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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
おぼろつきよ
103/225

 チャーリーのお仕事 8 & 9

チャーリーのお仕事はこの編では終わりになると思います。8、9合わせて7000文字以上あります。


8は重複していますので読み飛ばして下さい。間違いですが最後まで書き終えるように願掛けに、そして記念においておきます。6/12

 ◯ ケース8


「生前のアキがずっと、異世界間管理組合のお仕事としてやっていた魔法効果の付加を付けるお仕事が、我々に回ってきました」


 今日の議題を上げました。獣守の殆どがみかんの部屋に集まって会議が行われています。我々の原点はこの部屋です。マリーもマシュもここで体を創って、ピアから魂を受ける儀式も成長の欠片を頂く時もここでなされますから。雲の会議室はゆっくりと上昇し風に乗って部屋の中を漂い始めました。


「レイの意向ですか?」


 周りに集まった獣守達は思い思いに雲のソファーに座っています。


「そのようです。人材派遣の人材にいるかどうかをまずは探します。柔軟で精密にそして美しさを上げる魔法の効果付けの出来る人材を発掘します」


 皆の視線に頷いて答えます。そして重要なミッションが立ち上がりました。異世界間管理組合の方では重ね付けの効果が出にくかっったのです。なので、効果の重ね賭けの出来る人材である事も追加で伝えなくてはなりません。


「我々がするのではないのですか?」


 クシュリーがこちらを見ています。

 雲上での会議は空の海にいるイルカの群れとすれ違いました。メレディーナ神の眷属です。イルカに近い姿をしていますが、人型にもなる精霊です。空の海の中は息が出来る様になっていて、水も重さを感じません。水圧が最低限まで下げられて空を泳ぐのも飛ぶのも変わりない仕様になっています。波模様のが光を複雑に反射させて部屋中が幻想的な光の演出がなされています。


「発掘は難しいと思われますので、見つかるまでは我々が受け持ちます」


 頷いていますので納得したようです。眷属である我々も重ねがけは難しいですが出来なくはありません。

 会議の終了後は雲の会議室は雨となって下の植物に降り、綺麗な円形虹が掛かりました。今回は副虹です。きっと良い事が起きます。



 暫くしてから上がった報告に、ヨォシーの名前が入っているのを見つけて溜息を付いてしまいました。結局こちらで探している基準を全てクリア出来たのはヨォシーくらいでした。


「何人かに分ければ出来てますが、あのクオリティーに達するのはヨォシーの魔法しか無いですね……」


 ビクトゥームが新しいお茶を入れてくれています。バニラの香りの砂糖を追加しているのが見えました。ルイボスティーに似た味の綺麗な薔薇色のお茶との相性は完璧です。ピアも気に入るに違いありません。


「数人に分けるとコストが掛かりすぎます。特に霧の魔法が出来る人材は揃っているはずですが、何故か湿度調節の魔法が出来ないようです。靴下に付けるのを嫌がるというか気持ちが入らないようですね。更に温度も快適にする為に重ねがけをすると前の魔法効果を邪魔する始末……」


「確かに我々がやっても難しい魔法ではありますが。彼らは生産には向いていないのでしょうか?」


 今回の基準は厳しかったのは分かるのですが、これほどことごとく落ちてしまうのはどういう事なのでしょうか……。


「彼らはいわばエリートです。戦いに特化しているのかもしれませんね」


「ではまだこちらに来ていない死神の巣の中にいる、落ちこぼれと言われる方々の中に才能を持った人がいるかもしれないという事ですね?」


「人材発掘は続けましょう。巣の中に人材派遣のポスターを貼ってもらうのも良いですね。彼らに協力をしてもらいましょう」


 メッセージが届いたようです。獣守である自分は脳内でそれを読んで処理出来るのですが、今回はピアからのメッセージです。しっかりと疑似画面を広げて読みました。

 チョコレートの臭いの実を神域で発見したと書かれています。妖精達には人気がないらしいのですが、妖獣達には人気があるらしいので食べれるみたいだと書かれています。


「実が大きいからどうやって持って帰ったら良いか迷うと書かれています。鳥の姿なのでしょうか?」


「うっかりさんですからそうなのでは? 収納魔法も忘れていそうですね」


 人の姿でも持ち帰れないか聞いてみたら、興奮して忘れてたよ、ありがとうと返事が来ました。全員が微笑ましい顔をしています。少々生暖かい感じが混じっているのは仕方ないでしょう。


