶化ってのは字面がヤベェが? 押しちゃイケない奴?」

「やっちゃえ! やっちゃえ!」

「雑過ぎない?」

「いや、マジだ。凶化したグリフォンと戦ったが、頭もニョッキリ生えてきた。マジやばい生命力」

「良いのか? ソレ?」

「ダメで元々だろ?」

「クソッ!」


 そうして機械が起動する。

 ゆっくりと、そして確実にユマ姫が精製されていく。確かに細胞は増えている気がしないでもない?

 なんかカプセルの中、服の欠片が漂っているのが、今さらに気になるんだけど?


「コレ、牛革の服から牛と混じって復活したりはしないよね?」


 なんならハエと混じっても不思議じゃ無いヤツ!


「いや、ちゃんと人間の細胞を読み取っていた、再生対象を選択してくれって項目で、ユマ姫の年齢と体格の少女を選んだから大丈夫だろ」


 木村の言葉が頼もしい。


「おぃぃ、有能か?」

「無能だよ! 完全に死んでるだろコレ! さっきからヤバそうな警告がバンバン出てる」


 ……まぁ、脳みそ飛び散ってたもんな。普通に考えたら蘇らないよな。


「まぁまぁ、気配から死亡判定が出てなければセーフだから」

「俺にはその基準が全然ワカラネーんだけど?」


 ソレは知りませーん。


「ンな事より俺はアレが気になるんだが?」


 培養槽の中、漂うのは人間のパーツや服だけではない。

 青く輝く宝石があった。

 セレナ姫の秘宝で有る。


 ユマ姫の水煮 ~ネバネバ粘液のカプセル包み~

 ・隠し味 セレナ姫の秘宝 一ヶ


「あ! ヤベェ混じっちゃった!」

「ふざけてるのかテメェ!」


 血走った目の木村に首を絞められた。キツいねコレ。


「間違いって事にしてくれよ。コレはアイツの妹の形見なんだ」

「感傷で遺品を投げ込む場面じゃねぇだろ!」

「アレはな、さっき言った凶化グリフォンの体内にめり込んでいた」

「……それで?」

「アレは魔法を吸収する特殊な魔石だ。凶化した魔獣が、あそこまで症状が進行して、肉体を保てていたのは異例なんだと、その原因があの秘宝だとしたら?」

「根拠は、あるのか?」

「ねぇよ、半分以上は感傷だ。アイツの妹が守ってくれるってな」

「チッ」


 木村が舌打ちと共に俺から手を離す。

 俺、なんか舌打ちされてばかり、傷ついちゃうね。


「もうやれる事は無いぜ」


 木村曰く、後は待つだけ、そう言う事らしい。


「じゃあ寝るか?」


 俺はゴロンと横になる。

 待つなら寝るが一番、俺としては当然の発想だったが。


「正気か?」

「だったら、剣を片手に敵の大将の所に乗り込むか? 扉を開けて?」

「ダメか……」

「ダメだな」


 施設の中は霧が舞っていた。

 この部屋の中でだけ、魔石をブン撒いてなんとか機械が作動するまで霧を中和したのだ。

 今扉を開けて、万が一機械が停止したらどうなるか? 想像したいモンじゃない。


「じゃ、お休み」

「お前何事も雑過ぎない?」


 言われながらも俺は眠ってしまった。

 木村はまんじりともせず過ごしたっぽい、健気だね。


 で、寝なかったツケは巡るモンだ。

 逆に俺はタップリ寝た分だけ催眠ガスの効果が薄かった訳だが。まぁそんなのは結局誤差の範囲かね?

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