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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しょうかんしょう
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161 巣箱

 ◯ 161 巣箱


 フォーンさんが尋問を始めた。が、見てられない様な方法だ。ニャンだけじゃなかったんだね? ストレス発散とばかりに良い笑顔を振りまいて調き……鞭を振るっているので、目を閉じておいた。彼はダメな大人の代表に違いない。一番影響を受けたくない感じだ。

 報告だけ貰えれば良いのだ。通信は切っておいて良いだろう。隣りではディーンさんは眉間の辺りを揉みながら、聞き出すのを待っている。


「良い鞭だ。使い易い」


 使い心地の感想を先に上げて来た。メレディーナさんの愛用の鞭がモデルなだけあって良いらしい。


「その報告はまた後で」


「ああ、そうだな。検証はこんな人数ぽっちじゃダメだな」


 僕の言葉に仕事を思い出したらしい。最後は趣味としか思えない行動をしていたからね。


「それは良いから」


 ディーンさんもさすがにイラッとしたのか睨んでいる。その睨みが効いたのかフォーンさんが真面目な顔に戻った。


「あー、一つは買い主はどこぞの司祭で、どこぞの神に捧げるとか言って良い買物してくれたってさ」


「懸念していた感じか?」


「二度目は買わなかったらしくて、後ふたつは食用に売り出したとさ。その後、何処の誰が喰ったかまでは調べれなかった」


「何処から正規で買い上げた事にしているか続きの調査を頼む」


「了解。で、そっちは?」


「一応、卵の行方を探す。レイモンドの方は俺が行く」


「じゃ、調べ終わったら、ディーンとこか?」


「そのとき指示する」


 画面の向こうでは満足そうな顔をしているので、そのまま楽しくお仕事すると思う。ディーンさんはレイモンドのいる地下へと行く準備を始めた。臭いそうなので、目まで覆われたガスマスク的な消臭マスク装備だ。不衛生だし、何があるか分からないので、ポーションも幾つか渡しておいた。主に消毒液を補充してディーンさんは影に潜った。

 うん、あの重装備ならあそこにも行く気にはなる。……お仕事としてならね。

 ヴァリーとそれを見送って、僕達は僕達の仕事を進める事にした。タイミングよく、ナオトギとホングが商業組合へ露店の出店許可を取って来てくれたので、それを見た。

 広さも余裕があるし、ボックスカーくらいの大きさの屋台なら乗り込めるくらいだ。参加が初めてなので場所が悪くなるかと思ったけどそんなでもなかった。意外と中心に近い。


「良い場所だね」


「ああ。だけど、含みのある言い方だったし、提示した本人はそう思ってなかった。試しに反対側の場所を聞いたらそこも良いとか言ってたけど……嘘だったな」


「こんな真ん中が?」


「あれか? 時間帯が悪いのか?」


「分からなかった。予算内でそこがとれたら良いだろう」


「そんなにしたの?」


 値段は高かっただろうか?


「会員価格だとか、会員になる為の初回料金とか、一般人の初回の値段とかやたらと細かい」


 ナオトギはイラッとした顔でそんな説明はされたくないって顔だ。捜査には根気が必要だよ?


「ナオトギは面倒くさがって、向こうの言いように計らわせようとして困った。言い値でなんてやってたら商売なんて回らないぞ!」


 一応、うちにはホングがいるからフォローはされてるのか。良かったよ。

 ホングだけだと舐められて話が出るまでに時間が掛かるとか、ナオトギが相手だと向こうは露店の為のワゴンのオーダーまで話を持ってくるけど、それが目的じゃ無いとか二人が言い合ってる。

 ま、まあ、良いコンビと思うよ。お互いの足りない所を補ってる。


「今回は商売がメインじゃないだろ?」


 ヴァリーの一言で言い合いは止まった。さすが皇子。


「結局、一般人で一回限りを場所借りするより、会員になって会員料金を払って月契約しておいた方が得だった。会員契約を破棄する期間が設けられてて三日以内なら会費が殆ど戻ってくる」


「戻ってくるか怪しいぞ」


 ナオトギは不愉快そうだ。だけど、ナオトギの懸念は今回は正しいかもしれない。いや、商業に携わるなら信頼の為に、ある程度のルールは守るはずだから目をつけられたとかがない限りは大丈夫なはずだ。


「ここの星はもう、包囲されてるから。明後日からは組合から外す為に囲いを強化して次元を歪めに入るよ」


「実力行使か?」


 僕の情報に全員がぽかんと口を開けた。何とかヴァリーが聞き返して来たけど、半信半疑って顔だ。だけど、僕達がケール星に到着する前から既に包囲網は完成していたのだ。行き来した人やら外への転移門はしっかりとチェックされ、ここ最近のデータは全部回収されている。

