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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
へびとたまご
202/225

157 卵 ※※

一時間後は登場人物と作者のまとめです。

 ◯ 157 卵


 到着したのは軍用の基地だった。寂れた感じの基地で、余り活用されてなさそうな所だったという印象を受けているが、どう見てもさっき設置しましたみたいな臨時の転移装置が付けられて人がひっきりなしに出入りしている。外では何処かから運ばれて来た宇宙船を、半壊したという第五基地から移動させた修理工場で修理しているのが見えた。

 連れてきた三人は目隠し状態で、家畜用の箱に入ったまま次の移動に使う僕達の乗って来た魔導飛行機の荷物庫に入れられている。使い魔は解体して魂を取り出し、影に入っていた魔獣やら妖獣、は契約を解除した。

 雷鳥の幼鳥は、拷問での成果でケール星にいるのが分かっているので追跡調査が行われる。僕とポースはフォーンさん達と一緒にそれを担当する事になった。


「あのプラム姉ちゃんは覚醒者じゃない……普通に魔導宇宙船に乗っていかないとならない規定だろ?」


 本来の姿に戻り、めんどくさそうなフォーンさんは、ディーンさんにしかめ面をみせている。プラムの太ももには邪神の簡易刻印が見つかっていて、レイモンドとは違う刻印なのも確認している。

 ロイは刻印の変わりのチョーカーが契約の為の印だそうで、内容は分かってないけど、自害以外は何でもするという契約がされてそうだと見ている。殺しも盗みも何でもこい的な、主人の益となる事なら何でもする犬と言う存在だ。命令は絶対の、服従心までもが契約の際に了承しているという厄介な物だ。つまりは影の支配を受け入れているのだ。


「ケール星は異世界間管理組合の法が通用しない所が多い。向こうに行ったら無法地帯と思え」


「う、分かりました」


 ロイのように奴隷に近い契約から愛人契約までなんでもありな場所で、僕の想像を超えてるというのがケール星のようだ。

 取り敢えず、僕は死神なので、冥界との契約が優先ですと答えとけば変な契約は大抵退けれると言われたのでそれに乗る事にする。

 ディーンさんと話をした後、ヴァリー達に会いに向かった。


「みんな無事?」


「そっちこそ」


 ヴァリーもナオトギもホングもちょっと服が裂けたり、スリ傷を作っているけど無事なようだ。


「僕は無事だよ。皆のお弁当が被害にあったけど、おやつは少し残ってるよ」


「なんだと……あいつら殴ってやれば良かった」


 宿にいたメンバーに一矢報いたい様な事を言っているが、どう見てもこっちで充分暴れた後っぽい。


「それで、帰るんだろ?」


 ホングに聞かれたが、首を横に振るしかない。


「ううん、このままケール星に行くよ。皆は転移装置から帰ると良いよ」


「何でだよ。事件は終っただろ? ここにいた灰色の集団と裏切り者を捕まえたお陰で」


 どうやら、多少の戦闘に参加したみたいで、誇らしげな顔をしている。聞けば何人か捕まえた様な事を言っている。悪神とか邪神が混じってたら危ないのに何してるんだか……。

 ホングの嘘が分かる特技を活かして、戦闘から逃げてくる人間を片っ端から質問しまくって裏切り者を捕まえたらしい。その時の怪我は治療された後みたいなので触らずに、体力の回復だけ掛けておいた。


「えーと、C3Uの方の依頼を手伝わないと。幼鳥が生きてる可能性が出たから保護しに行くんだ。もしくは……処分かな」


 洗脳されて育っているなら危険だから殺されて素材にされても文句は言えない。


「じゃあ、付いてく。C3Uの仕事なら、ハクは付く。ケールには親父の伝手もある」


 ナオトギは付いてきたいらしい。


「星深零の人間はあそこは入れない。護衛がいるんだ」


 許可が下りないのはそれだけ乱れている部分があるせいだろう。


「俺は何処でも行けるけど、ケールは……両極端だ」


 旅行会社での経験からヴァリーはケール星についての多少の知識があったらしい。支配者と労働者と自由者と旅行者で構成されていて、そのどれもが十階位に別れていて、明確なサービスの差があるのだという。いわばケール星の身分制度だ。

