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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
おみやげをかくほせよ
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72 相克

二日に一回ぐらいのペースで進めて行きます。

ストーリーは覚えてくれているでしょうか……(>_<)

C3U発足後のトラブル引っ掛け装置であるマオの旅行です。

閑話はしばらくありません。

 おみやげをかくほせよ

 ◯ 72 相克


 ギンガンナブ世界に向かってボイス(目玉機械に取り憑いてるポース)と一緒に旅行だ。

 マシュさんの渡してくれた観光案内には、魔法陣と魔結晶を使っての機械動力を開発し、発展して来た世界だと書いてある。オートマタや機械ロボやらと、昔の病気をくすぐる要素が満載だ。体にフィットしたボディースーツにパワーアシスト的な機械パーツを使っての労働があったりと、かなり嬉しい事態に顔がにやけている。


「今の俺様と似た感じだな」


 浮遊させているボディーを操って僕の横を進んでいる。大きさは今日はバレーボールくらいだ。


「そうだね。機械で制御する体って変な気分だけど……スフォラに取り憑いてた時の事を思えば大丈夫かも」


「本の姿が一番機能的だが、これも悪くない。口に物を入れたり吐き出したりする気持ちがわかるからな」


ボス(ポース)も勉強なんだね」


「当然だぜ? 俺様は何時だって進化するのさ」


「さすがだね」


 異界渡航手続きを済ませて、僕達はナンバーの書かれた転移装置に向かって歩き出した。


 今から行く異界の神々は随分細かく別れていて、統一されていないという。マシュさんが言うのだからそうなんだろう。国ごとに、もしくは部族ごとに決まった神が存在していて、自分のあった神に信仰を注いでいるとか。もしくは掛け持ちもありだ。宗教に関しては大体は受け入れる日本くらいのおおらかさがあると思っていいみたいだ。

 だけど、オートマタだとかロボットだとかホムンクルスだとかの神は、総じて作り手である人種が主に敬われていて、機械でも心を持った物達は肩身の狭い思いをしているらしい。

 神格を持つと言っても付喪神とかの類いは、小さな神とか言われて余り信仰の対象としてはここでは人には見向きもされてなかったという。使われる対象という事で、敬うというのは中々乗り越えれない壁があるのだとか。何となく分かる気もする。先入観が大きく関係しそうだ。魂の力も少々違うのも大きいかもしれない。でも意外とそんなでも彼らの方は人が好きだ。ボスも同じだ。


 そんな中でもこの魔法のある世界で、魔法を使う事が苦手なのがホムンクルスやらオートマタの種族なのだが、最近は認識が変わって来つつある。魔法を強烈に扱える三完獣守族、そしてインテリジェンスアイテムの『スフォラー』シリーズが登場してからの事だそうだ。

 何せ、殆ど人と変わらない感情と意志を持ち、気を操り魔法は強力で正確無比な制御を誇るのだ。更にカジオイドの使用による武器での補助で高い戦闘能力を引き出し、他の追随を許さない快進撃を続けているのだから。

 獣守族の悪魔討伐での貢献に、悪神を退けるスフォラのC3U入り、護衛としての資格も余裕で取得しているし、何よりも冷静な判断と強い意志に周りもホムンクルスだとは思わないのだ。強い魂を感じるが故にこの短い期間で神格も芽生え、外の世界では既に見習い神として認められたスフォラ、いや、ティアラは今後の活躍を期待されているのだとか……。ティアラという名は家を出た後からずっと使っている名前だそうで、誤摩化しはしてないという。


 どうやら僕とか司令部の人間くらいしか名前を偽ってないみたいだ。レッドの様に情報を探りに来ているとかじゃない限りはだけど。僕の認識がというか、自分の状況が異常なのが分かった気がする。死神としては当たり前でも他は違うんだって分かる。いや、僕の場合はピピュアが保護される存在というのも入るけど。

