表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
へびとたまご
200/225

155 拷問

 ◯ 155 拷問


「いい加減、怪しげな取引話は止めてくれない?」


 猫を被るのを止めたらしく、イライラとしたレイの声が聞こえた。テイマーらしくペット達を呼びたいのだろうけど、全く魔力が使えない今の状態ではどうする事も出来ないで、連れて行かれる事に焦りを隠せなくなっていた。


「大人の話に首を突っ込むな」


「僕は子供じゃない!!」


「このくらいの話も受け入れられないようなお子様にゃ、黙って人参でも齧らせておかないとな」


 食べ残しは人参どころか野菜全部だった気がするけど。スティックサラダの人参を、頬に付いてる泥が乾いて喋る度に落ちる状態のレイの顔に近づけて反応を楽しんでいるフォーンさんは、趣味に走り出している気がする。

 レイの名前はレイモンドで良いらしい。本人はレックスが良かったと言っているけど、里芋の煮たものを口に入れようとしたら吐いた。


「やっぱりお子様じゃねーか。その年で野菜も食べれないなんてどんな教育されてんだ?」


「僕の口に合わないだけだ。テメエと違ってお上品なんだよっ!」


「お子様の身体は最近乗り移ったのか? レイちゃんよー」


「っ! 始めから!」


 本題に入り始めたみたいだ。さすがご趣味があれなだけに、ニヤニヤ笑いがとっても似合ってます。悪役もばっちりこなせますね。

 それはともかく、脳内画面のディーンさん曰く、使い魔がしていた姿が本来のレイモンドの姿で、お子様の姿はさっきまでいたノビ村で手に入れて来た様な事を言っている。人身売買もあったというのが正解だと言われてげんなりした。

 村長は丸め込まれていて、車等盗んで来た物を受け取る事で雷鳥の卵を持ち出すのを見逃し、時々見目の良い子供を売って、盗賊である彼らから村の安全を買っていたという。捜査は順調に続いていて、町長は処分の対象になると言っている。

 頭痛がしそうな取引にリラの運転も少し乱れてる。僕の影響を受けているのだと思う。何せ、やる気の無さも伝わってしまうくらいだからね……。スフォラはここまで影響を受けなかったはずだけど、僕が成長しているという事なんだろうか? それともマシュさんの研究の一部だろうか?


「まだ馴染んでないせいで上手く力も使えないとかそんなとこだろ? 聖の食べ物に気が付かないで喰ってたらいつまでも馴染まねぇぞ。ま、俺には関係ないけど。さて、何処の邪神の手引きでそんな事をしでかしたのかたっぷり聞こうか……」


 聞きたいなら口に野菜を突っ込むのは止めないとダメじゃないかな? まあ、曲がりなりにも農家だから野菜嫌いには何かしら思うことがあるのだと、勝手に僕は解釈する事にした。


「ひくしょう! ひゃめりょ! 変ちゃい」


 尋問という拷問が始まった。こっちから見てると、いたいけなお子様にいけないお仕置きをしようとしている危ない大人にしかえない。これが女の子なら完全にアウトですよっ! ホングのイメージが崩れるからその姿では止めてやって!


「意外と、興奮してるな……マゾか?」


「ち、がう! 寄るな!」


 ご丁寧に縛り付けているロープは外さずに、ナイフで切り裂いて服だけ抜き取っているらしい。


「お子様は守備範囲じゃないんだが、仕方ねーか。せめてさっきの下着でも着けるか?」


「何する気だ〜」


 泣きそうな顔で助けを求められても、本人が悪いですよ? この場合は。まあ、何処かに邪神の手下としてのマークというか所有刻印が無いか調べているのだと思うけど、悲鳴が上がっている中、とっても希望的な事を思い浮かべるけど……僕は運転に集中しておこうと決めた。


「んー? こんな刻印は見ないな。参照してもらってるが、引っかからん。新参か?」


 良かった。やっぱり刻印探しだった。児童虐待反対! あ、いやでも中身があのリーダーの姿の人なら三十代半ばかそのくらい? その場合はいたいけなお子様の身体を乗っ取ったいけない大人があの中に入っているって事になるのか。む、ならもっとやっても良いぞ! 心配して損した。


「言ったら、パンツ返せ」


 羞恥の為か小さな声で要求を言っているが、さっきの威勢は何処かに行ってない。さっき渡したアダルトなグッズを目の前に並べる変態丸出しの死神の様子に心折れてしまったのに違いない。


「あのチョーカーの奴はケールでの“犬”の証だろ? お前が売ったのか? それともお前が飼い主か?」


「あの村にいたら喰えずに死んでた奴だ。感謝されてるね」


 既に裸にされた事に開き直ったらしいレイモンドがフォーンさんを睨んでいる。手を出されない事に気が付いたらしい。


「まあいい。奴らもひんむいておくさ」


 乗り物酔い中のちょっと青いレイモンドの顔をのぞいていたフォーンさんが呟いた。

 ……どうやら、後ろの家畜の箱に詰められた方々も今からストリップ状態にされるらしい。犯罪を犯したらダメだとしっかりと心に刻み付けておいた。こんなひどい拷問には耐えれないからね。

 フォーンさんの畑でとれる薬草で出来るという語尾がニャンになる試作ポーションを最後に飲ませようと、レイの口を開けさせる為に鼻を摘んでいるフォーンさんには、仕事と趣味の両立と言う言葉に付いて深く考えさせられている気分だ。気分だけで、実際はちっとも現実が受け入れられずに運転に逃げている。まあ、深く考えないでいいと思う。うん、せめて僕の心は平和に保っておこうと思うんだ。



「あんたも変態だニャン? 俺なんてどうニャン?」


 フォーンさんが荷台に行ってから、レイは後ろ手に縛られているロープを外そうともがいていたが、僕をターゲットにしたらしかった。……本当にニャンとか言ってる。試薬とか言ってたけど、これも需要があるんだろうか?


