30 本格活動
◯ 30 本格活動
とうとう、生まれ変わりをして一年が経った。お誕生日祝いを盛大にされて、僕は大満足というより戸惑う方が大きかった。神殿をあげての盛大なパーティーが開かれ、ちびピピュアの姿を披露して更に盛り上がったからだ。
「ちびピピュアの姿もピアで呼び方は統一しとこうか?」
お披露目も終わり、家に戻ればメレディーナさんも付いて来ていた。ソファに座って話をしている。
「見学の方々も混乱しないでしょう。ピアのお酒も良い感じに出てましたわ」
お誕生日祝いと共に、ピアの神力酒が発表になった。
「幼い子供の姿なら、あのお酒は上出来の神力だし、ペンダントのオーダーは来年迄埋まって閉め切ったよ」
ペンダントも解放する事に決まった。チャーリーが、暖かいミルクを運んでくれたのでそれを貰った。
「あのペンダントは悪用しようがありませんから」
「悪意を通さない機能はあれにもちゃんと付いているし、問題ないよ」
「ええ。そのお思い迄もが相手に伝わるのですから、覚悟が必要なペンダントなのですが、随分売れています」
このペンダントだけはそのまま偽装や、本人指定無しに売り出す事になった。神見習い以上の力の持ち主以外は使えない様に最低限の設定はしたけど。恋人に送っても良いし、お互いの心の温度が伝わると売り出している。注文の際にちゃんと効果の説明はされている。これが売れているのは良い事だと思う。勿論雨森姉妹には既にこれからもよろしくと既に渡してある。
「もう一つの方も売れ行きは上々だよ」
『調整繋酒』の中にレイとメレディーナさんの『愛染夢酒』と紫月の『青葉養酒』を少し混ぜたカクテルを飴……じゃない、『神力魔結封玉』にしたものだ。二人の愛が続くようにとの大人のペンダントだ。
「ピアの姿が閉じ込められてるペンダントには敵わないね」
「人気がありますから仕方ないですわ。こちらも綺麗ですが、可愛らしいとは言いませんから……」
エメラルドグリーンのオーラを纏った透明な玉中に薔薇に似た花が開いている玉だ。略して神封玉でも通じそうだと思うけどどうなんだろう。
「自分の力が封じられるみたいで嫌だよ」
レイが僕の思考を読み取ったのか文句を言って来た。
「神力を譲渡出来る形にしたり、アイテムにするのは難しいのですから。用途で言うなら神力玉でしょうか?」
「何処にも負けないオリジナルな美が入っているからね」
「レイさんの作るお守りも一段階上がりそうですわね」
「紫月と一緒にボクも神力玉を作ったんだけど、直ぐに解けるみたいに力が魔結晶を飲み込んで形にならなかったよ」
「普通はそうなりますね。ピアさんの力には隔絶する闇の力が入っていますから、それを上手く利用していそうです」
「成る程ね……意外に死神達にやらせたら上手くいくかもしれないね?」
「試してみる価値はありますね」
その試みはされる事は無かった。パーティーから大量のお酒を手にして戻って来たマシュさんが説明してくれたからだ。霊気特化な僕の特徴だそうだ。強く反発もしなければ攻撃力も無い。変わりに包み込み受け入れる事に特化しているのだと。
「魔力譲渡だけにしておくのは勿体無い。普通のお酒も閉じ込めれるはずだ。火の属性とかの特性が無い変わりに、無属性の魔結晶は使いどころは多い」
「まあ、そんな特徴が?」
「無属性はマシュ達、研究者受けはいいんだね」
「魔法陣を刻み、細かい特徴をつけれるのは助かる」
「魔術服もそういえば無属性の物を求めていたね」
「レイもアルバイトで魔結晶を卸していただろう?」
「まあね……」
レイのアルバイトに魔結晶作りがあったなんて知らなかった。
そんなこんなで普通の魔法での特徴をつけたお酒も閉じ込める事が出来た。邪気払い等のお酒なら試せばちゃんとお守りとして効果を発揮したし、舐めても酔うことも無かった。アルコールは飛んでるから当たり前だけど。
つまりは僕にも魔法の効果の恩恵があると言う事だし、お酒の飲めないお子様にも道が開かれたという事だ。
神力玉は舐めずに手の中で溶かす様に少しずつ使えば他の人の力も何となく使えた。ここに来てやっと僕の魔結晶はまともな使われ方をするアイテムに変わった。作るのも上達したせいだけど嬉しい。
「妖精達の反応はどうなんだ?」
「うーんと、魔法の籠ったお酒は妖精達の間ではお金みたいに取引の材料になってたから……更に便利になったみたい」
込められている気と魔力が高いのもお酒の好まれる所だ。だけど、持ち運びに向いてないので、空間に収納出来る妖精達に限られている。
「ノームなどの精霊や妖精達の中には酒飲みも多いが、そうでない妖精達には魔結晶に閉じ込めた方が使い勝手は良いんだろう」
「精霊達も喜んでたよ。ここの神域以外でも取引に色々と使えるから」
「妖精達はお金の概念はないからな……お礼には魔力の譲渡か魔法での奉仕が基本だ。だが、あの飴玉は外に出さない方がいいぞ。この神域でだけの取引の方が良い。あれは人に渡ると良くない」
その通りなのでマシュさんの忠告に頷いた。人との違いは衣食住のあり方の違いに価値観がずれるのだから当たり前だ。普段は人に感心は無いのが精霊達だと思う。それに人と精霊との契約は、精霊には余りメリットは無い。
妖精達は魔力をくれたり仲良く出来そうなら、人と契約する事もあるけど、大抵は人の心の機微を糧に成長するので契約は慎重にしないとならない。ちゃんと見極める事が大事なのだ。お互いにメリットはあると思う。魔法での奉仕を望む人は多い。
「幻想聖魔獣との契約は本来は禁止事項なんだけど、ピアはボクの弟子でもあるし、神の見習いだからね」
「例外って事?」
「聖域の管理をして頂いてますし、紫月さんの良きパートナーですから」
と、メレディーナさんは微笑んだ。ま、まあね?
「少しは分かって来た?」
「う、ん。まあ」
そんなに二人してみられたら、顔が熱いぞ。カシガナとの契約は婚約みたいなものだ。沢山の妖精達を生み出してるし、紫月とは多分……。
「植物が相手だし、ゆっくりね?」
レイの言葉に僕は頷いた。
「ピアは幻想聖魔獣だ。幻想というのは夢に近い。空想の産物ともいわれるせいか、魂が変容してたとえ地獄に堕ちても消滅はしない」
「神々もそれを狙って幻想獣をしたがるが、大抵は失敗する」
「逆だよ。変化が出来る段階になって初めてやれるんだ」
レイが不機嫌に言う。
「見習いは出来る段階には無いはずだが何故かなっているな」
「紫月の念いが通じたんだよ。そこは奇跡を信じないとね。キヒロ鳥の羽根を使ってたと思うよ?」
「心配ばかり掛けては紫月さんも気が気で無かったのでしょう。安心して外に送り出せます」
……串カツを食べながら悪魔討伐の報告を待っているはずだ。そうか、だから玄然神は特別扱いになるんだ。メシューエ神が遠慮するのはそこかな。
「神幻想魔獣は?」
「玄然か? あれはもっと別次元だ」
ちらりとレイの方を見たので、何となく分かった気がする。レイもきっと消滅は無いんだ。それどころか三つも存在がある。いや、何となくまた増えてると思う。ちらりと見れば開き直ってか、胸を張り顎をあげてにやりと笑っている。