 異世界間管理組合の職員としていくと、そこそこの歓迎はされるとか。ただ、初回にどれだけお金を落とすかで階位が決まるとか……。


「拝金主義の行き過ぎた感じ?」


「それだな。人権とは金を持っているかどうかだ。カジノで豪遊出来るなら扱いは上がる」


 ヴァリーが苦笑いしている。


「ふぇ〜。僕、行くの止めようかな」


 なんだか心が折れそうだ。


「身ぐるみ剥がされる」


 ヴァリーの台詞には妙な実感がこもってるし、身震いしている。つまりはハニートラップも常設されてるという事だ。

 そして問題は『スフォラー』のオプションが禁止されているという。注意書きがあるのをリラが、皆の『スフォラー』との情報交換で得た。


「アシスタント機能は禁止なんだ?」


「秘書とか護衛扱いされないでアイテム扱いだから、身ぐるみ剥がす時に没収対象だ」


「……カジノには行かない」


 嫌な事聞いた。


「女にも関わらない」


 ナオトギが珍しく女絶ちを宣言した。


「仕事としていくんだ」


「気をしっかり持ってれば行ける!」


 と、後の二人も追従して盛り上がったが、そもそも捜査に組合員を連れて行けるのかが問題だ。


「ところで、俺様の紹介はまだか?」


 抱きかかえていたポースから声が上がった。


「あ、ポース。そうだね、紹介するよ。死神の相棒のポースだよ。正確には候補だからまだ正式じゃないけど、いずれはそうなんだ」


 皆の前に掲げて紹介した。


「C3Uのディーン捜査官の物じゃないのか」


 ずっとディーンさんと一緒にいたせいだろう。それに捜査官じゃなくて司令官だよ。書類から逃亡しての息抜き中っぽいから黙っておくけど……一応仕事はしてるしね。


「僕と契約してる魔導書だよ」


 誤解は解いておかないとね。


「偉大なる唯一の魔導書、ポカレス様だ」


 自分でアピールしているポースの様子にちょっと笑って、


「痛い感じの魔導書だな」


 と、ナオトギが感想を漏らした。


「まあ、よろしくな」


 ヴァリーはどう捉えていいのか分からないって顔だ。


「魔導書って事は魔法を溜め込んでおけるとかか? 魔法陣のコレクションなんて大変だろ?」


 ホングは本の表紙に模様として埋め込まれている大量の魔結晶をマジマジと見て、金の掛かってそうな……と呟いている。確かに買えばかなりの値はするけど、自家生産出来るから破産はしない。


「コレクション……? あ、闇の生物は集めないとダメかな」


 ホングが普通の魔導書だと思っての発言をしているが、ポースは集めるものが違う。


「神級品の魔導書様だ。魔法陣なんてケチなもんは集めねぇぜ」


 実は集めているが、メインは闇の生物だ。魔法陣は僕のオリジナルを使ってのバッタ部隊との連携にポースの魔法補助なんかに使っている。


「魔導書も取られないようにしないと、下手に動いて没収とかあるぞ」


 ヴァリーが高級な魔導書なら持っていかれるとか言っている。危険物だからと公共施設で持ち込みを禁じて没収されてそのまま行方知れずとかありなのだとか。


「知らない間に罪を着せられて牢屋に入れられてたとか、見習い審判のコミュニティーに書いてあったな」


 ホングが何か思い出したらしい。


「えーと、訴えたの?」


「訴える所が無い。支配層の人間の機嫌次第だってさ。媚を売る相手を間違ったらそうなるが、コネがあるなら、過ごし易い場所だ。そこにいる親父の知り合いが言ってた」


 質問にはナオトギが答えてくれた。確かに星深零が無い場所なら法は守られないに等しい。


「伝手って地位はあるのか?」


 ヴァリーがナオトギに聞いている。身分保障してくれる人物がいるならそれに乗っかる方が早い。


「中流の中でも上流に近いそうだ。捜査に入るとなったら、あそこじゃ抵抗されるから内部に入り込める人間はいるだろ?」


「じゃあ、ディーンさんに聞いてみるね?」


「提案って言えよ」


 取り敢えず、向かう事に決まった。


 人神が法の網をかいくぐってのし上がっていくならケール星は最高の場所で、そういうのが苦手な人物は身を引いた方が良いとか。あそこで実権を握るとは金を持ち、人脈に優れてないとならない。そして、人を使う上手さが要求される。

 ちなみに、ディーンさんは苦手な場所だという。フォーンさんはあそこの姉ちゃん達はすれすぎてて面白みが無いとか言っている。演技してるか本当かぐらいは経験で分かるとか。レイモンドくらいの狡猾なお方が標準と思え、とはアドバイスされた。了解です。


「光速での航行で、ここまで来たのか?」


 ディーンさんは僕達の仕事に興味を持ったのか聞いてくる。光速で亜空間に入っての移動かを聞かれている。ちなみに、もう既に光速で船は動いている。僕達の魔導飛行機は無事だった。


