10 説明
◯ 10 説明
今回は転移装置でヴァリーの宮殿に向かい、僕達で話し合いをすることになった。何故かセスカ皇子も付いて来ている。人払いをし魔法で結界を張り、中の様子がうかがえない状態にヴァリーとホングが準備をし、僕とセスカ皇子はフードを外した。セスカ皇子はお忍びで来ているので分かるけど、何で僕まで被らされてるのか分からない。
「アキ……心配したぞ」
ホングが声を掛けて来た。ネラーラさんが自らお茶を用意してくれている。隣にはテレサさんの姿も見えた。ダラシィーの姿に嬉しそうな顔をしている。
「ごめん」
「あの野郎の武器は、闇のマーケットに多く出回っていたらしいから警戒がされてる」
低い目のソファーに座って、大量のクッションを良い位置に動かしながらヴァリーが説明してくれた。
「あ、うん。そうだってね」
ここに来る前にレイがそんな事を話してくれたので知っているが、それで死んだ実感は無い。量産されてるから精霊達も警戒させてるし、外に出るなら僕も知っておかないとならないので急遽教えてくれた。
「……神殿でアキの傷を治す所を映像で見たが、全然役に立ってなかったぞ、あいつら!!」
さっきの神殿の一室で待っている間に死に際の映像を見せてもらったらしい。というかそんなの見せていいのか?
「そうなんだ? 僕は頭を殴られた記憶しか無いんだけど。治療は魂の方を優先させて体の方は……その、呪いの瘴気に喰わせて時間を敢えて作ったって聞いたよ。魂の方は無事に取り出せたみたいだし、今は問題ないよ」
しかし二人は問題有り、みたいな顔をしている。
霊気を糧に侵蝕をするなんて無茶苦茶な呪いだ。強力な霊力を持って剥がせるかどうかだ。しかも本人の意識を奪ってしまっては抵抗すら難しい。獣守のイディッタは緊急の連絡をレイだけじゃなくて組合長にも出したらしい。
速攻でアストリューに飛ばされて緊急対策をとられたから助かったけど、そうじゃなかったら記憶も無しのまっさらな状態に解体されてしまってたかもしれない。
「ナオトギがガーラジーク神の呪いを受けた」
ヴァリーはぼそりと呟いた。何か言いにくそうだ。
「女性に嫌われるという呪いだからナオトギにはきついと思う」
ホングも目が泳いでいる。余程酷いのだろうか?
「……」
どうだろうか、元から嫌われてなかったかな? というか警戒はされてたと思うけど。コミュニティーの記事を読む限りだけど、そんなには変わらない気がする。まあ状態を直接見た訳でないので何とも言えないけど。
「何であんな所にいたんだ?」
ヴァリーの追及が始まった。
「ナオトギに呼び出されたから」
「あそこは治安が悪い地域だ。犯罪区域の者が集まる場所に近い」
ヴァリーの目がつり上がった。
「知らなかったよ」
「推測だが、あそこで待ち合わせたという事は、ナオトギは事件を期待してたのかもしれないな。犯罪を見つけて捕まえれば手柄だろ?」
ホングの言葉にヴァリーは更に眉間に皺をよせて顔を歪めて怒りだした。
「あり得る。くそっ!! ぼさっとしたアキがあんな所で一人いたら狙われるに決まってるのに。確かに奴の罪は重いっ!」
握られた拳は震えている。また殴る気だろうか? でも、犯罪区域の人が集まる商業区なんてあったんだ。
「それであの四人組が僕を見つけたんだ。何か納得したかも」
「四人組って誰だ?」
「ヴァリーの肺に穴を開けたあの四人組」
「「…………」」
二人の顔には恐怖に縮み上がっている表情の上に、嫌悪もしっかりと浮かんでいた。ヴァリーなんて余程懲りたのか聞いただけで、思わず握っていた拳も解かれて防護の姿勢だ。
「こんな偶然があるんだね」
「映ってなかったがあいつらが襲ったのか?」
出来れば話題にしたくないと言いたそうなくらい嫌そうな顔をしている。
「ううん、直接じゃなくて、あの辺りを縄張りにしている悪い噂の絶えない二人組を金で雇ったんだ。僕を攫って怖い思いをさせたかったらしいよ。だけど、別口の暗殺を請け負っている人が、渡航手続きの場所から出て来た僕を付けて来てたらしくて、その人が二人組のちょっかいで護衛が離れた隙を狙って攻撃して来たんだ」
