122 尋問
◯ 122 尋問
ヘッジスさんとナリミルさんに昨日の話をまとめて僕はメールを送った。灰影に付け狙われるのは良くないし、ヘッジスさんも長く不遇を受けていて、それを払拭するのは難しいだろうという事を伝えた。
返事には妹の結婚話がでないのが一番良くないというのが書かれていて、ヘッジスさんとしてはそれが一番堪える事柄なのが分かった。
確かに女性としては長年言いよってくる人がいて、自分の女扱いしていたのだから下手な男は遠慮して寄ってこないのは分かる。というか、トラブル付きはみんな避ける。特に男女の情が入るとお互いで勝手にやってろとなるのが世間だと思う。もしくはゴシップとして嬉々として噂を流されたりだ。そんなのは迷惑に決まっているはず。後はナリミルさんの気持ち次第だ。
けど、それは僕が初級に上がるまでに決めれば良いのだ。最低でも十回は仕事を成功させねばならない。魂の管理者としての活動は認められているけど、本職のガーディアン見習としての仕事と言ったら一回も無いのが現状だ。
だが、ガーディアンという職自体が変更された今、僕の所属は行方不明になっている。その辺りをジャクリーン教授とメシューエ神に聞いてみた。
「どうなっているのか聞きたいのはこっちだわ」
「え?」
アストリュー世界の月の神殿のマッサージコースの優待券をせびられたので渡したが、更に質問返しをされるとは知らなかったぞ。マッサージコースを終え、バスローブ姿でホテルの部屋で寛いでいるメシューエ神とジャクリーン教授は仲良く並んでソファーで僕を見据えている。
「え、じゃないのよ。玄然神よ! お相手の女性が全然出てこないじゃないの」
「それですか?!」
「その上、冥界にあったオーディウスの神域も神界も消えたってもっぱら噂よっ」
「そうよ。玄然神は元々冥界に神域を広げなかったのは有名だったけど、それは貴方のお陰でいい女のところに作ったんだっていう話で落ち着いてた訳だけど、その相手がちっとも絞れないのよ。ここの女性達は接客は良いけど、口が堅くて全く情報が取れないのよ」
「下っ端の神官に至るまで教育が行き届いてて、全く歯が立たないわ! 世界が絞れていれば直ぐに噂をたどってたどり着けるものなのに……しくったわ」
「そう言う訳で、今日こそは教えてもらうわよ」
二人の女神がずずいと寄ってくるが、怖いからそんなに眼力を込めて見つめないで欲しい。
「……あの、僕はまだ死にたくないです」
何とか口に出せたのはそんな台詞だった。東雲さんの気炎を吐く姿が目に浮かぶ。
「なんなら死にたくなるように手伝うわよ」
そんな!!
「玄然神のお相手とオーディウスは何処に消えたのかきっちり教えてもらうわ」
指を鳴らして、吐くのか逃げるのかと言いよる二人の追及にたじたじだ。僕は脳内でレイに助けを求めた。しばらく脳内会議で黙っていたけど、二人の女神は大人しく待っていた。
「あの、師匠が言うにはヒントだけで勘弁してもらえって……」
「師匠? ヒントだけ?」
ぴくりとメシューエ神の眉が上がった。
「ふうん。光神のあの子供ね?」
ジャクリーン教授はレイの事を思い出したらしい。こちらも怒りが更に上がっている。
「どっちもC3Uに関与してるって言うのがヒントです」
「やっぱり。最高責任者はオーディウスね?」
「薄々そうじゃないかとは言われてたのよ。オーラが似通ってるし。でも、あんなに早く身体を用意するのは無理だろうって言ってたのに……。貴方の師匠の光神はかなりの使い手ね?」
「はあ」
「という事はガリェンツリー世界の後ろ盾は光神じゃないの?」
「みかん神の正体?」
「そこまでは分からないけど、人材派遣が益々盛況するって事よ。取り敢えず思い切って良かったわ。お陰でキヒロ鳥で沸いてるアストリュー世界のマッサージを受けれる身分よ」
ソファーに座り直してふんぞり返る二人は冷たいリモンジュースを飲み始めた。
「貴方の友人をやってて良かったわ。あそこの会員に入っておいて助かってるもの。今時はあそこからの仕事の伝手で死神の組合としての仕事まで回せてるのよ」
