146 混成
日付を間違えてました〜m(_ _)m
◯ 146 混成
ラークさんに呼ばれてナリシニアデレート世界に来ている。何度目かの仕入れの旅で見つけた竜の糞の化石の定期的な取引の許可を取ったので、その認可証の受け取りも兼ねている。マシュさんが早く取りに行けと言うので来た。みかんの町の大事なお仕事だ。まあ、代理として来ているので注目はされてないけどね。
「やあ。成長したね。小さくても可愛いんだし、そっちでも良いんだよ?」
なにげに大人バージョンはいらんと顔に書いてあるし、口にもそれとなく要求が駄々漏れしているけど、仕事だから!!
「別に神々の年齢での容姿は追及されないよ」
「え?」
「知らなかったのかい? 子供の姿を取っているのは夢界にも影響のある証としてちゃんと受け入れられているからね。気にしなくて良いんだよ」
「そうだったんだ……」
「無理に大人の姿を取らなくて良いんだよ。背伸びしていると捉えればそれもまた可愛いけど、長く留めれない姿を無理にとるのはお勧めしない」
ちょっと笑いが漏れているけど、許そうではないか。良い情報をありがとう!
「う、分かりました。次回はちょっとだけ戻しときます」
ズバリと頑張りすぎな所を指摘されてしまったが、まあ周りの皆も見習い神の立場になったのだし、年齢の壁なんて気にしなくていいと開き直る事にした。
「それで良いよ。ヴァリー達も神々の世界での常識になれないとならないからね。協力してもらわないと」
どうやらその為にも無理しないで自然でいれば良い、と言ってくれているみたいだ。近くにいる僕で体感すると良いと思っているのかもしれないので、受けれる事にする。それに子供の姿に引け目を感じる事は無いのだと言ってくれていると思うのだ。恥ずかしいので心の中で感謝を伝えておいた。ラークさんなら聞こえてるはずだ。
まあ、お子様バリエーションばかり増やすのもないと思うのでこれはこれで、折角創った姿だし、仕事と割り切る事にする。それに高い身長は僕の憧れの体現だ。
「ところで今日は何かあるんですか?」
呼ばれた理由を聞いていない。
「レイと一緒に何か創ると聞いてね……」
何かを求める目がニッコリ笑顔の中に見えているが、ラークさんとって何を創れば良いんだろう?
「お酒は一緒に造ったよね? あのお酒を使っての神玉で色々とマシュディリー博士と獣守達が神魔具を作っているのは知っているんだよ?」
「あ、はい。あれも使ってレイの装備というか衣装を作るんです。それから、装飾品にお守りとか目立たないのを」
「ここも落ち着いているから少し羽を伸ばそうと言っていてね。彼と一緒に出かける予定なんだよ。それで彼だけ良いお守りを付けているのは何か違うと思わないかい?」
成る程。
「あー、そう、ですね。じゃあ、出来上がりが良かったら一緒に創りますか?」
ラークさんと作るなら偽装グッズは最高レベルになりそうな気がする。ついでに僕のもお願いしとこうかな……。
「いいよ。お揃いだね?」
どうやら聞こえてたらしい。
「分かりました。姉妹の分はどうするんですか?」
「そうだね。妹達には頑張ってもらっているから必要だね。色々と材料をかき集めないと……」
ラークさんの個人神界はすごそうだ。僕の畑にある彼の神界はお宝しか無かった気がする。キラキラとピカピカがザックザクだったからね。巣の中を飾りたくなるのをとっても我慢したんだよ。
だってあれって多分だけど、ラークさんの神力の取引で使われる物だと思うから。いわゆる貯蓄だ。僕も神界が出来たらキラキラした物で飾ろうと思う。うん、夢は膨らむね。
ふと、これも神力の交換に当たるのだと思い当たった。ふむ、時々梃入れするというか混ぜ合わせると良い感じに成るというし、それの一環かもしれない。時々何か共同でする計画をするのは良い事なのだと思う事にする。
「力も洗練されて来ているからね。良い物を創ろうね?」
僕を見てそう判断してくれているのは嬉しい。
「はい」
ラークさんとは相性もいいし、地と水の神でもキラキラ系を作るラークさんは光も扱っていると思う。竜の糞の化石も竜の気の固まりが物質化したみたいになっていて、糞だと言われても信じれないくらいに綺麗なのだ。大きい物だと一抱え以上あるけど、中で炎の様な光が揺らめいて初見でオーブだと言われたらきっと信じる。
まあ、古竜やら神竜クラスの糞じゃ無いとそこまではならないんだけど。精霊界と近い魔法が強く出るこの世界を行き来する竜の物は人間、いや、人神に取ってもお宝で、強力な魔法アイテムになるってことなんだ。
普通の竜の糞もそれなりに価値はあるけど、この世界では特別珍しいという程の物じゃない。それだけトカゲ……じゃなくて竜はこの世界では人の暮らしに馴染んでいるのだ。