「俺に変わった?」


「ちぃ、ケールのショタ好きの女に媚びるつもりが、男相手とはニャ……」


 呟かれた言葉は最低だった。何でそんな容姿にしたのかが、分かった様な分からない様な……。


「さっきの人にしたら? 間に合ってるので」


 意外と腹黒さがSっけと釣り合ってた気もしないでもない。いや、演技する必要がある彼らの生き方に共通あると言うべきか?


「手を出さないってことは趣味じゃないニャン。ああ言うのは嫌がる方が盛り上がるから、あれで煽ってる事になんだニャン」


「そうでしたか」


 深い御理由があったのですね? でも、幾らお姿が可愛い(?)お子様でも、中身が頂けません。ええ、僕は贅沢なんですよ。レイモンドはこう、何かが違う。これも演技な気もするし。相手に合わせて自分のキャラを変えるのは良く分からない。


「どうニャン?」


「太々しいのは何か違う」


「あいつの相手じゃないのかニャン? 俺なら満足させてやれるニャン?」


「僕を満足させるのは無理ですよ?」


「じゃあ、試すせニャン?」


 何故か僕にはそうするのが当然って感じで言ってくるのは何故なんだろう。そのキャラは止めて欲しい。いや、ニャンが悪いのだろうか?


「浮気する気はないんでお断りです。それに……師匠が美と健康、恋愛成就に夫婦円満、子宝で、最近はぽっくりも始めてるので。浮気はどれかが喪失されるからお勧めしないよ。相手もばっちり呪われるから」


「ニャン?」


「僕と今のお相手の恋愛成就に夫婦円満は必須だから、壊れるときはそれを負う気概のある人物じゃないと」


 ここははっきりとお断りをしておかないとね。まあ、これまでの経験から予測するなら、相手を操りたい人が自分を変えてくるんだと思う。相手の気持ちを動かしたいあまり、自分を変えているんだと思うけど、僕から見て、彼という人物がが全く持って訳の分からない人になってる。

 信頼を得ないと気持ちは動かせないとは分かってないのだろうか? いや、彼にとって最大のこのピンチに、必死なせいで普段の行動が出ているのだろう。目的の為ならなんでもありな人なのだ。他人の身体を乗っ取ることさえもだ。マシュさん達よりもある意味、自由だ。


「何ニャン?」


 言い方が悪かったのかレイモンドは理解出来なかったらしい。


「健康被害とひからびたお肌に思い人に嫌われ、不感症になって生殖機能が失われ、死に際に死神が苦しみを長引くように肉体から出さないんだ。そういう呪いを受けたくないなら諦めた方が良いよ」


 レイが怖がられる理由と権力の元だ。


「脅しかニャン?」


「生きたままゆっくりゾンビになる呪いなんて僕は願い下げだし、それ以前にタイプじゃない」


「そうかニャン! このド変態が、後悔させてやるニャン」


 ロープしか身につけてない人に言われても説得力が無いよ。


「その恰好の人に罵られても……」


 素直に気持ちを伝えておいた。僕の視線に何故か怒って、


「俺の趣味はこんなじゃニャーイ!」


 と、叫んだ。そこはニャンが崩れるくらい全力否定なんだ。僕の下着と趣味が同じってことは世間とはかけ離れているって事なんだよ? 墓穴だから聞かないけど!! 下着くらい良いじゃないかと思うんだ。女の子の時なら選び放題だったけど、今の姿だとちょっと気を使うんだ。中々売ってないからね。


「なんだニャン。分かった風な顔しやがって、生意気なんだニャン!」


 再度、僕の顔を見て怒り出した。世間的には残念な僕達の共通趣味を思っていたのにそんな否定は無いよ。というか、ブーメランのごとく返ったのか?


「もう直きダーンに行ける街だけど、そのままでいたいの? 口の聞き方には気を付けた方が良いと思うけど」


「変態がバレたら困るのはそっちだニャン。俺は被害者ニャン」


「認識疎外の服を着るから。注目は君の方じゃない?」


「畜生ニャン! やっぱりまだ隠し持ってやがったのかニャン。それの中、まだ入ってんだニャン? 魔道具出せニャンっ!!」


「え……出すの?」


 しばし、僕の顔を見て何か悟ったのか、良いと小さく答えて踞って震え始めた。何を想像したのだろうか? なにげに失礼だぞ!

 親友のレイ推奨夫婦円満グッズは今は持ってないけど、浮気だののお仕置きグッズは一通りある。変態グッズはさっき、フォーンさんに渡して手持ちが無い。

 お仕置きグッズの強力なのは解呪にも必要な部分があったりするんだよ。アローネ神官も溜息とともに研究しているくらいだ。呪いの相手とかグッズが合体したまま時折、運ばれてくる患者もいるのだから。

 こっちの見られたくない研究対象グッズはちゃんと、頑丈な特殊収納スペースにしまい込んである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