「シック星経由で来たので、普通よりは時間は掛かってないですよ」


 亜空間じゃなくてあらかじめ直接空間を繋いである(星系間ゲート)のを利用しての移動だ。経費は掛かるが、時間は短縮されて安全性も高い。


「ああ、あそこのゲート転移を通したのか。なら、早いな。帰りの転移はケール星の予定だったんなら、この船を使うのが一番怪しまれない」


 あらかじめ既に予約されているので疑いは無いだろうとの事だ。

 ディーンさん達は知り合いがいるというなら僕達に便乗してケール星に入り、C3Uという立場を取らずに内密で捜査に入って相手が逃げないようにする気だ。

 ダーン星での騒動がまだケール星には届いて無いとの予測で動いているけど、その辺りがどうなっているのかはまだ説明されてない。後で聞く事にはなってるけど。

 取り敢えず、レイモンド達に暗示と影の術を掛けて彼らの同行者として行き、卵の引き渡し相手を特定する気のようだ。C3Uの問答無用での捜査権も独自金権の力が強いケール星ではまともには通用しない。

 それに、みかんの町を悪く言う人が集まっているのだそうだ。つまりはうちの町に入れない方々がいて、異世界間管理組合とも別の組織と考えた方が良いのだ。ヘッドゥガーン世界にあった闇の部分が異世界間管理組合の改革で現在進行形で切り離されつつある場所と捉えると良いみたいだ。


「親父の知り合いはあそこでカジノをやってる。詳しく聞いたのは初めてだ。治安が悪いからうちで修行中の警備員を修行に何人か回してるらしい」


 カジノには行かないとか言う話だったのに既に破綻した。


「それで話は通ったのか?」


「ああ。親父からそっちの見学に息子を頼むと言ってくれてるから滞在許可は取れる。こっちの仕事の帰りに少し遊びに行く感覚で大丈夫だ。知り合いを巻き込むのに笑ってた親父も変だけどな」


我々( C3U )が神雷鳥の卵を追っているのは、ケール星にいる依頼主は知らないはずだ。レイモンド一味の記憶と記録から戦った事を消して、新しい記憶とダミーの卵を渡しておいた。今、彼らは船から連絡を取っている」


 ディーンさんの説明に記憶を消したの一言が入ったのに、ナオトギが一瞬驚いた顔をした。捜査上での記憶削除の権利はかなり厳しく扱われているからだと思う。彼はそれが欲しくて捜査権利のある機関を狙っているのだし。権威に憧れているのだろうか。あ、でも記憶の封印とかも力を付けた彼なら出来そうだ。


「ダミーなんて用意してたのか」


 直ぐに驚きを隠してナオトギが興味深そうに画面を見始めた。隠しカメラでの監視映像に、レイモンドが大事そうに包みを抱えて家畜用の箱の中で待機している。

 ここに来てロイとプラムが、レイモンドを卵から引きはがそうとする動きを見せているのも気にはなる。

 使い魔や、テイムしていた魔獣がいない事にちっとも気になってないのは、暗示が強力なせいもあるが偽物がいるせいだろう。


「いや、さっき作った」


 記憶処理の時に結界内でディーンさんと僕とで卵を作った。三十㎝くらいの大きさの雷鳥の卵らしい物が出来た。見かけは雷鳥の卵っぽいけど、聖であるキヒロ鳥の僕が半分作ったのだ、プレミア度は高いと雷を担当したディーンさんは言ってた。

 命を宿してないので、卵料理用だが、もしかしたらマニア受けして神雷鳥の卵よりも高く付くかもしれないとか。何せそのくらいはレアな鳥なのだそうだ。本人は、ピンと来てないけど。


「使い魔のビリーをフォーンがやってるが、誤摩化せてるな……」


 今、画面に映っているのはビリーに変身したフォーンさんだ。趣味で色々な役をこなしているだけあって一味のリーダーっぽい動きを取っている。子供の姿で動くのは周りから舐められるから考ついたみたいだ。ビリーとレイモンドは念話でも会話していたのでその状態も継承しているし、テイムしていた魔獣の変わりにビアラマ隊が影に潜んでいる。

 今は食事を始めたレイモンドの変わりに、フォーンさんが袋に入れた卵を背負っている。レイモンドの為にご飯を用意したりと甲斐甲斐しく動いている。

 フォーンさんはキヒロ鳥の卵とは知らないので扱いは雑だ。割れない程度には扱っているけど。じっと見てたら鳥の本能なのか取り返したくなってくるので、画面からそっと目を逸らした。


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