「別口ってなんだ?」
怪訝そうな顔を向けられて仕舞った。分かるよその疑問は。
「こっちは単に偶然かな……多分何かぶつける相手が欲しかっただけで、誰でも良かったんだと思う。暗殺を受けて殺しを願ってた人は、新しい武器を使ってみたくて仕事を受けたがっていたってだけだし、むしゃくしゃした気分を何処かにぶつけたがってた人は、それに乗って金を払って命令をしたって感じかな。そこにたまたま僕の情報を持ってた人が現れたっていうだけなんだ」
話をしている僕でさえも意味不明だ。話を聞いている全員がクエッションマークを貼付けたような顔をしている。
「……嫌な死因だ」
タイムラグがあって理解したらしいホングが感想をくれた。
「犯罪者には多い心理らしいよ?」
「それでは殺した理由等無いに等しいではないか」
セスカ皇子は怒りで拳が震えていた。他の人はまだ理解出来てないみたいだ。
「星深零ではその辺りはどうなってるの?」
「ストレスを溜めさせない為の商業施設の一部解禁だったが、あの事件後は立ち入りを禁止にしている。結局はあそこで悪の情報がやり取りされて犯罪の素地が出来、更に温床になっていると判断された。人らしい生活をという甘い考えは少し見送られる事になった。それでもこれまではあんなに表立って堂々と人が殺される事は無かったんだ。それも一般人をあんな風に残虐に……いや、一般人じゃなかったけど、それでもあんな犯罪はこれまで無かったよ」
溜息まじりのホングの説明に、何か嫌な感触を受ける。こういう訳の分からない物での犠牲者とかって、先陣を切って僕がなっている気がするんだ。何故だろうか。
「あの呪いの武器が持ち主の精神汚染をするのも原因だと思うけど」
「そうなのか?」
「確かそうだったよ?」
トーブドンモ博士がそんな発表をしたと報告書には書いてあった。
「さあ、そのようなお話はそのくらいにして、お茶とお菓子をどうぞ」
用意していたお茶をもう一度用意し直してくれていた。
「ネラーラさん。ありがとうございます。もう済んだ事ですし、次に移った方が建設的ですね……」
その提案に僕はホッとした。女性ならではの細かい気遣いに心が軽くなる。
「ええ、アキさんもいいえ、ピピュアさんもお辛いでしょう。さあ、新しい人生ですもの明るく行きましょう。これからのお話を致しましょうね」
手を握られて自分が少し震えているのに気が付いた。
「そうだな、一番辛いのは彼女だ。良くなる事を願おう。ところで精霊となったのは何時頃なのだ?」
セスカ皇子の質問に少し考える。
「え、と……セドリックさんとかと女の子と集まった時くらいだよ。あの時もメリールに会ってたねそう言えば」
「あの集まりか。元凶との接触の話は逆戻りだ。別の話題にした方が良い」
自分の肺に穴を開けた人物の名を複雑そうな顔で聞いて、直ぐに思い出したらしい。強烈な印象を与えられているから一生忘れそうにないよね。あ、僕は忘れてもバチは当たるまい。既に生まれ変わっている。うん、嫌な記憶は遠くにやっておこう。
「そうなのか。良くない質問だったか?」
「……事件事故に巻き込まれる回数が半端なく多いから避けれないだろう。僕の知る限り三回も死んでる」
「そんなにですの?」
ホングの暴露発言にネラーラさんが眉をひそめて口元を覆った。
「そ、そうだね。これが最後だよ」
大丈夫だきっと。それに今頃は僕に手を出した事は後悔しているはずだ。管理ポイントは襲って来た人達と別けても生半可じゃ返せない。それこそホング並みのセレブ要素がないと無理だ。
この後はセスカ皇子にはまた会いに行くと約束をし、ホングとも一時お別れを告げて、ヴァリーは次の休みにはこっちに戻ると言って外の世界に行ってしまった。転移装置での移動は緊急か神の命を受けているかのどちらかなので、正式に来る意味で一旦戻ったのだ。




