お洒落泥棒は止められない 5
こっそりSS投稿……本編はもう少々お待ち下さい。
また章タイトルが思い浮かばない罠に嵌っておりますー。:;
◯ 5
お金の心配のなくなった私達は近況を報告し合うことに。みかんなカフェの可愛らしい内装に癒されながら、目の前の二人の話を聞いた。
「それで、神界警察の新しい研修が突然取りやめになった理由は分かったんですか?」
「異界の神々に失礼をした人がいたらしいの。詳しい事は分からなくてそのくらいしか出てこなかったかな〜」
話も進み、ここに集合する前に聞いていた事柄を尋ねたら、愛美さんは声をひそめて分かった事を教えてくれた。でも、詳しい内容は伝わって来てないのが現状みたい。私達下っ端にはまだまだ異界の情報を得るのは難しい。
この研修が中止ではなく取りやめになって、とても残念そうな華夜さんと加藤さんの姿を見せられている。楽しみにしていたのが伝わって来ていたので、知っておきたかった。
「警察の人が楽しみにする研修って何だったんだろうね?」
紅茶とシフォンケーキの味を堪能しながら、疑問を共有するべく利香と顔を見合わせた。
「戦闘職から順番に回ってきてようやく行けるってあんなに喜んでたのに」
「でも、戦闘職が優先の場所ってことは危ないんじゃないのかな?」
「どうなんだろ〜?」
「私達が権利を貰える前に廃止になったのって、ちょっと勿体無い事されたなー」
愛美さんも口を尖らせて残念そうだ。
「そうだよね。上の人の失敗で入れなくなったのって……ね?」
利香も警察の威光で格安で行ける場所がある、と言うのに期待していただけに、不満が出てしまっていた。珍しく怒っていそう。
「責任とって、また行けるようにしてくれ無いと困るなー。私の行けるのって、一つだけだし」
愛美さんは既に何度も異界に渡っているので、私からしたら羨ましいんだけど。でも、もう一つバックアップが付いて、安全に行ける場所があるのなら行ってみたいって気持ちなのは分かる。それに、今入れる場所は物価も高くてかなり苦労するみたいなんだもん。もう一つの方に期待が掛かるのは仕方ないよね?
「私達はまだ無理ですけどー」
ちょっと羨ましい視線を送ったら、愛美さんは意外そうな顔をしていた。
「資金はまだ溜まってないの?」
「そう事件は起きないですし」
利香は肩をすくめて、最近の平和な街を喜んで良いのか複雑な顔をしていた。私も同じ気持ちだ。街の異常を探すというか探り当てるのって難しい。愛美さんみたいに交遊範囲が広くないと情報にはたどり着けないし。休日のお出かけもアルバイトを入れると減ってしまう。
何となく悪循環に陥ってそうな感じがしてる。まあ、私はお兄ちゃんの言葉を信じるなら奢りで行けるんだけど、それは何か利香に対しての裏切りのような気がするので、自分で行きたい。
「ギリギリの貧乏旅行なら行けそうなんだけど、お土産無しはね……」
「お土産は大事。みんな現金だから」
私達は笑い合った。最近、夢縁内なら使えるお洒落グッズが沢山出ている。現実世界には持っていけない制限が掛かっているけど、そんなの良いの。夢縁学園ではカラフルな髪色をした人が増えてて、異界の化粧品を試したり、化粧品を塗るだけで作用する光の魔術で全身の肌色を綺麗に整えたりの美容グッズを使う人が増えている。
目の前の愛美さんも愛用していて、綺麗なお肌をしている。それにピンクアッシュっぽい髪色になっている。でも派手じゃなくて、愛美さんの本来のベースの暗い亜麻色の髪に光が当たると色が分かるくらいのとても微妙な感じだ。外で染めるよりも手軽だし、光と水の魔術だと聞いているので透明感が出て、髪が潤い輝いて見えてすごく羨ましい。
どうも好きな色をオーダー出来るらしくて、向こうの雑貨店に売られていると聞いている。愛美さんは魔法陣を覚えたら自分で作れるみたいな事を言っていた。でも、こっちの魔法陣じゃダメで、向こうの理にそった魔法陣を覚え直さないとならないし、ここで使えたりする共通している部分もあったりとややこしいって聞いている。
「このオーダーの髪色はお値段張るよ〜」
じっと見ていた私に向かって悪戯な笑みをしている。
「ううー。羨ましいからそんな自慢しないで〜。愛美さんの意地悪」
「ごめんごめん。美容グッズはこっちでも有効のを探すのが大変で、値段は温泉饅頭くらいかな……」
驚いて利香と顔を見合わせた。向こうも驚きの表情を貼付けてる。
「えっ、お饅頭ってそんなにするんですか?」
利香が本当か確かめてる。私も隣りで頷いてじっと愛美さんを見た。