というより竜の方が数が多いから竜の世界と言って良い。……姉妹の為の世界なのかもしれない。
ラークさんとの約束も取り付けたし、ついでに温泉に入って温泉地の近くのカシガナの様子もちゃんと見てからセスカ皇子にも会いに行った。あそこにも植えてあるカシガナを見に行かないとね。こないだヴァリー達とあった時にセスカ皇子の様子を聞けば、会いたがっていたとヴァリーに言われたのだ。それならばやはり行かないとね。ちゃんとヴァリーに尋ねる事を伝えてもらっておいたので大丈夫のはずだ。
ラークさんも翼竜の騎乗許可をくれているし、問題ない。死神への対応を軟化させている影響の様な気もするけどね。
というか、神殿が竜の騎乗の許可を出すんだ。ナリシニアデレートらしいかも。交通の要を握っているのは実権を握っていると言っても良いのだから。ガリェンツリー世界が天門を押さえているのと同じだ。
「やあ、久しいね。やっと来たね?」
「はい。お久しぶりですセスカ皇子」
神殿からの許可証を見せ、中に入ればセスカ皇子が中宮門の内側のホールで待っていてくれた。どういう理由でピピュアと同じ人物だと周りを納得させたのか後で聞いてみたいけど、セスカ皇子の周りの従者達は全く動じていない。挨拶後に通された部屋で、親しげにお茶やらお菓子を出してくるくらいだ。
「ヴァリーが口を滑らせてね。ヨォシーが精霊だと皆は知っているんだよ。奥宮に務めてくれている従者しか知らないから安心してくれていいよ」
なんだ。ヴァリーのせいだったのか。セスカ皇子はピピュアで来ると思っていて、女性用の準備をさせていたらしい。ピピュアが変わってヨォシーになっているというのを、うっかり言い忘れていたのが原因だ。女性客の準備じゃなくて男性客の準備に換えさせ従者が不審がって、何げなく追及したらサラッと暴露があったという。
セスカ皇子は苦笑いしている。
「分かりました。皆さんありがとうございます」
一斉に頭を下げられ、代表に一人が進み出て来てきっちりとした礼をされてしまった。
「そんなに畏まらなくて大丈夫です」
「いいえ、精霊様に礼を尽くすのは当たり前の事でございますので、どうか遠慮無く何でも申し付け下さい。今回は長く御滞在して頂けるのでしょうか?」
期待の眼差しで聞かれてしまった。
「十日くらいの予定だよ。ヴァリーのお屋敷にも寄るし、こっちの宮から六日目に翼竜に乗って向こうに飛ぶから……その間よろしくね?」
間にトーイの木の精霊にも合いにいくが、転移装置で一瞬で着くし問題ないだろう。その予定も内容はともかく伝わっているはずだ。
「あちらの宮はまだ仮の住まい。ご不便でしょうから、もう少しこちらにいらして良いのですよ?」
「ライモン。困っているではないか。ヨォシーにも予定があるんだよ。精霊と言っても神の仕事を手伝っているのだ。余りこちらの要求を言い過ぎない方が良い」
「出過ぎたようで申し訳ございません。ですが歓迎をしたいお気持ちは察して下さると……」
「充分嬉しいです」
「ピピュアの送ってくる酒が霊酒なのもあって、家臣も手ぐすね引いて歓迎をしようとしていてな。堅苦しいのは嫌われるぞと伝えたが、何処まで守るか分からぬ。家臣らにはヨォシーの正体は黙るように従者にはきつく言ってあるから心配は要らぬが、その歓迎熱が従者の方に出てしまってな」
セスカ皇子はまた苦笑いしている。家臣達から色々と催促をされているらしいのは分かった。お土産は心配しなくてもたっぷり持ってきているぞ。
というか、今回の滞在はカシガナの木からとれる実の使い方をセスカ皇子に伝えに来ているのだ。つまりは料理教室に、カシガナの汁を使った魔法インクだのの魔道具作りのお勉強会だ。それが一番のお土産になると思う。精霊から齎された知的財産ってのを狙ってみる。きっと紫月の力になる。
悪用されないようにジュースや加工品にすれば、民にも益を分けれると知ればセスカ皇子も喜ぶはずだ。管理はしっかりとしてくれるだろうしね。
緑の平原のど真ん中にある湖の、皇族の庭に植えられたカシガナの木に沢山の実が付いている。霊酒に混ぜる方法はラークさんから聞いてるらしいけど、その他は利用してないらしい。
というかセスカ皇子か、ヴァリー、許可された神官や補佐神しか実はもげない。ラークさんがそんな風に制限をつけた。種は厳重に保管してあるらしいので今日はそれを受け取った。
「種が光って……脈動しているように魔力を放っているが、これは一体」
僕が触れて反応した種を見て驚いている。
「あ、うん。種を植える許可を持ってるから。ヴァリーの所にも植えに行かないとね」
ちなみに僕の為の餌でもある。美味しいぞ! レイもマシュさんも酒のあてにしてるくらいだ。
「ふむ。あの新しい神殿に植えるのか」
セスカ皇子の目が悪戯っぽく輝いた気がする。何だろうか。




