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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しろいつき
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15 相談

 ◯ 15 相談


 身分詐称に失敗したというか、住む場所が綺麗に無くなってネラーラさん達もそんな事が出来る状態じゃないのだ。街の復興も同時進行だしじゃましては良くない。

 仕方ないので、死神の巣で身柄を預かってもらう事になった。オーディウス神が後ろ盾だけど、月の宮でも発言力の高いメシューエ神が面倒を見てくれる。何せ死神達との交流がまだ足りないと、ラークさんが自覚したのだ。危ないけど一番必要なのはそこだからレイも渋々死神の巣に向かう事を了承していた。

 守り神とナリシニアデレートの後処理をしつつ、ナリシニアデレート冥界とアストリュー冥界のドゥーフェスさんの所をうろうろしながらアイスとして動く事にした。勿論話題のみかんの中間界でも勉強をやっている。情報交換は色々と情報を提示してくれる所がないと無理なのだ。

 さっそくナリシニアデレートでの問題が上がってみかんの講堂で会議しているみたいだ。解決策を打ち出せる所迄纏めるのは大変だと思うが、成功して欲しい。僕はその講堂の会議を見学出来る場所でそんな事を考えていた。

 ところでいつの間にか第三の円形広場迄広がって、第四円形広場の建設をやっているのは僕の数え間違いじゃないと思うんだ。一体どうなっているんだ?


「いっそここでも良いと思うんだ。ピピュアの拠点」


「ナリシニアデレートは?」


「あれから邪神も悪神も見つかってないし、悪魔も出てない。あの悪魔達は街を移動しながら悪徳神官達を配下に着けて勢力を強めてたんだけど、完全に手順が出来上がってたよ……意外と出来るよ。それが人間の体や内蔵やら魂じゃなかったらだけど」


 面接官レイナ姿のレイは、講堂での会議の休憩時間に僕と一緒に『みかんなカフェ』にてハーブティーを飲んでいる。女の子同士のお茶は何となく気恥ずかしいかも。

 あの悪魔は素材を売って他の勢力と取引をしていたらしい。とある悪神がそれらを死神の中の協力者に荷物としてそれらを紛れ込ませて他の勢力に売りに出していたのだ。

 素材は訳の分からないルートを経て何処かにある拠点で、必要としている悪魔や悪神、邪神の仲間内で使っていたと見られている。何処かにあの怪しい武器やら気配を消す装備を作っている場所があるのだ。

 それが今問題となっている、闇のマーケットの流通経路の一つだったと分かったのだ。売られている中には悪魔がこちらで動ける様にするあの瘴気の固まりも入っていた。でもあれは異世界間管理組合と取引のある世界ではほぼ対策されているのであの悪魔は持っていなかった。癒しの力の持ち主の多いナリシニアデレートの地が狙われたのだと思う。


「月の宮の人達がここに集まってるって聞いたけど?」


「ここの方が安全と言ってるかな? 商売をするのにも自身の拠点をもう一つ持てるからと進出して来てるよ」


「へえ。そうなんだ。うちの祝呪術研究所も移動しようかな」


「封鎖の時に研究所は潰れてたって?」


 内装で弄った場所全部を持って行かれていた。僕の作った一枚岩の床迄ごっそりと持ち去られていたので石造りの壁は全壊していたのだ。その瓦礫の下で二人の職員は死にかけていた。


「うん。コクホイドさんとウェラージュさんは、地下の実験室で縛られてたんだ。ナリミルさんが様子を見てくれてよかったよ。二人とも餓死寸前だったから大変だったし」


「アイスとしてここに拠点を出す為の契約をお役所でやると良いよ」


「分かったよ。今日は町長は誰がしてるの?」


 町長セットでの変身は僕が不在でも獣守達にやって貰えるので問題が無い。それに最近は忙しい上に仕事も複雑でとても僕には出来ない仕事になっている。


「ティートリュウムだよ」


「二人に相談してからこっちに移るよ。向こうの建物は問題が解決してからの方が良いし」


 今は瓦礫も全部処理して猫王研究所に所員二人を預かってもらっている。下働きをしているから大変みたいだけど、給料はもらえているから大丈夫だろう。というか、僕の所に来ないかもしれない。それなら研究所は獣守達とでもやろうかな? 閉鎖は勿体無いし、場所移動しての拠点を作っておいても損は無い。

 二人は設備の整った場所での修行をもう少ししたいとの返答だったので、猫王に移籍出来るかトーブドンモ博士に聞いてみた。


「アイスちゃんは移籍してくれないのか? もう一度考えてくれ〜! プリィ〜ズ!!」


 下心駄々漏れの鼻息の荒い様子で言われても……しかし、専門職の資格は欲しい所だ。メシューエ神に相談してみると言ってから一旦連絡を切った。あれだけのあからさまな欲望をぶつけられるのは嫌な気分だ。というか鳥肌ものだ。いや、鳥だけど。


