151 案内
◯ 151 案内
ディーンさんがポースに迅速に敵を捕まえる為に詠唱法は今回封じる事を伝え、僕はホッとしつつ、作戦を考える事にした。
村長の息子が出て来ている以上、村としての公的な仕事としても絡んでいるのかを見極めに組合の方からは調査員と、捜査員が組合長によって召喚されて直ぐに彼らは村長宅へと突撃にいった。いや、まあ、最初は穏便に進める為の調査員なんだろう。精霊の卵を盗んで売り飛ばすのは法的にも禁じられているしね。
衛星ダーンの方にもC3Uの人材と戦闘も出来る組合員が派遣され、組合長は笑い疲れたと言って戻っていった。本部に戻って捜査の報告を聞く為だろう。これ以上の干渉は無理だと判断したのかもしれない。取り敢えず、僕はヴァリーとリラの本体の場所に戻って後二十分、時間の許す限り待つ事にした。
向こうの出方次第では帰らずに留まって宿に泊まる事も検討しなくてはならない。取り敢えず、司令官との通信は繋ぎっぱなしにして、その都度指示を貰う事に決まった。
「お待たせ」
「ああ……十五分も掛かるなんてでかい方でも出してたか?」
車に乗り込んだ途端にからかわれた。というか、下ネタを仕入れて思い出したから使ってみたみたいな変な間があった。
「皇子教育係には文句をつけたいね」
使うなとは言われないのか?
「ならこういうのは友人に聞かずに誰に聞くんだ?」
「それもそうだね。取り敢えず、女性には聞いたら嫌われるよ」
ここにも友人ごっこに飢えてる人間がいたよ。それにしても、さっきの下ネタは子供が使うネタだと思うぞ。それを指摘すれば、
「そうか。気をつける」
と、謝ってヴァリーが黙った。
「……ヨォシーは女神を目指してるのか?」
少しの間を置いてからヴァリーが遠慮がちに聞いて来た。
「えーと……」
どうやら僕に言った事を気にしたらしい。後ろめたそうな反省しているような顔を一瞬見せたが、直ぐにどうなんだと言った視線を投げて来た。
「師匠がどっちも体験しとけって人なんだ」
お陰でどっちもなれるし、慣れた。切っ掛けは生まれ変わりとかいう区切りだけど。
「そうか。どう接して欲しいんだ?」
「見たままで良いよ。さっきのも僕は気にしてないから」
「そ、そうか。下ネタは難しいな」
謝るべきなのか微妙なところだから僕の気持ちを聞いてくれたんだと思うけど、そういうところは教育係は良い仕事していると思う。いや、女性陣の教育の方が効いてそうな気がして来た。
「女性の姿のときだけ気にしてくれたらいいよ。気楽な方が僕は好きだよ。ところで、ナオトギの紹介してくれたプロの女性とはどうだったの?」
「ぶっ!」
この雰囲気を壊せそうなお返しを考えてたら、とっておきのを思い出したので聞いてみた。
「……お子様には教えれないな」
吹き出した後、ちょっとだけうろたえたように見えたけど、大人の余裕を見せるように取り繕っているみたいで、教えないぞという意志を感じた。まあ、そこでべらべら喋られても困るけど、ホングが言うにはかなりの物をむしり取られたと聞いている。
「ふうん。プロじゃない女性との出会いは要らないんだね?」
「いや、それはだな」
「いいよ、ヴァリーなんか全財産をむしり取られれば良いんだ」
焦っている顔にあかんベーをしておいた。
「そっちこそガキか!」
「なっ!」
失礼な、と言いたかったが、確かに子供かもしれない。いや、いつもお子様紫月やらポースとか妖精達と戯れてたらどうしてもお子様向けの……と、心の中で妙な葛藤と戦っていたら、ホングから時間だとの連絡が来た。
ヴァリーが更に詳しく聞くと、遅れても違うルートで取引してくれる所があるからそっちに運んで欲しいと頼まれたらしい。
リラを通じて僕の見ている全ての情報は組合長や、ディーンさんの方にも流れているので僕が伝える手間は省けている。惑星間の輸送許可の転用を使った作為のある申し出かもしれないと、ディーンさんの方は聞き耳を立てつつ、渡航所の書類の改めを組合の方に問い合わせ始めたみたいだ。
「辺境の星まで来て仕事無しじゃ金はともかく、評価は下がるから多少怪しくても通してしまうしか無くなる。危ない仕事も忙しさの中に詰めて期限ギリギリを狙っている。上手く考えられてる……」
画面の向こうで、ディーンさんとピッチフォークの人がそんな話をしているのが見えた。
「アイス、村長宅で監視役と見られる魔獣を発見した。そのまま様子を見る。取り敢えず、怪しいが評価が落ちるからと言って受けろ。物が運ばれる場所に大元が現れるのを期待しよう」
組合長の呼んだ調査員が何か掴んだらしい。
盗人はわざと逃がしたのかもしれないとディーンさんの台詞で気が付いた。怪我をさせとけばいやでも目立つし探し易い。追っている仲間が他にいるのかもしれない。
「分かりました」
ディーンさんの指示に従って、ホング達と繋がっている通信に向かって話をした。リラには文章で、「驚かないで」、「C3Uの方で調べる事があるから、このまま仕事続行でよろしく。大元の犯人の手がかりを掴む切っ掛けを求める」、「ホング、自然に。肩が上がってる」、「ナオトギ、喜び過ぎ。顔に出てる」と、脳内画面に流れるように「スフォラー」達に依頼してもらい、何とか仕事の続行の話がまとまった。
ホングは脳内で村長の息子の怪しさを訴えて来ていた。怪我人がいるのは本当だけど、行き先が変わったという言葉が嘘だと。つまりはディーンさん達の推測の「時間を送らせての場所替え作戦」が当たりだという証拠になりそうだ。怪我人は多分……追跡している闇の住人だ。
ナオトギとホングの方で話は進んで明け方に荷物を渡せると、何やら連絡を受け取った向こうが言い出したので宿に止まる手続きが取られた。すでに、宿下の酒場というか食堂にホング達がいるというのも、日が沈んでいるというのも計算の内な気がして来た。




