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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
おみやげをかくほせよ
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81 土産

 ◯ 81 土産


 星深零の紹介してくれた宿は、宿らしくなかった。なんていうかと言えばゴージャスな迎賓館って感じだ。東雲さんが言うにはこの世界でインテリジェンスアイテムを、心ないものとしてないのはここくらいだとか。


「花*花亭はボスにも優しかったよ。お土産をちゃんと用意してくれたし」


 お礼を言う為に翌朝に、メッセージを送ったら連絡が来た。


「ほお。よい傾向じゃ。そう言えば女性に優しい店で通っていたか、今回初めて組んだあの結束の会とか言うもの達の推薦する店に入ってる。中々良い活動をしているよう」


 仲間として懐柔しようと思ってそうだ。後ろ盾として活動を支えようかなんて呟いてるし……。僕はそれだけであそこには逆らいませんよ。


「世話になっとるのに酷い言い草よの」


 心を読まれたみたいだ。


「感謝してます」


 お陰であの悪意の込められた小物からは離れる事が出来ている。


「宿にする場所が倫理問題を無視しては困るからの、こってり絞る。安心して良いぞ」


 過去の被害者がいないかも調べると言っているし、過去視の力の持ち主が色々と暴いてくれているらしい。初犯ではないのか……。あれに気が付いてなかったらひどい目に合ってたかもしれない。


「最終的にはホテルは二束三文でレイに乗っ取られそうじゃな」


 オーナーが手放す気になっているんだろうか……レクタードさんの顔が浮かんだ。ちょっと出来過ぎな気はするけど、それも良いかもしれない。彼の本業だ。棚からぼた餅かな。


「既に膿みは出されているからやり易いはずじゃ。あれだけお膳立てされてれば再生するだけ。妾も良い出会いがあったし、旅の苦労もこれだけ収穫があれば良い」


「そうですね。ありがとうございます」


「今日はゆっくりとするとよい……そうか、妖精に会いに行くのか。それは良い。そなたの居場所じゃ」


 画面の向こうの東雲さんは何時になく優しかった。


 館には主人がいて、余っている部屋を紹介者のみ、宿として解放している場所だ。ここに呼んでも良い条件はインテリジェンスアイテムの地位向上に賛同するものだ。


「インテリジェンスアイテムには一芸に優れる()が多いのよ」


「はい」


「良い答えよ」


 すんなり認めたらにっこりと微笑んで合格を貰えた。

 ここの主人はある意味マリーさんと同士だ。マリーさん程むさ苦しくはないというだけで、女心を鋼の様な肉体に守らせている繊細なお方だ。少し遅めの朝食を一緒に食べている。アストリュー世界から送られた荷物を受け取って確かめてたらちょっと遅くなったのだ。


「でも、最近は地位向上なんて言う必要もないの。三完獣守、スフォラーの登場は衝撃的だったわ。完璧な存在。そしてまだ成長途中……。成長しているのよ。これがどれだけすごいか分かる? 生命力を宿し、念いで動く存在となったのよ」


「はい」


 女(?)主人のローラさんは何故かべた褒めだ。


「カジオイドは彼らの念いの受け皿。私達人が心に傷を負ったら体も不調を訴えるのと同じ様に、念いで強さが変わるの。でも、あれを外には出さない気なのよ。それが歯がゆいわ。私の大事な皆にあれを……。私の気持ちはそんなところよ、それで本題ね。マシュディリー博士とはどういった関係ですの?」


「三完獣守とスフォラーの専用としてあれはまだ研究中です。あれを目指し、追ってくる者がいれば良いと言ってました」


「それで?」


 僕の答えに唇を少し噛んでから更に聞いてきた。目が真剣だ。


「念いと魂が繋がる要素が一番大事で、それをすくいあげる必要はあります。わたしは魂の管理をしています」


「大本命?」


 方眉が上がった。


「そうですね。神精霊として受け入れている世界は多いですし、修理しても酷使されすぎている場合は体から魂を外して休める必要があります。彼らも休息を入れた方が魂は育ちます」


 口が開いたまま固まった。


「……そう。盲点だったわ。頑張らせすぎてたのね」


 バランスが崩れていると、体が崩れる。魂の力が上手く伝わらない体に入っていたら良くない。彼女の周りにいる付喪神はもう、体も必要ないくらいに乖離している。そこまで育っているとも言えるし、新たな受け皿である体がいる。ここまで来たら何も生命体じゃない姿を選び続ける必要はない。元の身体にこだわる事も無いと教える人がいなかったのが問題だ。

 ローラさんは周りのアンドロイド達を見回して、涙を流し始めた。目の前の曇りが晴れて、彼女の中で繋がったのだと思う。


「ここでは孤立してしまいますから、外にも活路を開いて下さい」


「感謝しますわ」


 ボスの様な死神も問題なく死神として登録出来る辺り、確執はあるとはいえ死神の組合は、ここよりもこの事に関しては懐は大きい。彼らに開かれている冥界を紹介するくらいは大丈夫だ。やる気があるなら彼女がここの冥界にその部門を作っても良い。僕がそれが出来る死神との繋をやっても良い。

 この世界で最初に会ったベネットさん達の理を乱す彼らには、人として生まれても良いと伝えておいた。周りの常識が変わる切っ掛けにきっとなる。もしくはポースの様に本自体を霊体に変えてしまうくらいに、物質くらい飲み込むかだ。

