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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
やみのとびら
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 皇子の旅路 7

 ※ 7


 悪神達が去ってから、いや、実は悪魔が出たと母上から聞いた。それも上級悪魔だ。

 ま、まあそれは良い。母上と姉上が守り神と黒の神々に護られていたから、身の安全は保障されていたと仰っていたので間違いなかったのだろう。最後は殆ど、小さなアクセサリーの中にある非常用の空間に入って眠っていたらしいし、アキいや、ピピュアが目が覚める度に状況を教えてくれていたらしいから、怖い目には全くあっていなかったと聞いた。その点は安心した。


 街は瓦礫の処理は終わり、神官達が浄化をしながら街の人達の心の傷を慰めているので、復興は進んでいる。オアシスの水の汚染が一番に回復したのは神々の意向なのだろう。兄上や父上も援助を惜しみなく続けてくれているし、深青の宮も、東西の塔も今一度建設をする為の設計に入っている。最も、宮が一番最後になる。あそこが一番汚染されているからだ。

 飛竜で少し飛んだ場所に2、3メートル程の池が最近見つかったのだが、そこにしばらく住む為の別荘を建ててはどうかと言われている。調度、飛竜での移動が、無風で一時間ちょっと、歩いて丸二日掛かる位置だ。少々不便だが、別荘としては場所は悪くない。大きめの岩があるお陰で地盤も悪くない。土の魔法で専門家が弄れば何とかなる。

 水も然りだ。表に出ているのなら地下から引き出して水源を大きく広げる事も可能だ。それに、街が襲われた時の避難所になる。現場には神官達のキャンプ跡があった。外の結界を張るのにここが拠点になったという。


「一年前に見つかったこの水たまりが地下の水と繋がっているのが調査されましたが、それがここで役に立ちました。これが無かったら戦況は持たなかったと黒の神々も仰っておりました」


 スーシンの報告に頷いた。砂漠の中では水の確保が大事だ。魔法で出すと言っても限度がある。


「ここは大神殿からの通り道にあるが、俺達以外は使わない。飛竜の為の水飲み場にはなっていたので、時折手入れはしていた。役に立ったのなら良い事だ」


 水が枯れない様に時折調査には来ていたのだ。簡易に縁を岩で囲ってあるのを見ながら、別荘にはこのくらいの水の確保があれば良いかと思案していた。草も随分生えて低木の芽も出ている。


「ええ。大神殿との行き来は、双子岩からこちらには一般人は来ません。途中の食料の確保に渓谷の村に寄るので方向が違います」


 スーシンも勧めているし、あの様な事がまたないとは限らない。我が神もお許し下さるだろう。伺いは立てるが、反対はなさらないだろう。大神殿の方から別荘の話が来たのだから。


「この位置なら旅人も寄るか?」


 一般人の旅は翼竜ではなく地上を行く地竜での移動だ。出来ればここを中継して深青の街に向かって欲しい。


「どうでしょうか。村からは微妙な距離ですし、ここの水は非常用とした方が……」


「そうか、難しいか」


 確かに、地図で位置を見れば少々遠回りになるし、村からなら渓谷を通った方が緑も多いので三と五の姉上の住む紅鱗の街に向かった方が良いのは分かる。そしてそこからなら兄上の住む緑の平原に向かう方が栄えている……。


「とりあえず、大神殿に行って伺いを立ててくる」


「はい。拝謁が上手くいくことを願っております」


 スーシンが頭を下げた。外に出るとこういった事が特別だと良く分かる。昔はこれが普通だと思っていたが、特殊な関係だと今は思う。だが、秩序を保つには大事だ。これも受け入れなければならない。この礼に応じれる人物になろう。兄上の様におおらかでいて芯のある姿は憧れだが、自分はそれにはなれない。自分らしく模索するとしよう。


 大神殿に行く用意をしていたら、ホングから連絡が来た。メッセージには息抜きに旅行に行かないかと誘いが来ていた。どうやらアキと……いや、ピピュア、いや、何か新しい身分を作ったとか言ってたはずだが、その新しい姿で一緒に旅行に行くというのだ。それもずっと新人の出入りが出来なかった世界だ。それはちょっと興味がある。

 悪神の企みでのダンジョンが出来て直ぐの世界と書いてある。ダンジョンのある世界でも護衛が必要ないくらいに俺も成長している。ここは向かってみるのも悪くない。今は街も落ち着いているし、復興のヒントになるかもしれない。ここもいわば似た状況だ。

 母上に、復興のヒントを探しにしばらく出ると言って、大神殿に向かった。ガランが、付いて来ていて、神の許可が出たなら知らせを持って帰ってもらう事になっている。



「どうだい? 良い出来だろう?」


「……」


 神とは何なのだろうと思うくらいに威厳の無い、しまらない笑顔で等身大ピピュア像を我が神は紹介してくれた。色とりどりの真珠の散りばめられた像は確かに綺麗だ。

 しかし、あの水場に別荘を建ててよいかの伺いには答えてもらっていない。


「そうだね、あそこには神殿もついでに建ててしまおうかと思うんだ。旅の休憩所が目的のだね。その用途が正しいよね。ピピュアと僕とが初めてあった記念の場所だし。水たまりに奮闘していた可愛い姿も良いけど、元々は彼女があそこで休憩を取っていた場所だ。水も彼女が原因だからこの像を飾ってしまおうと思うんだ」


「はぁ」


 目抜けな声しか出なかった。


「結局、あの水は必然の事柄と証明されたし、彼女の師匠もこの像には許可をくれたしね。勿論、近くに別荘を建ててしっかりと管理してくれると嬉しいな」


「……確と賜りました」


「それで、また外に行くのかい?」


 俺の思考を読んだのかサラッと聞かれてしまった。油断しているとこんな感じに力を示されてしまう。いや、神に取ってはこれで当たり前なのかもしれない。


「はい。そのつもりです」


「おや、ピピュアと会うつもりなんだね。なら良いよ、行って来ると良いよ」


 ご機嫌で神から外へと行くのも許可が出た。どうも浮かれている感じの彼に少々不安を隠せなかったが、何も言わないでおく事にした。


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