 つらつらと考えても、あそこの司令部の皆が合わせた様に偽名なのかが分からない。しかし、考えている間に順番が来て僕達は界を超えた。


「わあ……」


 期待通りに機械文明の発達したというか、何処かのSF映画の様な神界の様子にちょっと感動する。高い建物の頂上に出たみたいで行き交う大きな機械空船が、ガラス擬きな透明な壁越しに良く見える。宇宙船もあると思うけど、僕には区別がついていない。


「マシュが魔導書は流行らない世界だと言ってたのは分かるな……」


 ボスもこの様子にはちょっと驚いている。


「バラバラにしかなかった神界を、異世界間管理組合が纏めるのにかなり貢献したって聞いてるよ」


「神戦争が起こってこのままじゃ世界ごと滅びそうだってんで手が入ったんだろ?」


 マシュさんに一緒に聞いた事を思い出してか補足してくれた。


「そう。そのお陰で崩壊が免れたらしいよ?」


 つまりはここの神界は広い。後ろからどんどんと転移してくるので、邪魔にならない様にしばらく進んだ。


「随分古い話をしているな。マオとボスか?」


 後ろから声を掛けられたので振り返ったら、白衣姿の如何にも研究者って感じの長身の男性が笑っていた。こんな所にまで白衣を羽織っているのはマシュさんの知り合いに違いない。


「そういうあんたがマシュの知り合いか?」


 ボスもそう思ったのか確かめている。


「そうだ。シシューカ ベネットだ。よろしくな」


 そう言いながら意外とがっちりとした手を出して来たので握手した。


「よろしくお願いします」


 レイ情報ではマシュさんの元恋人だとかと聞いている。この人は、見た目は普通だけど一部がサイボーグなお体だ。


「君達が言ってた戦争時に体の一部分を機械に変えたんだ。右半身がいかれてね……」


 ちょっと困った様な顔で言われた。


「すいません。珍しくてつい、見てしまって。今まで行った世界では余り見た事なくて」


 僕がジロジロと見ていたせいだ。でも、その時代からの神という事は随分年を重ねているという事だ。体内の機械音がするから機械部分のタイプは古そうだ。それに、気が通ってない。生まれ変わりもそれからしてないとなると随分長く身体を酷使している事になる。


「いや、違和感が分かるというのはここではかなり良い事なんだ」


「そうなんですか?」


「機械と生命体を区別出来た方が優秀だって証だからね。だが、マシュが開発した三完種については恐ろしいくらい区別がつかなかった。生命体じゃないなんて信じられなかったよ」


 嬉しそうな顔をしているので良い事なのかもしれない。ベネットさんに付いていけば異世界間管理組合のここでの管理に付いて色々と教えてくれた。

 神々の戦争が悪化して、いよいよ界が壊れるかもという緊張感溢れる時に、外からの武力でここの神々を制圧してしまい、壊れかけた世界をつなぎ止め、バラバラになっていた神界をまとめて一つにして、人界とに分けてしまったという。一部の神々は地上に残っているみたいだけど、神だとは名乗っていないようだ。人に紛れて暮らしているという。


「じゃあ、昔は神々と人は同じに住んでいたんですね?」


「そうだ。力ある者とこれから成長する者とで分けたんだよ。その方がここは良いと判断したらしい。覚醒者や、神格を持つ者は地上世界からここに入る資格が持てる。それも、誰でもだ。魂の発する力で分けた。それが良かった。体が機械に覆われた者を差別する事が無くなった」


「前は違ってたんですか?」


「ああ。基準がバラバラで、オートマタが奴隷の変わりだった。それもなくなって久しい」


「感情があるなら、魂があるのと同じだってマシュさんが言ってました」


「その辺りは私は少し違う意見さ。でも、それを話し合うのは楽しい。そしてこの世界では彼女の意見は通らない。地上世界の理の方がそうなっている。それでも長年の蓄積でたまに暴走するオートマタがいるからね、そういうのは冥界へと連れて行ってる。そこで調べて魂があるようなら神界にあげている」