「そうなのよ。光属性の中でも向こうでは聖属性ーー私達で言う霊力の籠った食べ物はお高いの〜。ここのカフェもそうだと思うの。だってこのケーキ、私の霊気なんて霞むくらいの力が入ってるし、紅茶なんて聖水使ってるよ……」
言われて感じてみたらたしかに霊気が食べ物から感じ取れる。霊気を放つ食べ物……霊力が籠っていると言う事なんだけど。
確かに味も良いけど、これは……自分の中の邪な念いも浄化してくれそうなありがた〜い食べ物かも。
「お兄ちゃんは何の仕事してるんだろ……」
温泉饅頭もこれの仲間なのね。いつも食べててあんまり気にしてなかった。
「それは神様のお仕事だから聞けないんじゃ……」
「専門職を目指すって聞いたけど、何のお仕事なんだろね。お高いチケットにお高いお饅頭」
利香も謎だと首を傾げている。
「あ、お饅頭は貰ってくるって言うのを聞いたかも。饅頭の包みを手伝ったりしてるのは昔、言ってたし」
愛美さんは向こうでお兄ちゃんと会ってたから色々と聞いてたのを思い出したみたい。
「あれ? じゃあ、お饅頭は遠慮しなくていいのかな? お兄ちゃんのアルバイト先なんだ?」
なんだ。自分の勤め先のを貰って来てたんだ。あ、でも専門職ってそっちの調理系なのかな。お兄ちゃんらしいかも。今度家に来た時に聞いてみよう。
取り敢えず、疑問は解けたので紅茶のお代わりを貰って話を続けた。一杯目のお代わりはサービスのうちなのだ。しっかりとチケットを読んでおいたので大丈夫。
「そういえば、利香は加島さんとは最近どうなのー?」
愛美さんがちょっと探りを入れている。坂棟 由衣子というライバルとの決着はどうなっているのか気になったのと思うけど、確か振られたんだったと……。ちょっと心配なのでお隣をちらりと見れば、吹っ切った様な顔をしている。
「由衣子さんとおつきあいしているみたいですよ? しっかりしている私はお払い箱です」
そんな事を言われたらしい。自立しすぎて可愛く無いとかそんなことを言われたらしいけど、お饅頭の会だって意志をついで色々と頑張って活動したりして、彼の負担にならないように頑張ってる女の子になんて失礼な! と、怒ったよ、私は利香の味方だから。
「えー。利香ちゃんいい子なのに。さっぱりしてるし裏表無いし、すごくいいのにー」
もっと言ってあげて下さい、愛美さん!
「そうですよねー。男って見る目無いんだから! なんて言うか構ってあげないとダメって言うのに弱いんですよ。頼りにした方が気分はいいとかそんな感じ?」
「あー、男の自尊心をくすぐるタイプか……王道かなー。そういうのは付き合っていくうちに剥がれるもんなのに気が付かないんだよー。気にしなくていいからね? 利香の良い所はあたし達はしっかり分かってるから」
愛美さんは利香を慰めている。頭を撫でて良く頑張ったと言っている。やっぱり女子会は恋話が無いとしまらない。
「そうね。私の良さが通用する相手を今度は見つけないとね……」
ちょっぴり涙が目の端を光らせてるけど、それは本人が元気出そうとしているから私も見ない振りだ。
「そう、その調子!」
「見る目のある良い男を捜そうー!」
紅茶のお代わりもばっちり飲んで、失恋ごとき心の痛みは霊力の籠ったケーキセットで洗い流し終った私達は店を後にした。
後で知ったけど、あそこのアルバイト店員は異界の職業「神官」の資格持ちだって。霊気を扱えるのなら神官を目指すのもありらしい。
でも、愛美さんは「魔法使い」を選んでいる。それは成田さんが霊気を扱えないからだけど、今日のあのカフェでのお値段でちょっと考えると言ってた。お給料は神官の資格を持っていた方が良いのか……そこが最大の感心ごとかも。女の子は色々と興味が尽きないのにちっとも稼ぐ場所が無いのが困る。
色街に行くとお給料が良いとは言うけど、そんな所には行きたくない。好きでもない人に媚を売る仕事なんだもん。何か違う。
お客と店員という関係より、男と女という関係が優位に立つお店ってことだって愛美さんは言ってた。女としてお客さんにサービスするんだって。愛想を振りまくにも限度があると思うけど、男女の仲を装う職業とか意味が分からない。だって、肝心の男女の仲というのをまだ知らないんだもん。
取り敢えず、神官って恋愛禁止とかじゃなければ進んでみても良いかもしれない。異界の資格は他の異界に行ける切符の様な扱いなのだと聞いているから、とれるのなら狙いたい。夢縁でもお高いカフェで働ける優秀な資格だって言うのは証明されてるしね。




