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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しろいつき
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1 雛

 しろいつき

 ◯ 1 雛


「やあ、可愛い雛だね」


 レイが笑っている。その横で紫月が頷いて微笑んでいる。気をしっかりと感じれる様になったら事態ははっきりと分かった。

 何日目か分からないけど、キヒロ鳥の成長記録は紫月の日課ならしい。毎日朝から頭を撫でてくれる。ポースはキリムと一緒に巣を覗いては直ぐに引っ込んで紫月と何やら話していた。


 両親はキヒロ鳥の夫婦だ。つまり雛の三匹のうち一匹は僕だ。自分の家の屋根に生まれ変わる様にされたらしい。

 まあ、管理し易いちゃしやすいし、皆の近くに生まれたのも分かる。確かに人に指定はしなかった。だからって鳥になるとは……まあ良いだろう。紫月が嬉しそうだし、マリーさんも獣守達も満足そうな顔だ。何かが違うけど気にしたら負けだ。鳥の生も悪くない。


 最近羽毛が生えて来てふかふかになったが、自分で触れないのが残念だ。触る為の両腕が羽毛に覆われているし、嘴の感覚はまだ鈍い。兄達は雄だが僕は雌に生まれたらしい。お母さんが気のせいか女の子の扱いをしてくる。紫月は僕の羽毛を毎日手入れに来るが、気にしないでおこうと思う。僕も紫月がこんなふかふかになったら同じ事をする自信がある。


 鳥の世界では雄の方が羽根は派手な方が多いが、キヒロ鳥もそんな感じだ。大差はないけど尾羽が長かったり飾り羽根が華やかだったりする。シマエナガっぽいふっくらした羽毛に覆われた体に、頭にピッと立ってる桃色の飾り羽根が特徴の可愛い黄色い鳥だ。尾羽は長くて金色の光をまき散らしながら飛んで行く姿は綺麗だ。

 兄達は薄黄色の羽根に桃色の飾り羽根の為の色の特徴が出始めている。僕は薄桜色の羽毛なので本当にキヒロ鳥なのか怪しい。兄弟よりは遅く生まれたので成長が遅いだけかもしれないし。

 お母さん鳥に餌を貰いながら、他の兄弟を見れば、早くも翼を動かして飛ぶ為の動きの練習をしている。それともあれは歩く練習だろうか?


 キヒロ鳥がミミズを食べるのでなくて助かった。木の実や花、花蜜とか色々と食べる。運ばれてくる花で季節は死んだ時とそう変わらない冬も終わり、暖かさが増す頃だと思う。家の庭は餌の宝庫だ。キヒロ鳥の育成も家のみんなが協力的だし、快適だ。庭を見れば菜園班の皆も時々見るし、雛の成長も見守ってくれている。

 夜は家族皆で固まって眠る。この時が一番至福だ。暖かでふかふかで気持ちいい天然羽毛布団だ。朝は、目が覚めたらお母さんの言いつけを守って三兄妹でお留守番だ。朝ご飯を取りに両親が出かけている間は僕達が巣の中で大人しく待つ。

 お父さんは近くを警戒しながらも花を食べている。時々マリーさんの声が聞こえるから餌を貰っている気がしないでもない。ちゃっかり者だ。


 今日は一番上の兄が風の魔法を使える様になった。二番目の兄は羨ましそうに、そして尊敬の眼差しで見ていた。僕も同じ様に兄を見ていたと思う。既に一番上の兄は大人の羽根に近いものが生え始めている。

 僕も飾り羽根の辺りが痒いし、生えてき始めているのだと思う。羽毛も最初よりは濃い色になって桜色になり、お腹の辺りは白くなった。雛の中ではチビだけど、一番最後に生まれたのでそれは仕方ない。

 今後、飛べる様になって巣立つ時にはメレディーナさんに報告に行く必要がある。鳥の姿では異世界間管理組合の組合員どころか神官でさえも危ういが、どうなるんだろうか? その辺りも聞かないとならないと思う。


 ある日、レイにケリィ、マディ、ペピィ、パチィ、キティ……と書かれたカードの一枚を引かされた。名前だろうか? 裏側に書かれた名前は既に分からないが、端から二番目のを選んだらピアになった。正式にはピピュアだ。

 紫月が幻獣大百科辞典を見ながら指をさして教えてくれる。キヒロ鳥の中でもピンクの体の僕は少し珍しいタイプになるという。僕の羽根で転生後も出会える様に出来るのだとか。つまりは永遠の愛の約束を叶える鳥だとか……誰かの陰謀を感じるがなったものは仕方ない。

 しかし、何故東雲さんの目がものすごく僕を見つめて来ているのかは納得した。何かを求める気迫を感じていたのだ。玄然神はそんな東雲さんの気を逸らそうとしてくれているので助かる。まだ僕にはそんなものを用意するのは無理だしね。


 暫くしてカシガナの花が咲き始めた。つまりは春になった。僕達は空を飛ぶ練習に明け暮れている。心配していたけれど、色の割には僕の翼は割と上品になった。派手さは無く、体部分は純白のふかふかの羽毛、飾りの羽根も少し濃い桜色の羽根がピッと頭の上に立って尾羽も桜色の羽根が先っぽに見える程度だ。風切り羽の先っぽに行く程グラデーションで桜色に変わる。水に映してちゃんと確認したらそんな感じだった。

 しかし、兄達の華やかな金の羽根に比べると地味すぎる気もしないでもない。まだ金色の光をまき散らしては飛んでおらず、普通に飛んでいる。一度、紫月に踊りをせがまれたが、この姿で踊るのはもうちょっと待って欲しい。出来れば飛ぶ練習をもうちょっとやってからで無いと困る。でもこっそりと練習はしている。


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