人材派遣で得た人脈から新しい仕事を取って来ているらしい。そう言えば依頼を取ってくる仕事も組合にはあると言えばある。そういう選択もありなのかとちらりと思ったが今日は大事な質問があるのだ。これをクリアしないと先に進めない。
「それで僕の質問は……」
「そんなのヘッジスが行き先を決めるのが筋ってものよ。良い先輩を捕まえるのも仕事よ」
何か含みのある言い方をしている。
「そんな……二人とも師匠なのに冷たいですよ」
「あら、やっと思い出したのね? 特訓をさぼってたらダメよ?」
「う……すいませんでした」
二人の特訓の予約を入れ、ちゃんと覚えているか質問に答えさせられたりと色々と説教されたりした。
それでやっと目的の答えが返って来た。
死神の組合からC3Uに正式に入っているのがアイス=マオなのだからその仕事だけでも初級に上がれるとのことだ。指名依頼が来るなら初級に上がれるだけの能力があると認められるので、今直ぐにでもテストを受けれるとの事だった。
「なんだ。全然大丈夫だったんだ」
「勿論よ。それで、初級に上がったら、指名以外は完全にマオを消すのね?」
「うん。幽霊で通してた時からの僕とも関連づけられてるし、またあの魂を傷つける武器で狙われる可能性も大きいから……切り刻まれて売られるなんてゴメンだよ」
「月夜神も危険なんじゃないの?」
「あー、月夜神でいる時は護衛が付くみたいだから大丈夫だよ」
「そう。月夜神の魔眼に懸賞が掛かってたわよ?」
「ええ?」
「何処でそんな情報が出たのか知らないけど、闇の情報網に出回ってるらしいから気をつける事ね」
「わ、かりました」
ベーゼディの情報のせいだと思うけど……背筋が寒くなる話だ。取り敢えずこれまでの姿は全部気を付けた方が良いみたいだ。そしてガーディアンの見習いという立場はやっぱり秘匿され、身柄保証されるとの事だった。
ただ、修行は長くて中々進まず、しかも芽が出るとは限らないので、他の職をメインに据えてガーディアンとしては一人前になるまでは仕事も斡旋されない事が決まったらしい。
つまり、ヘッジスさんは僕を連れて行けないという事だ。色々と変わっている最中の死神の巣の体制はまだ半分の人がちゃんと把握出来てないのが現状みたいだ。その他の分かっている事を聞いてから、次に聞いておきたかった事を思い出したので二人に聞いてみることにした。
「インテリジェンスアイテムって死神の巣ではどういう扱いなんですか?」
ドゥーフェスさんに聞き忘れた質問だけど……二人なら答えてくれると思うのだ。
「仲間として捉えてもらえるかどうかね?」
ジャクリーン教授は直ぐに質問の意図を汲み取ってくれた。
「ポカレスを所持しているなら確かに気になるわね」
メシューエ神も理解を示してくれている。なので僕は二人の言葉に頷いた。そこはしっかりと聞いておきたいのだ。
「神格を持っているならパートナーとしては認められてたと思うのよ」
「でも、死神のマントを持っているのが条件よ。ポカレスはまだ神格は無かったんじゃなくて?」
「あー、そろそろなので……」
メシューエ神の質問は適当に躱してみた。二人ともポースの事は余り興味ないのか今度はハーブティーを御代わりしたりしていてそれ以上の追及は無かった。
「まあ、ガーディアンのパートナー仕様も今ならグループやパーティーへと変更が利くし、字とマントの登録は三つまで出来るように変更されるのよ。まだ先の話なら待った方が良いわよ」
ジャクリーン教授の発案で職業別でマントと字を変更出来る仕様にしているそうだ。ただし、中級者からの特権なので僕には有効ではない。と思っていたら、ガーディアン見習いは保護対象だから対応されると言われた。
どうも、オーディウス神がもぎ取った字の変更の権利を目一杯活躍させようとしているのが、ジャクリーン教授だと気が付いた。まかせっきりにして本人に行方をくらまされたら確かに困るし、あの剣幕で聞いてくるのも頷ける。全く、良い迷惑だ。
「じゃあ、そろそろ僕は帰りますね……。あ、これ、温泉饅頭です」
女神の機嫌取りに持ってきたお土産をテーブルに乗せてお別れの挨拶をした。
「気の利く弟子で良かったわ」
「本当ね。催促しなくて済んだわ」
機嫌良く送り出してくれたのでホッとした。取り敢えず、二人には色々と教わったので良しとすることにした。