「アイスちゃん。相談って?」


 メシューエ神は何故かみかんの町の第三房街に住まいを移していた。みかんの町にいるなら家にいらっしゃいと、およばれされたのだ。応接室に入ってふかふかの克実ブランドの敷物のしかれた部屋の中に通され、カバーの色をいつでも変えれる克実ブランドのソファーに座って向き合えば、質問された。

 僕はさっきのトーブドンモ博士の移籍の誘いに乗るべきかどうかを聞いてみた。


「博士は確かに一流だけど、男としてはゴミよ。どうせ嫌らしい目で見られたんでしょ? そんなところには行かなくて良いわ。大丈夫よ。私がちゃんとした所に紹介してあげるわ」


 良かった。あれに耐えるなんて無理だ。任せてと言ってくれるメシューエ神に感謝だ。


「まあ、理性で押さえ込めないタイプは分かり易いけど、奴は目の前の餌(美女)に弱過ぎるからダメよ。ああ言うタイプは浮気してこそなんぼとか言うから。誠実なタイプの方がアイスちゃんにはお似合いだもの」


 と、何故か男の見極め方を教わった。メシューエ神が言うには本能を程よく押さえれてコントロール出来るのが男としての第一条件だという。待てが出来ないのは論外だと。何故かその後は調教方法に話は移り、屑の見本はトーブドンモ博士とかトロ爺さんをあげていた。更に体だけの関係を持とうというタイプとそうでないタイプとの違いも聞いた。


「教育ね。そこの親がどういう人物かでも分かるわ。育った環境も大きいし、最初の相手も影響するの。だから家庭環境である家族関係と育った場所を当たれば大抵は想像付くわ。それでも嗜虐趣味なのかどうかは分かりにくいわね……」


 肉体を蹂躙したがるタイプと、精神支配タイプに別れるらしい。そういうのは良くないから早めに相談をしなさいと言われた。頼もしいです。


「人の性癖に文句はつけていいのよ? だって女なんですもの、対象とされているなら要らないとはっきりと言わないと、相手はどんどん変な妄想してつけあがるから。それから戦闘力を持ってないと暴力で乗っかってこようとするのがいるのよ。絶対に一人で町を歩いちゃダメよ? そこの護衛もこの町でならそうやって常に一緒に行動した方が良いわ。確か悪魔討伐の認証を受けてたわね……」


「はい。このみかんの中間界で二体程」


 チャーリーが獣人型の姿でにっこりと微笑んでいる。今日はエプロン付きのドレスを着てかわいいクマ耳を見せている。


「申し分ないわ。護衛としてかなり優秀よ」


「はい。異世界間管理組合でも正式な場所へ入れる様に資格も取る予定ですが、死神の巣にはまだ入れません」


「そうね、マントを認証するあのゲートを変更する訳には行かないのよ。それが条件でのあの空間なのだから。逆は無理なのよ」


仕方ないのよと眉を寄せている。仲間内でしか入れないと暗に告げているのだ。


「ええ。ですがマント分離者のマントでくぐり抜けれていた事実は否めないでしょう。今回の悪魔や悪神に邪神の出入りを支えていたのが調査されていましたよね」


 チャーリーはその方法で正式に規律を作り、中に入る許可がでないのか期待しているみたいだ。


「だからこそ、今は引き締めをしているのよ。あのマントの特徴を活かした戦力補強で分離出来る者の登録が完了していたのは運がよかったわ。怪しい人物が直ぐに分かったもの。それに脅されてやっていた者も、ね」


 メシューエ神はチャーリーの期待には難色を示し、そして悲しげに視線を下げた。刻印を刻まれた者はいなかったので自ら手伝いをしていた者が殆どだったのだ。

 ギダ隊が戦力として死神の組合に認められるよりも前から、この闇のマーケットを支えている団体に手を貸していた死神が多くいたのは非情に良くないのである。元ブランダ商会との縁が囁かれている。

 結局派閥とは格差であり権力の差だという。派閥の結束と地位向上を願うあまり道を外れ、黒く染められてしまったのだ。荷物等は中身を知らずに運んでいる者も中にはいたけど。

 そして問題は魔族達の状況にも及んでいる。元々瘴気に強い種だからと層に無理矢理押し込められていたり、死神の下働きをさせられていたり、そして死神にも多いのだ。この魔族上がりの死神達は死神の巣でも底辺を彷徨っている。呑気で騙され易いし単純で乗せ易い上にお調子者だ。あれ? 誰かと被るな……誰だっけ? まあ良いか。


