チャーリーのお仕事 4
◯ ケース4
最近、ピアが何を思ったか髪色を変えようとしているのです。それは許されないと皆で猛反発をしている途中です。
「でも、目立つし、恥ずかしいよ」
どうやら本音はそこにあるようです。らしいと言えばそうですが、ここはこちらの気持ちも汲んで頂かないとなりません。
少女からまだ抜けきれていない容姿のピアは、誰が見ても可憐な翼人族です。14、5歳の可愛らしい女の子の背中には羽があり、キラキラと輝いています。殆どが魔力で維持されている羽は輝き続けていて、レイの思惑通りに残光をまき散らしています。
翼を全て消しても髪から残光を放っているので、レイは満足そうにそれを眺めているのですが、事、髪色に関してはレイも不機嫌そうにしているので、レイも本来は止めたいようです。しかし、髪色を変える事で外に出ようとしているのもあり、強くは止めれないと、レイが強く反対しない理由も教えてくださいました。
「思いっきり女の子に間違われて、ナンパされてから殺されてるからね。あれは痛いかな」
レイはそういって無理に微笑もうとしています。
「そういえばそうでしたね」
その事を思えば、ちゃんと外に出ようとしているのだから歓迎すべきではあります。猫の姿でもフリーマーケットの人ごみで、足がすくんでたのを見れば重傷には違いありません。
「単に、注目が恥ずかしいだけだろ。女の子になりきれてないだけだ」
マシュは違う意見のようです。何となく、まだ戸惑っている様に見えます。確かに人間の女の子は繊細で複雑です。特に乙女心は察します。そういう時期も重なっての事でしょうと、譲歩を決めました。
「チャーリー、髪の色はこのくらいならレイも嫌がらないと思うんだけど……」
ピアが恥ずかしそうに体を縮込めつつ、相談をしてきました。どうやら猫でいう薄い毛色であるクリーム、もしくはパステルな色合いを目指しているようです。グレーともベージュとも言わない薄い色です。光に当たればシルバーピンクな輝きがキラキラしてロマンティックな印象です。服の色を疎外しないからと一生懸命に言い訳を考えたのか、説明をしてくれました。その顔が可愛いので、許しましょう。
「その代わり、家では元のお色にして下さい」
ここは家ルールを作るのが良いのです。譲歩の件は仲間達にも既に伝えてあります。
「分かったよ」
お許しが出てホッとしていました。最近はピアも物作りを始めて、自作のアクセサリーを付ける様になっています。そのアクセサリーに髪色を変えさせ、残光を閉じ込める様に気を押さえてお出かけの用意を始めました。
「どちらに行かれるのですか?」
「外を歩いてくるよ」
「そうですか。気をつけて」
これは後を追い掛けるべきですね。護衛の資格を取るのに尾行という技術がありました。資格を取る前に試すのも良いでしょう。アキは敏感ですからね。対象としては最高の相手でしょう。
「護衛は?」
「必要ですか?」
「う……」
目が泳いでいます。アストリュー世界内では、護衛は付けない方針です。一人の行動がとれないのは良くありませんから、ここは心を鬼にしないとなりません。
「直ぐ戻るよ」
誰かに付いて来て欲しかったのでしょう。でも甘やかしすぎるのは良くありません。
後を付いていけば、本屋に入りました。魔力と魔石とか言う本を買うかどうか迷っているようです。しかし、気のせいか町を歩く時、妙なタイミングで人を避けていたように思います。周りの動きを読んでいるのでしょうか。
次は魔結晶やら魔宝石、魔珠等も置いているアクセサリーのパーツを扱うお店に付きました。欲しい材料の前を占領している三人組がが去ったと同時に動き、その場所に真直ぐに向かいました。それまでは店の中をゆっくりと見回っていて、彼らの動きは肉眼では捉えれないはずの位置にいたのに、場所を動いた途端に直ぐに向かいました。人の気を追って動きを読めるのは分かっていましたが、かなりの物です。
そして、直ぐに目的の物を手にしたようです。動きに迷いがありません。三人組が占領していたので商品が見えているはずは無いのですが……。アキにはあの距離で探し物が分かるのでしょうか?
更に、店内奥の高級材料の場所に向かいました。宝石を扱っているので物品は全てケースの中に飾られています。真直ぐにケースの方に向かって店員に欲しい物を指さしました。吟味する時間がいるはずですが、即買いです。おかしいです。
更に、外から持ち込んでいる商人をじっと見て、店員に何やら聞いています。店の端にいるので、私の聴覚でも聞き取れません。魔法を使えば聞き取れるでしょうが、ピアは魔法には敏感ですので使えません。ですが、お店の人が驚いているので、商人が持ち込んだ物を欲しいとかそんな事を言ったに違いありません。
これは報告が必要でしょう。帰ったら早速マシュに映像を見せて聞いてみました。
「……この力は開花中だろう。スフォラやフィトラに頼ってたから伸びてなかったんだな」
どうやら探している物品の選別も、意識してやってしまっているようです。
「では……」
「しばらく、このままこれを伸ばしてもらうか。本人には黙ってろよ? この様子じゃまだ半分以上は無意識だ」
「分かりました」
これは仲間にも連絡です。アキの新しい力が目覚め中のため、見守る様に緊急会議です。




