表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しろいつき
27/225

17 神龍酒

 ◯ 17 神龍酒


 東雲さんに雨森姉妹がやって来た。ちびピピュアの姿でお出迎えしたら、董佳様が変な声を発していたが問題はないと思う。

 玄然神は自分の神域で待ち構えているので、紫月と一緒に馬達にお願いして運んで貰う手筈は整えてある。


「では、東雲さんどうぞ」


 天馬にまたがった東雲さんはおっかなびっくりしている。


「怜佳さん、董佳様準備出来ましたか?」


「勿論よ」


 まあ、雨森姉妹はここの常連客だから心配はしていない。生まれ変わりをしてからは初めてだけど、問題はないと思う。


「それで、何でキヒロ鳥なんてものをやってる訳?」


 董佳様が聞いて来た。あの声はどうやら驚きの声だったらしい。ちびの姿は偽装が今一なのが証明されたかもしれない。董佳様には直ぐにバレたし。


「え、と、偶々です。自分の家の屋根に生まれ変わりました」


「そういえば巣があったわね」


 納得したのか呆れたのかそんな表情をしているのが見えた。

 東雲さんは初めての天馬の飛行で慣れないのか、馬の首にしがみついていた。今日の空は乱気流も無く普通に清々しい感じだ。時々変な空間を跨いでいるがそれ以外は問題は発生していない。重力が反転したりはここでは普通だからね。

 途中でワタアメの雲に群がっている羽根の豚さんが見えたけど、楽しそうなので手を振るだけにしておいた。


「それで、姫は馬に酔ったのか?」


「そうみたいですね。天馬は初めてだったみたいで、少し休ませてあげて下さい」


 玄然神は、東雲さんがハンカチで口元を押さえてふらふらしているのを抱き上げ、家の縁側から部屋へと運んでいる。ゆでだこみたいに赤い顔の東雲さんは、既に意識があるのか謎なくらいの様相になっている。

 イディッタが布を冷やして東雲さんの頭に乗せていた。治療は任せて大丈夫だろう。神官の資格は持っているのだし、優秀だ。


「そうしよう。ところでマリーが最終の材料を運んで来ているはずだがまだ到着しておらん」


「あー、直ぐそこ迄来てますよ」


「そうか。ならば始めてしまうか」


「はい」


 言っている間にマリーさんも到着して酒造りは始まった。真剣な表情の玄然神にうっとりの東雲さんはいつの間に復活したのだろう。そんな疑問は頭の隅にやりつつ、僕達は酒造りに没頭した。巨大瓶の中には龍鱗と良く分からない物が大量に入っている。

 レイのお酒の様に凝集するのは自分で飲む分だけにしてもらい、他の物は程よく止めた。炎を操る者ならそれを強化出来るはずだからと、オーディウス神とガヴィラーザ神に渡して役立てる予定だ。派閥の問題を解決するならあまり一つの所に売り込むのは良くないとの星深零からのお達しで、取り敢えずオーディウス神の良きライバルである派閥の方にも渡す事に決まった。お酒造りの見学ツアーは泊まりがけ一週間もかかったけど、問題なく済んだ。後は力が馴染む迄時々様子を見ながら放置だ。


「姫、退屈ではござらぬか?」


「ええ。とても興味深いお仕事を拝見出来ました。妾もお手伝い出来れば良いのですが……」


「姫はいて下さるだけでも励みじゃ。それにあの酒は強いので触れられるのはよした方が良い」


「あれを飲まれるなんてさすがですわ」


「いやぁ、それほどでもあるかの〜」


 お酒造りが最終に近づくにつれ待つ時間が長くなり、その間はこの二人はこんな話を延々としながら酒の庭をデートしていた。そんな気はしてたから僕達は家の中でトランプしたり料理を作ったりして、甘口攻撃からやり過ごしていた。取り敢えずは無事にミッションはクリアしたので僕達は天馬に乗って、東雲さんは玄然神に送ってもらい、僕の家に戻って来た。


「やあ、終ったの?」


 皆がお酒造りに没頭している間、レイは寂しくお留守番をしていたみたいだ。ちょっと拗ねてる?


「終ったよ。今度はレイのお酒だね?」


「そうだね。あれをもう一度作るのは良いけど、ピピュアとも一度は一緒に作らないとね」


「光のお酒も体験しておいた方が良いよね」


 レイのお酒も玄然神と似た感じだから、ちょっと押さえた物も作らないとダメだと思う。蘇生とか再生、それに浄化とか光の力の凝縮だ。意外とこの間の上級悪魔も裸足で逃げ出すかもしれないやばい物だ。

 もう少ししたらそれを手伝う事を約束して、天馬から下りて、お土産を手にした女性達を見送りに玄関迄向かった。

 取り敢えず、東雲さんが満足そうなので僕達はホッと溜息を付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