「でも、魔族の受け入れも検討して、実際に受け入れ実験を始めているのは大きいのでは?」


 チャーリーがメシューエ神に微笑みかけている。


「それがあるからこそここに魔族が集い、死神としても希望を捨てずに要られるのよ。こっち側に戻ってくる者が増えてるの。悪魔になんて騙されてる場合じゃないと分かったのよ。ハイドーリアと言ったかしら? 確か彼女もここの闘神に拾われて修行をし、ちゃんと神格を伸ばしていると聞いているわ」


 マリーさんの人望が集まっているのだ。闘神として、そしてここの生産品の良さもマリーさんのこだわりだから。


「はい。ここは正に悪神や悪魔に蹂躙され、人々も外に売りに出される所まで落ちていた悪の巣。ですが良心的な神々に寄って、ここは再生されて希望の地だと言われています。全て事実ですし、痕跡も残ったこの場所での、まだ未熟な死神への教育の為の見て覚えれる教材として役に立っていると伺っています」


「まあ。良いのよ? おつむが足りない連中にも分かり易くていい場所だって言っても」


「良いモデルケースと捉えています。これに関わらせてもらっているのは誇りです」


 顔を上げてしっかりと主張をしているチャーリーは可愛い。メシューエ神も何か珍しいものを見つけて驚いている様な顔を一瞬浮かべた。


「んまあ、素直で真面目ね。可愛いわ。ここに住む人が増えてるのはそんな希望や夢を見れる所が、引きつけているのよ。そしてここの発展具合も日増しに高まっているし、場所もどんどん広がっているのは心強いわ。何より死神を無下に扱わない神々と交流を持てるのがここなのよ」


 一番重要なのはそこよ、と彼女は微笑んだ。


「だからこそ、借金を倍額も吹っかけるなんて嫌がらせを企む連中がいたんですよね……」


 虐げられていると魔族を煽動し、組織としての駒として動かしている者にとって、ガリェンツリー世界が長く続いてもらっては困る事になるのだ。本気で潰す為にガリェンツリー冥界を自分の息の掛かった所にするべくあの無茶な爆発する刻印を体に刻んだりしていたのだから。


「あー。彼らね……働いてるわね。ここを擁護しようと働きかけている連中に厳しく。たとえ解体しても当分は彼らは不運が続くんじゃないかしら……」


 何か知らないけど、ちらりとこっちを見られた。僕の呪いは解けてないのかな?


「呪いは解けてないんですか?」


「皆で固定してたわよ?」


 ……それは知らなかったな。


「良いんですか?」


「良いのよ。皆の気持ちが一つになってその効果を発揮したのだもの。良い実験よ?」


 どうやらどのくらいで自然に解けるかの追跡調査という名目で監視が着くらしい。僕はこの事は記憶の奥底に沈める事を決めた。

 そして本題の専門職の資格についてだ。大学みたいな学園があるのでそこで習うと良いと言われた。メシューエ神の紹介状を持ってそこに入る事になった。聞いた感じは夢縁みたいな場所だ。トーブドンモ博士のお母さんのジャクリーン教授に、よろしくと画面越しに挨拶もしたので大丈夫と思う。


「随分綺麗な娘ね?」


「そうなのよ。それに聖属性の精霊だから、変な虫が付かない様にきっちりと見てあげて欲しいの」


「まあ。やっぱり? 画面越しだとそこ迄は分からなかったけど……良いわ〜可愛がってあげる〜」


「そう言えば貴方の息子も相変わらずね。弟子にと誘って来たって家に泣きついて来たのよ。奥さんと上手くいってないんじゃないんでしょ?」


「あら、嫌だ。息子が迷惑を? どうせ鼻の下でも伸ばして困らした……その通りみたいね。いいわ、お仕置きに今度の研究の実験体になってもらうわ」


「それが良いわね。まだ対処も出来ない若い娘に、あのセクハラ挨拶は傷つけるだけだと理解させないとダメよ?」


「それが出来てれば苦労しないわ。嫁も悪いのよ。息子の下品なお話に付いていける様な女だから」


「困るわね。女だからと同じ要求をしてこられてもね。そもそも都合のいい女をやるつもりは無いのだから無茶を分からせてやらないとね」


「そうね、あんな風に育てた気はないんだけど。この世に存在させてしまった責任を取って、そろそろ夫婦ともその内に細切れにして地獄に送っても良いわ」


「妙な常識を広げようとしないで欲しいわね。何であのタイプは押しつけがましいところが同じなのかしら?」


 同じ趣味同士でやってれば良いのにと、そんな話を始めたので僕はお礼を言って、アストリュー冥界を通ってアストリューの家に戻った。


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