 僕達がホテルに入って動き出してから行き来の制限が既にされているはずだ。


「そう。話し合いはそれから」


「マジ?」


「マジ」


 三人で顔を見合わせてやばいなと頷き合っている間に、リラにいつもの半透明のボードを空間に大きめに表示してもらって、べリィヌーヴの映し出してる映像をみせた。

 地下道は汚くて臭いそうな場所だし、チラッと見えたゴキに似た生物なんて1mくらいの大きさだった気がする。それにまけないくらい凶暴な鼠らしき大きな生物はゴキと戦っているが、どう見ても瘴気を放った魔物に見える。

 レイモンド達が進んでいるのはまぎれもなくダンジョンだ。どのくらい深いのか大きさはどうかとか、そういうのはさっぱり分からないけど、地獄に繋がってはなさそうなのが救いな感じだ。ゴキと鼠の大きさは奥に進む程大きくなっている。勿論、ムカデのような奴らにワニ的なお姿の何か得体の知れないものまで集まっている。スライムもいたけど、それよりはゴキの方が多い。


 異世界間管理組合のお偉いさん方はこの様子を見た途端、界から追い出す事を決定したのだ。反対派は出なかったというから速攻で会議は進んでいる。ケール星の神々の意見なんて聞く必要ない。

 というか、ヘッドゥガーン世界はダンジョンは持たない主義なのだ。瘴気溜まりを作らないのが理想で、常に瘴気と霊気のバランスを取り続けておくのが良いとされている。偏りが出ているのがダンジョンで、そこに押し込められている人が逃げれない様な状態は推奨してない。


「まあ、最近はみかんの町っぽくダンジョンを持って、死神の組合と地獄の気の浄化に貢献する契約もありとは言ってたけど、それは異世界間管理組合の本拠地であるこの世界でではやらないと言ってたからね……」


 美少女姿のリラが隣りで頷いている。

 別空間でなら考えると言ってたから、このままそっちの方向に向けて話し合いはすると思うけど、何となくケール星はみかんの町みたいにはならないと思う。それにヘッドゥガーン組合長も、手を離れたケール星を態々管理はしないと思う。それが分かっているから包囲網を作ってまでして、ケール星を自身の世界から消す気になったのだし。まあ、細かいところはこれから決まるのだと思うけど。誰か他に管理神を立てると思うけど、したがる人がいるか怪しいところだ。

 リラはみかんの町に集まる人はケール星に集まる神々とは違うと言ってくれている。それは僕も分かる。雰囲気から今吸っている空気、ヴァリーでさえ気が付いた力の無い水、溢れるエネルギッシュな人神の様子、更に大地の悲鳴とダンジョン。自然精霊として見れば崩れたバランスを取り戻せるのか分からない状態だ。


「これは……瘴気溜まりが変化したダンジョンだな?」


 ヴァリーがゴキブリの大きい魔物から視線を外しつつ、聞いて来た。瘴気の溜まっている場所に何か核となる物が出来ると自然とダンジョンになったりする。人工的に何か術を加えても造れなくはない。これがどっちかは調べないと分からない。


「そうだよ」


「このダンジョンは……俺は行きたくない。絶対臭うだろ」


 鼻を既に摘みかけているので、よっぽど行く気がしないのだろう。ゴミ溜まりダンジョンと名付けたくなる様子は普通なら足を踏み入れるのは遠慮する。


「選り好み出来ないよね、仕事だと。ディーンさんは請け負ってくれてるけど、本心はいやだと思うよ」


 こっちよりも書類に向き合う方が嫌という事は、ディーンさんは相当ストレス溜めてるっぽいかもと思うので、後でたっぷり癒しの予定を入れておくことにした。


「う……」


 申し訳ないって顔をしている。仕事と割り切っても行くのがためらわれる場所だし、気持ちは分かる。死神のマントが必須だと僕も思うしね。


「心配しなくても明日は情報集めだよ」


「いや、もう、今日だな」


「あ、そんな時間なんだ。じゃあ、明日のシュミレーションを少しやっとこうか」


 主に、店の売り子(ウエイトレス)をリラが、僕は在庫管理とお茶の用意を、ナオトギは護衛と情報の引き出しを、ホングはナオトギの手伝いと会計を、ヴァリーは予定通りに客引きだ。お互いのフォローも考えつつ、色々と試しておいた。

 リラは楽しそうに自分の着る服を撰んでいる。エプロンだけは手作りしているが、必需品だと僕も思うので、男四人分はお揃いのを作る事にした。

 店のマークはハートマークを基点に鳥の足跡で月桂冠の様に円を描き、その中に鳥が横向きでいる絵が添えてある。雷鳥の卵を探すチームに相応しいとヴァリーは納得していたけど、普通に僕の足跡を付け、シルエットをデフォルメしただけなのは黙る事にした。店の名は『鳥の巣箱』だ。

 途中で休憩から出て来たポースを送り出して、僕達はまた休憩に特殊収納スペースに入ってから、朝日が昇る寸前の時刻に出発した。借りた時間は夕刻までの時間だ。それまでに何とか卵の行方を掴めたら良いんだけど。


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