ゆみ子とゆり子
文の構成等苦手な面もあり、矛盾点もあるとおもいますが広いお心で読んで頂ければ幸いです。
ゆみ子、嗚呼、本当に残念だわ。
私の片割れ。双子の妹。
ゆみ子、嗚呼、なんて可哀想。
思えば私達ずっと一緒だったわね。ご飯を食べる時も、お風呂に入る時も、学校へ行くのだって一緒だったわ。片時も離れたことなんてなかったの。
ゆみ子、嗚呼、私も辛いのよ。
ゆみ子は私と違って頭も良くて、運動もできて、とても素敵な女性だったわ。唯一私の取り柄といったら貴方と同じこの可愛らしい顔くらいよ。でもゆみ子の方が化粧も上手で、黒い長い髪もよく似合っていたわね。すらっとした手足も魅力的だったわ。
ゆみ子、嗚呼、怖いの。
私は良く周りと比べられていたわ。ゆみ子はなんでもできるいい子。ゆり子は顔だけのおバカさん、ってね。でも知ってるのよ?貴方には沢山‘奴隷’がいて、悪いことをしたら私のせいにしたのよね。
ゆみ子、嗚呼、そんな顔しないで。
ゆみ子と私が高校へあがって2年ほどたった頃だったかしら。私に素敵な彼が出来たの覚えてる?貴方は祝福してくれたわね。とても嬉しかったわ。
ゆみ子、嗚呼、ごめんなさいね。
そんな彼を貴方は私から奪ったのよね。彼は運動部だったわ。私は帰宅部。ゆみ子は美術部だったわね。私と彼は帰宅の時間が合わなかった。だから貴方はその隙を狙って彼に近づいたのよね。そして貴方と彼は付き合った。その次の日に彼は私に言ったの。同じ顔でも中身が素敵なのはゆみ子ちゃんだった。君は最低だ、ゆみ子ちゃんに僻んでいじめるなんてってね。ゆみ子にそんなことした覚えなんてこれっぽっちもないのに。
ゆみ子、嗚呼、手が震えるわ。
私が看護師になって貴方は秘書になったのよね。美人で良く働く秘書。お母さんもお父さんも鼻が高いと言っていたわ。でも、昔は私が全て罪を背負ってあげてたけどお互い離れ離れになって泥をかぶってくれる人がいなくなって次第にボロが出るようになったのよね。それで貴方は秘書は私には合わないといってしばらくして専門学校をでて私と同じ職場についたのよね。これでまた私が泥をかぶってくれるって。
ゆみ子、嗚呼、両親が泣くわね。
私は貴方の思い通り、ゆみ子の失敗は全て私の失敗となった。それでも私はまだ幸せだったの。大切な人が出来て、お腹に大切な命があったから。なんだって乗り越えられる、そう思ったわ。
ゆみ子、嗚呼、とても悲しいわ。
あの日、私は妊娠6ヶ月。検査のために産婦人科に行ったのよね。その帰りに、貴方と会った。帰り道に長い長い階段があるのよね。私は遠回りして緩やかな道を通りましょうと言ったの。でも貴方は私が支えるから大丈夫よ、はやく帰って手料理を作ってあげるわ。そう言って私を支えて階段を一歩降りたときだった。背中を押される感覚、気持ちの悪い浮遊感、数秒後の激痛。
ゆみ子、嗚呼、怯えないで。
あの後私は意識不明の重体。やっと目を覚ましたら、お腹の子はどこにもいなかった。夫も父も母も不幸な事故だったと言ったわ。私は確かにゆみ子に押されて階段から落ちたはずなのに。貴方はその後私に言ったはね、産休に入られたら困る、私は悪くない。あんたがバカだったから私に押されたのよってね。唖然としてしまったわ。そんなことのためにお腹の子は死んでしまったなんて。ねえ、ゆみ子。私は貴方を一生許さないわ。
ゆみ子、さよなら。
安心して。貴方がいなくてももう誰も悲しまないわ。私が全て証拠を掴んだの。貴方の今までしたこと全部よ。写真だってあるわ。これで貴方はのけ者よ。まあ全ては、私がわざわざ手をくだしたかったからなのだけれど。だって牢屋の中で生きててもいずれ出て来てしまうわ。貴方の人生全てをこの手で奪いたいのよ。そして私は貴方に奪われた27年を取り戻したいの。だから殺人犯になんてまだなれないわ。大丈夫、私がこの証拠を見せて、自殺したってことにすればいいの。こんなことしたくはないけれど、許してね、ゆみ子。
ゆみ子、嗚呼、とても綺麗な顔。素敵よ。本当に私とそっくりの顔ね。どうして自殺なんかしたのかしら?って皆言うわ。
貴方はやっぱり顔は同じでも黒より綺麗な栗色の髪の方がお似合いね。その綺麗な琥珀色の瞳を見せることももうないのね。
ゆみ子、嗚呼、本当に残念。
まだあの感触が忘れられないの。貴方を突き刺したあの感覚。崩れ落ちる貴方の体、ドロドロとした手をつたう血液、速い鼓動、乱れた息。
ゆみ子、嗚呼、ゆみ子。どうか安らかに眠って頂戴。
「おやすみ、ゆみ子。…いや、私を殺し損ねたゆり子。」
この度はゐづみ野の初の短編を読んでいただきありがとうございました。
文字書きはやはり大変だなあと改めて痛感致しております。この作品は人から見ればベタな作品かと思われますが、初投稿ということで大目に見てもらえればと思います。
短編中心でこれからも更新していきたいのですが、次は恋愛ものとか楽しそうですね。
拙い文章ではありますがこれからもお付き合い頂けたら幸いでございます。