「熱帯の植物も出ているのですか?」


「どうもそのようですね。気温平均が三十度近い場所もあるようですから、その近場では無いでしょうか?」


 ピアの神域は地図が役に立ちません。捩れた空間は移動を繰り返し、影響を与えながら次々と入れ替わっているからです。新種が多いのはそのせいでしょう。次々と新しい種が生まれています。


「雪原も発見していたはずですし、水の世界も充実して海もその内に出来そうな勢いですね……」


「何でも外に持ち出せば良いという訳でもないですから、ちゃんと見極めないとならないですね」


「神域の物は、加工した物の持ち出しに変更していますから大丈夫でしょう」


「カカオの実に近いようなら良い事です。カフェには必須ですから」


 ピアが持ち帰ったのはチョコレートの香りの猛毒の実でした。妖獣も猛毒を食べれる程の耐性を保つ特定の妖獣のみが食べれる特殊な物でした。マシュが喜んでいましたが、毒の実が畑になるなんてと舞桜(ピア)はがっくりしています。今日はこの後、神殿にお仕事に行くようですので舞桜のお姿です。


「舞桜、毒は薬にもなることが多いのですから落込まないで?」


「そうだったね。ガリェンツリー世界では資源になってたから、マシュさんに任せたら大丈夫だよね」


「ええ、大丈夫ですよ」


 涙目で頷くので、涙を拭いてあげてお茶を入れにキッチンに入りました。実は口に入れれば毒ですが香りに関しては別の結果があるのです。ですが、言わない方が良いでしょう。精神集中やら、リラックスの効果はよいですが、カカオにはない効果もあるみたいで……暗示にかけ易くなるというのです。

 呪術の補助にはかなり良いとか。火を通すとカカオとは違う甘い香りで惑わせるようなそんな危険な物が出来上がります。マシュが更に幻覚作用の物とあわせて何やら創っています。


「でも借金も返せてるし、今の事業を拡大するのはしなくていいと思うんだ」


 どうやら資源を溜める方向に舵を切るようです。入れた手のお茶を渡してあげれば微笑んで受け取ってくれました。リフレッシュ出来る香りの効果で気分も晴れたようです。


「そうですね。レイもそのように仰っていました。縮小するのも好い手だと」


「そっか」


 ゆっくりと頷いて、自分の中で納得をしているようです。


「みかんファームの資源を使った物は随分出ましたし、しばらくは注文はないと思います。顧客の方も会員として紹介者のみの受付としては如何でしょうか?」


 増えてきた顧客リストを見ながらこのままの規模で回すとなると……計算上ではまだ余裕はあるのですが縮小というのならこのまま閉じた方が良さそうです。


「そうだね。顧客の生活スタイルに合わせたファッションコーディネイトは随分評判は良いけど、大人数を抱えると不備も出るから、今ぐらいで押さえるのが良いよね」


 舞桜の後ろ髪を編み込んでまとめています。適度な張りと艶のある髪はまとめるよりも下ろしておいた方が綺麗ですが、お仕事中は邪魔になる様なので、まとめた方が良い様なのです。残念です……。最後にリボンを飾ってお仕事の準備は完了です。


「はい。メシューエ神の様に、屋敷まですべてを任せて頂けると非常にやりがいが出ます。ですが、やはり大人数を抱える事は無理がでます。今のお客様にも迷惑がかかりますし、このクオリティーを維持するのは難しくなります」