 昼前までそんな事を話し合って、アンドロイド達と今後の話し合いを勧めた。決めるのは彼らだ。



「転移装置で移動しても、エリアは回れそうにないね」


「まあ、良いじゃねえか。昼飯はあそこで喰うんだろ?」


 ボスのリクエストは僕のお弁当だ。今日はもう、聖域内で軽いピクニックで良いか。そう思っていたら、ザビから時間をずらして欲しいと連絡が来た。

 兄の方が仕事のトラブルで少し遅れるという。お兄さんは確か、運搬業の仕事のついでに弟が作る物の材料を集めていたはずだ。日を改めた方がいいかメールを送り返して確かめたら、夜には戻ると書かれていた。


「スポンサーは逃したくないだろうさ」


「それもそうだね。レクタードさんにも送っておかないとね」


 レクタードさんからは、打ち合わせの時間が取れるかの質問が入っていた。


「打ち合わせ……。そっか。それも必要なんだ」


「作戦を決めるのは大事だぜ?」


「そうだね」


 ボスの指摘で納得した。行き当たりばったりは良くないか。それはともかく、お昼を食べ終えた僕達は、大本命の洞窟と、その奥の溶岩を妖精達に案内してもらって感じを掴んでおいた。フェニックスに似た鳥が溶岩を浴びてご機嫌だったお陰で人は少なかった。噴火口まで続く溶岩の中を空を飛ぶ様に進んで出たり入ったりしている。


「あれを取り込まないだと? ここに集まってるのはへっぽこばっかりだな」


「ボス、取り敢えず面識は取れたし、神域に招待したから大丈夫だよ」


「森を焼かれないか?」


「大丈夫。火の精霊が少ないから温泉がないって言っておいたから」


「なんだ。神域にまで温泉を作るのか?」


「い、良いじゃない?」


 ロマンだと思うんだ。露天風呂は気持ちいいに決まっている。玄然神の連れてきている眷属達のお陰で炎龍に地龍は増えて、溶岩自体は玄然神とオーディウス神のお陰であるのだ。しかし、龍ばかりじゃつまらない。鳥の楽園を目指したって良いのだ。


 帰り道、レクタードさんと転移装置前でバッタリとあった。彼もここに来ていたらしい。いつもの取り巻きがいない。


「あのホテル、買収するの?」


 話をしながら進んだ。


「まだ分からないよ」


 力不足だと少し気落ちしている声で言った後、溜息がこぼれている。


「レイに何か言われたの?」


「かなり……堪えてるよ」


 足を引っ張る様な仲間は縁を切ったほうが良いといわれ、散々証拠をあげられたらしい。というか僕の被害書を見せつけられたみたいだ。追いかけっこでもビアラマ隊のフォローがなければ、街を混乱に陥れたはずだと仲間の強引な捜索を注意し、個々の能力を上げるか、人選をやり直す事を命じられたらしい。


「それであんなにどんよりしてたんだ」


「不甲斐ない……」


 この調子じゃホテルの方はまだ先になりそうだ。


「自分に取ってだけ、都合のいい人間ではならないと言われたよ。権力の庇護下で私腹を肥やし命令を聞くだけの人間は排除しろと、そばに置くのはよすべきと注意された。確かに、周りから見た自分達は酷かった」


 またしても俯いて気弱な台詞が出てきた。


「まあ、そんなに自分を責めないでよ。この後の事はかなり僕の管轄外と言うか、初体験だから……」


「出資の話とは聞いているが、貴方が?」


「あれ、何も聞いてないんだ?」


「フォローを頼まれた」


「昨日の話を聞くよね?」


 兄弟共に優秀な所があるので、それを伸ばして行くつもりだと説明した。


「物は魔法補助の魔術式魔道機械か」


 ちゃんと言うならレクタードさんの呼び方もあっている。


「この世界は魔法の力が押さえられてるから、魔術が基本になっているんだ。だから、こういった補助の物は溢れているよね」


「街を歩けばそれは分かった」


「レイの思惑通りだね。それで、人間用のこういう派手な装飾を作っている子がいて、それを援助するんだ。え、と、補助用にはまだ開発段階で手直しが必要だから、それに堪えれたら本契約をって言うルールで仮契約を今からしに行くんだ。それで、兄の方は、開発したこの魔法陣の将来性を買うために、異世界間管理組合での特許登録を勧める話し合いをするんだよ」


「装飾用を実用化させるのか……」


 首を傾げて難色を示している。


「需要がある場所に持って行くのが僕達の仕事だよね?」


「……何処に?」


 疑わしそうな顔をしているが、そんなのには負けないからね?


「美に、うるさいのはアストリューだよね。子供用のおもちゃから始めようかと思うんだ。飛行魔法の練習補助にも良いし、カッコいい。人気は出るよ!」


 ここでの受け入れも出来るはずだと思う。妖精とお揃いは外せないだろう。


「子供用で教材扱いか……それなら受け入れはアストリューだけでなくて広げれるはずだ」


 仕事モードに変わったらしいレクタードさんは、少し元のキラキラオーラが戻っている。


「イベントにも派手な方が良いし、探せばもっと出そうだよね」


 今日のボスは魔結晶を使う流星になれるタイプのを付けているので、そっちを指さした。


「宣伝で人目を引くのには使えそうだ」


「さすがだね」


 直ぐに用途を思いついたらしいので、褒めたらまんざらでもない顔を見せた。調子が出てきたみたいだ。


「便利さの追及は装飾を省き易いが、装飾ありきなら別の用途が生まれるようだ。レイが好みそうな物だ」


「もう、お土産にするって言ってあるよ」


「…………」


 複雑そうな顔をして見つめられたが、心当たりは、なくはなかった。被害書に土産の話が入ってた気がする。彼は土産の為に走り回ったのだから、チョッピリ後ろめたいかもしれない。目は逸らしておいた。


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