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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
ちゃーむとうぞくだん
72/225

51 暗殺者 ※

 ◯ 51 暗殺者


「透明ドームがそんなに簡単にばんばん出来ても困るだろう。そもそも光と闇のエネルギー交換がスムーズに出来ないと難しいし、その技術が自然に出来ないと気配が消せないからな。透明マントが禁止になったのはそのせいだ」


 マシュさんが透明ドームの講習に鼻で笑っていた。


「透明マント。懐かしいね。あのマントはアキの大傑作だったよね」


 レイが珍しく大絶賛だ。メレディーナさんに取り上げられるまでは随分楽しんだらしいからね。


「ピアの元々の気配も感じ取りにくいから、それを更に隠蔽してしまえば見失ってしょうがない。美人にでもならないと見落とす」


「……なるほど」


 舞桜の姿はある意味普通になったという事かもしれない。

 あのマントを作った頃から僕は両方の力の交換をやり始めていたという事だ。長所は伸ばした方がいいのだろう。


「でもあれは僕無しでもしばらくは持つ様にしっかりと作ったはずなんだけど」


 神域を創るくらいの慎重さで作ったから、僕との距離も関係無しに固定化できてたはずだ。でもそれだと作る段階でエネルギーをかなり周りから集めるから目立つ。死神としては戦闘地域での行動としては失格なのだ。それにみかんの部屋でこそ出来た業だ。


「そんなの、とっくにボクが時間固定しておいたから。まだメレディーナが使ってるんじゃないかな?」


「そうなんだ」


 呆れた。あれを時間固定出来るんだ。僕にはそれは無理だ。やっぱり得手不得手は誰でもあるってことだ。


「気配消しがそれでちょっとだけ落ちたけど、誤摩化せる範囲だったし大丈夫だよ。メレディーナにだって散々翻弄されたと言われたしね」


「やっぱり本職の気配消しには敵わないか?」


「仕方ないよ。そっちは専門じゃないし」


「それもそうだな」


「でもあれは敵に渡ったら最悪だよね。透明マントは教えたらダメだからね?」


「分かったよ」


 忠告通り誰にも教えてないし、メレディーナさんにも二度と作らないと誓ってある。今ならもっと楽に作れそうな気はするけどね。


「それで日本の学生は受け入れを始めたの?」


「そろそろ復活だって聞いてるけど。どうかな?」


「灰影は来れなくなっていると思うけど、自分で払って綺麗にしている場合は仕方ないそうだ。確かに異世界間管理組合の連中にも多い。いつまでも神格の芽生えない下働きの者達の総称だ。大体中間職に多いのは何でだ?」


「そこで出世が止まってしがみついてるからじゃないの?」


「そういう事か。新人には試練をってことかと思ってた」


「ちゃんと霊力の高い物を食べたりして浄化してるんだね?」


「そういう事だ。そういう奴らがここの食材を欲しているってことだ」


「あの団体が持ち帰った食べ物は、じゃあ……」


「売り出されていたそうだ」


「何か分かったよ」


 納得だ。辛いけど、食べて悪を祓いを封じていたという事だ。ハイドーリアさんみたいな修行をちゃんとやっていると捉えるのか、誤摩化していると捉えるのかの違いだ。自分で扱えないくらいの瘴気やら怨念を集めている可能性もあるけど……それは言及しないらしい。

 真面目な留学生達はというと同じ様に足止めをされてると聞いた。明後日にはまた学生達が戻ってくる。少ししたら僕ももう一度神官の仕事をやり始めようと思う。その前に、お酒造りと神舞の練習だ。月夜神のステージを第五フィールドで復活させるのだ。それで実質のガリェンツリー地上世界での復帰だ。



「修行の割には変わってないな。アキの姿は取らないのか?」


 第六フィールドの教会の建物内の一室で待ち合わせて会う久しぶりの祐志は、そんな台詞を言いながら差し入れを嬉しそうに受け取っている。月夜神の姿を見て笑っている。一年ぶりなんだけど、そのことには突っ込みはなかった。