 リストを見ながらこれ以上の管理は、今の規模を維持するなら難しいと判断を伝えます。ピアは微笑んで今の顧客を満足させて行こうと微笑みを浮かべました。


「顧客の趣味はこれまでのデーターで分かっているし、家紋やら紋章なんかのシンボルやらエンブレムを入れるサービスはかなり喜んでたよね」


「闘神の多くはそういった物がお好みのようです」


 特に日本からの住民はその傾向が強いようです。


「死神に関しては何となくだけど、偽装用のグッズが好みじゃないかな?」


 舞桜の提案に嬉しくなります。既にある物での提案なので改良を加えるだけでいけそうです。


「一度、試してみますか?」


「うーん、髪色を弄る程度のはみんな持ってるよね……」


「人材派遣での仕事で必要な方に、魔術服の変身セットのレンタルというのは如何でしょう?」


 それならば我々の変身セットが役に立ちますからね。


「あ、良いね。それならこっちで把握出来るし、無くしたとか破損した場合の取り決めをすればいけるよね」


「はい。レンタル中に無くしたり、奪われたり、登録した本人以外が使用した場合は破損する様に手を打つ事も出来ますし、工夫は出来ます」


 地上世界に向かう為の必要グッズレンタルセットを、外の世界用に揃えるのもありかもしれません。必要なサービスを絞る必要がありそうですが、何とかなるでしょう。


「すごいね」


「技術に関してはお任せ下さい」


「頼もしいよ。ありがとう」


 舞桜が微笑んでいます。早速会議になりそうですね。





 ◯ ケース9


 今日は休日です。同じく休日のビクトゥームと一緒にお出かけです。場所はアストリュー世界聖域です。獣守達は紫月に許可を得ていますし、護衛もしている関係で聖域内は行き来が自由です。

 最も、私達の存在は精霊に近いと言われています。機械でありながらも魔法を使い夢界を行き来し、半分は妖精と精霊の夢から誕生した存在だからです。与えられた身体がぬいぐるみのままなら、これほど早く成長は無かったと言われています。


「小鳥のモチーフが最近は増えましたね」


 神殿の中だけでもピアの姿をかたどったアクセサリーが一番人気です。


「当然です。ピアは大人気です」


「それもそうですね」


 レイとメレディーナ神があれだけお膳立てしたのです。流行らない訳がありません。勿論、ヘッドゥガーン世界にもこれは広がっていますし、そこから各異界にも愛の鳥の存在は知れ渡っています。

 マーロトーン世界なんて慌てて正式な訪問を、管理神自ら申し出るという前代未聞の事まで起きたと聞いています。勿論他もです。

 星始祭は盛り上がりを見せ、随分と正式な訪問をする管理神等が集まったと聞きます。ここ、アストリュー世界も一流の世界と認められたという事です。本心はピアのグッズ目当てが殆どですけど……優遇を求めて随分無茶をいう神々も多かったようです。


「ピアを連れてきて欲しいとか招待が掛かっているようですけど……」


 隣を飛行する不安そうなビクトゥームの顔を見れば心配なのが分かります。目的地の新しい聖域に到着しました。月の神殿に近い場所です。カジオイドで作った魔道飛行機を分解します。残った魔法力BOの動力を収納スペースに仕舞えば、聖域の入口を通り抜けました。

 今日はこの新しい動力の試運転でもあります。安定感はかなり良くなっています。


「そう言えばそんな事を聞きました。リーシャンが戻ってくるまでは無いでしょう?」


「ええ。正式な護衛としてのお面状を頂いて来た方がいいですから。ダラシィーも既に向かいましたし、続々と資格は取り揃えてますから」


「ぬいぐるみの擬態は相手を油断させるには良いかもしれません。ピアの子供の姿には違和感無くそばにいられるので出来ればあの姿のままそばにいられれば良いのですけど」


「そうですね。ピアに威圧感を与えなくていいですし、敵の目を欺けます。それに……」


 なんだかんだ言って私達の初期の姿の方が懐いてくれるのです。人型だと遠慮してかあまり抱きついてくれないし、甘えてこないのです。先入観のせいかもしれませんが、この事は譲れません。


 聖域の入口は神殿の近くの公園の中です。入口を管理する神官と神殿の神の兵士がいます。軽く挨拶をし、許可を受けている証明を見せて中へと入ります。

 人避けの結界を抜ければそこは聖域です。精霊界との境目です。この北に位置する聖域は精霊界とは直接は繋がっていませんが、次元が重なっているのは間違いありません。ほんのちょっとした事で彼方側に行ってしまうのです。妖精達が界をくぐり抜けた後を通ってしまったりしただけで、精霊界に迷い込むのです。

 それだけ近くに精霊界が引き寄せられている証拠ですが、それだけに気をつけないとなりません。

 精霊の案内が必要なのは精霊界から帰ってくる為に必要なのです。私達は自力で帰って来れます。今は神域となった聖域で育った私達です。こんなくらいは造作もありません。


「聖樹も人気ですね。葉のモチーフや聖樹の姿のモチーフも多い気がします」


 見えてきた聖樹カシガナの姿で思い出したのかビクトゥームが目を細めながら前にある樹を見て言っています。紫のグラデーションで出来た美しい樹です。少し青みが強いようですが間違いなく聖樹です。