「えーと?」


「オートマタに魂は宿らない。気持ちよく使えないと意味がないからそう決まった。実は小さな神が誕生する事は人界には知らされてない」


「はあ」


「これが決まった時に彼女がここを出て行ったのは、許せなかったのだろう。神界でもこれは差別だとか区別だとか色々と言われているが、論争が終わる事はない」


 どうやら故郷を離れないとならないくらい深刻な程に意見が違ったらしい。神界に入れている魂あるロボットやら機械、インテリジェンスアイテムは人と同じ地位にはこの世界では立てない。人を支える為にだけ存在すると言う事だ。


「悪い事じゃないよ。彼らは愛おしい存在さ。だが、人の体には馴染めないなら、使役される物として存在するのと同じだ」


「良く分かりません」


 いや、この世界での基準という事か……。答えてから気が付いた。それにこの人もスフォラの事は嬉しそうな顔をしたのに、本心ではホムンクルスやらオートマタが人の上に立つ事を恐れている。苦い感情を表し、魂のエネルギーを使う事に不快感を覚えるのか顔をしかめている。無意識で拒絶をしている感じだ。だから(・・・)、機械部分に気が流れてないのだと気が付いた。


「彼らの魂が生まれ変わりで人の体に入れないということは、我々とは全く違う存在だということだよ」


 スフォラは僕の体を動かしていたし、僕は分体に入り込んで動いていた。全然問題ないはずだ。それに、スフォラは機械の体にとても誇りを持っているから、人に生まれ変わる事は望まないと思う。この人の話とギャップを感じた。


「なんだか進化を妨げてる気がします。もっと夢を追っても良い気がするんですけど」


「どういう意味だ?」


 真剣に意味が分からないという顔だ。


「え、と、三完種はもっと活躍しますよ?」


 これから闘神にだってなるに違いないのだ。


「そうかい? それについては私も嬉しいよ」


 にっこりと微笑んで頭をポンポンと軽く叩かれた。子供扱いされてる気がするが、上手く言えない僕が悪い。多分、ここにいたらオートマタ達に未来はない。嫌な気分は拭えない。半霊半機械の研究をしていたマシュさんの気持ちが少しわかった。

 でもあの人なら、外の世界からここの常識を変えるだろう。この事には心配しなくていいと思う。既にその道をスフォラ達が開いている。

 ふと思ったけど、魂の力の発露を理で押さえられていても、ちゃんと神界に上がれているなら理が利いてないのでは? 理を消してしまうくらいのエネルギーが何処かで働いているはずだ。


「さあ着いたよ。ここが異世界間管理組合の息の掛かった観光案内所さ。今日はここの設備を使って今後の旅行の計画を立てると良いよ」


「ありがとうございます。組合と共通の小型飛行機の免許はあると聞いているので、それに乗って回ってみます」


「どう致しまして。こっちも外の客に付けば外のエネルギーが少し手に入るからね。大歓迎さ。何かあったら連絡くれると良いよ」


 手を挙げてお別れをしてベネットさんが戻って行った。


「何か気に触った事を言ったのか?」


 ボスが彼がいなくなってから瞬きして聞いて来た。喋っているつもりだと思う……。良いんだ、些細な事だから……。


「うん、ちょっと怒らせたね」


 スフォラと獣守に会って動揺してたらしいから、様子を見て欲しいとは言われていた。予定では今日は彼にこの辺りを案内してもらうはずだったんだけどな。表情に出ないからちくちくと針で刺す様な気で気が付いた。途中から気まずかった。


「さっきの会話をそのまま映像にしといたから送っておくよ」


「微妙な雰囲気はどう言うのかが分からねぇぜ」


 その後、僕達は観光案内所で登録をして宿泊施設と観光場所を決め、主な観光場所を予約した。

 人界に向かうのも許可が一々必要なので、観光案内所に全部やって貰うのだ。各神々にお伺いを立てるのは面倒なので観光案内に全部一括でやって貰うのが一番簡単だし、許可証を発行してもらう必要がある。

 地上で通用する身分証明書も作ってもらえるし、色々と便宜を図ってもらわないとならない。煩雑な手続きは丸投げ出来るのは嬉しい。神界に入るまでは異世界間管理組合の管理員なら問題なく入れるので、神界は割と観光客が多い。宇宙空間ごと神界になっているのもすごいけど……。


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