「ま、まあね。修行は自前で女の子になるって言うのをやったんだ」


「ん? 女の子に変身は前からだろ。それよりも夢縁にはいないけど、どうなってるんだ?」


 その事の方が気になってたという。首を傾げている裕志の姿を見て考える。情報は何処まで漏れているんだろうか。


「えーと。卒業したから一般で勉強を始めるよ」


 他のメンバーはどうしたんだろうか。というか目の前の人物は祐志じゃないのは分かっている。


「あー、他の奴らは忙しくて。盗賊の一味がやっと尻尾を出して調べてる所なんだ」


 今日の護衛の獅座達が両隣で警戒をしている。


「一年も経っているのに捕まってなかったんだ。というか、黒魔法を使う……」


 向こうは話しながら黒魔法を使い始めている。が、そんなのはこちらも防護をしっかりとしているので効かない。


「ちっ、バレたのかよ。この偽装も見破るなんてな」


 言いながら空間から出した邪気を放つ武器を手に持ち、襲いかかって来た。

 シェンブートがそれを受け取り、シュンザートが攻撃をした。偽裕志は素早く後ろに跳んで攻撃を避けた。

 彼の偽装の装備は最近の悪神やら邪神の標準装備の物だし、武器は霊気を喰らう悪魔が作り出してたものだ。つまりはここにも生きている転移装置が隠されているか、まだ裏切り者が冥界に残っているのか……。死神の派閥の刺客なのか。意外と多い敵の候補にちょっと困惑する。


「護衛は一人じゃなかったのか。情報が違う」


 焦った祐志の顔の暗殺者は二人の猛攻撃に次々と細かい傷をつけられていた。偽物だけど血を流しているのを見るのはちょっと気分が悪いかも。やっぱりあの武器は厄介だと思う。

 侵入者の偽装も強い邪気も教会に入ってこられた時点で神界には警報が鳴り響いていた。十分前から既にここは警戒態勢が取られている。

 周りの見回りは獣守達五人が目を光らせて応援がいるのか支持者がいないかを見極めている。本物の裕志の無事も分かっている。本当に盗賊の一味を追い詰め中だけど、どうやらそっちもこの目の前の元冒険者ギルドのギルドマスターの指示のせいだろう。既にそっちも応援は行っている。


「へ、人質がこっちはいるんだ大人しく殺されろよ」


 強い思念を飛ばして来たので精神支配を試みているみたいだが、内面の思考までこっちに飛ばしてくる。既に僕はそれで精神がやられた気がする。死体愛好者の思考なんていらないよ。要はネクロマンサーでもあるってことだけど。


「第七フィールドと第ニフィールドは既に制圧しています」


 シェンブートのその言葉に憎しみを込めて睨み付けられたが、悪神は黒いマントを羽織って影に逃げ込んだ。影の中を追うのは簡単だ。月光の魔術を追いかけて教会裏に出て来た所を、同じく影を追い掛けて闇のベールを被って潜んでいた外の獣守達のうちの三人が取り囲んだ。


「おっと。俺は別に悪い事してないぜ? 人違いだ」


 獣守達に遅れて影から出て来た僕が見たのは祐志の姿を解いた死神が、おどけて相手の隙をうかがっている姿だった。


「違いません。闇の探査レベルは上級者か特級者に達していますから」


 しれっとそんな事を言っているイディッタの姿がベール越しに見えた。キリッとした顔で怒りを秘めた冷たくも激しい視線を相手にぶつけている。じりじりと距離を詰めて行く緊迫した時間が流れている。

 僕との繋がりで、眷属である獣守達には影の中の感覚を送ってあるので彼の動きは丸分かりだった。

 不意にポースから第七、第二のフィールドでマリーさん達の活躍にて悪神を捕まえたとの情報が届いた。ポースを中継して闇のベールはフィールドを跨いでの行動が出来る様になった。ポースの中の闇の司令室のせいだ。時間が三時間しか持たないけど、この敵には充分だった。


「ちぃっ。厄介な!」


「戦いを諦め投降をお勧めします」


「断るね! アンダーグラウンドこそ俺の生きる世界だっ!」


 どうやら悪神としての生き方が性に合っていると言いたいらしい。月の癒しを悪神に掛けたら、意外にも平然としていた。


「そんなの効く分けねぇだろ! ばーかっ」


 勝ち誇った顔を見せてくる。ころころと変わる状況に合わせて、自分の優位を何とか見せようと必至な所は我がままに育ったお子様みたいだ。


「聖耐性の装備ってあるんだ」


 変な感心をしてたら、顔色がさっと悪くなった。何で分かるんだって顔をしているが、直ぐに分かるに決まっている。


「その目、魔眼か。それも随分いい物だ」


 獣守達に捕まって既に地べたに這いつくばっているが、物欲しそうな顔がこっちをねめつけてくる。人の体を商品みたいに扱わないで欲しいぞ。というか、魂に付随している生態端末は随分良い物だ。


「生態端末から外に情報を流しているから妨害を」


「畏まりました」


 脳内でクシュリーに指示をしたら即、意識を刈り取り闇のベールで覆って外との繋がりを消させていた。


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