「実を取るのは妖精達か精霊ぐらいしか許可が無いですから。だからこそ聖域にはああやって見張りが付いているし、許可証が必要になってますからね」


 勿論私達も許可されています。


「紫月のお披露目はやらないのですか?」


「『妙旋風』の歌い手をしているというのは伏せてますね。月夜神の名を出したいようですし、レイに何かお考えがあるのだと思いますが、そこまでは……」


 そちらは反勢力の妨害のせいで上手くいってないようですけど……。聖域の散歩は私の自由研究も含めています。あちこちに生えている植物が視界に入る度に新種ではないか見定めています。神域や聖域の新種を集めて傾向を探っています。勿論、動物や妖精に精霊達も含めてです。そう言う私達獣守も新種ですが……。


「やはり身を守る為に伏せているのでしょうか。それならピアいえ、アキの事も伏せなかったのは何故なんでしょう」


 ビクトゥームは不思議がっています。これは早く生まれた私の方が事情は詳しいです。


「死神ですからね、あれでも。矢面に立つならアキの方だと判断なさったのだと思います」


「聖樹としての紫月は伏せられたままなのですね……」


 どうやらその事に気を揉んでいるようです。


「それでも、信仰はかなり集まっているのではないでしょうか。人々の生活を支えていますし、カシガナ聖樹の使われた物が溢れています」


「そうですね。大量に取れるようになった今は種を抜いての実の販売も始まってますし、魔法効果の応用が広いから扱いの講習も盛んです」


「講習を義務付けて悪用しないように扱いの注意を広めたのは良い事です。新しい使い方が開発された方がここも発展しますからね」


 学校でも教育をしていると聞いていますし、教科書にも載っています。


「使い方を新しく見つけた場合は報告すれば開発費がもらえるようですし。活気は出ましたね」


「それだからこそ聖樹の種は外の世界に持ち出しは許可されません」


「そうですね。それだけは紫月も許しませんね。ピアだけです」


 ナリシニアデレート世界にしかまだ進出はしてませんが、彼の世界ではまた違ったお姿を見せているとか。


「そう言えばこの前、不逞の輩が外に持ち出そうとしたとか」


「それは聞きました。日本の方だったとか」


「最近は日本の方の行動が目立っていますね」


「そうですね。良い方向ではなく、犯罪に偏るのは良くないですね」


「有用な物を欲しいと思うのは仕方無いですが、盗みは良くないですし、この前の痴漢騒動も覚めやらないこの時期に……紫月が怒りそうです」


「メレディーナ神は水の世界での聖域を担っていますが、地上は紫月の担当です。人の活動範囲です。怒らせすぎると出入りをさせてもらえなくなります」


 董佳様と怜佳様は対策を講じていらっしゃるでしょうか。珍しく空中を漂う花のような姿を見ながら新種の妖精認定を下しました。仲間がいるのか尋ねてみましょう。これも新しい出会いです。お友達になれるでしょうか。


 聖域の散策と趣味の採取も終わり、家に戻るとリーシャンが戻っていました。私の次に出来た可愛い弟分です。とっくに護衛の資格は取れていたのに帰ってこず、教官の資格まで取ると連絡が来たのを覚えています。お陰で一年半帰ってきませんでした。お帰りなさいパーティーが開かれました。

 二週間後には私も護衛の資格を取りに行く事になりました。弁護の資格を変わりに私は取っておいたので舞桜の役に立てました。その事をしっかりと伝えておきました。


「何を訴えたの?」


 興味深そうに首を傾げています。最近の出来事なのでリーシャンは知らないのは当然です。生まれ変わりをしたとか大きな事は伝えれてましたが、こういった事は情報交換しないとなりません。しっかりと引き継ぎをしないとダメですね。

 三度目の死亡や悪魔討伐での活躍、そして夢魔の罠に嵌ったり痴漢に会ったり賞金首にされたりと毎度お騒がせな冒険を映像付きで見せておきました。勿論、痴漢三人組に関しての処罰はしっかりとやり遂げるように念を押しておきました。


「腹筋は倍のメニューでも良いでしょう。そろそろ慣れる頃ですよね?」


 鋭い視線が返ってきました。それに負けない視線を返しておきます。


「少しだけ引き締まったようですね……電気風呂の出力はもう少々上げても良いでしょう」


 不敵な笑いが口の端に浮かびました。同士である確認は出来ましたし、彼はこれからが復讐の時間です。しっかりとやってくれるでしょう。これで心置きなく出発が出来るというものです。


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