表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/200

三人の英雄+一匹

 翌日、生憎と空模様はあまり芳しくなく、分厚く垂れこめた灰色の雲が見上げた王都からの空一面を覆っていて、お世辞にも獣人族の解放を宣言するいい日和だとは言えない天気だ。


 未だに王都内の不死者(アンデッド)掃討が完了していない事で第一街壁内では多くの人々が街路上に設営した天幕などで生活しており、決して快適とは言い難い生活を強いられている。

 しかし、人々の顔には今日の空のように雲が重く圧し掛かるような暗い雰囲気は薄い。


 既に昨日の内に王都外に蔓延っていた不死者(アンデッド)の大部分が掃討され、今は第二街壁内の──新市街方面に潜伏している不死者(アンデッド)の捜索と殲滅している状況だという事が人々の話題に上がっており、今はいつ頃に街へと戻れるかという話が各所で聞こえてきていた。


 中には不死者(アンデッド)捜索の志願をする住民達も多くいるようで、訪れた時に見た鬱屈したような雰囲気は今は無く、どちらかと言えば希望を見出した活気に包まれている。


 彼らの語る今後の王都の復興の話題の中に時折、獣人族の解放の噂が囁かれていたが、これは情報が漏れたのではなく、あらかじめ街に噂を流しておいたのだとザハルは語っていた。


 何故そのような措置が取られたのか分からず頭を捻っていたのだが、彼はそれにも丁寧な回答を寄越して、その事情を明かしてくれた。


「私達が王都救援に駆けつける前、王都では戦時対応の人手が不足して、それを補う為にヒルク教に隠れて裏で運用していた獣人奴隷をそれに充てていたそうだ。本来なら枢機卿の目に留まった獣人族は引き渡しが言い渡されるのだろうが、今回の首謀者であったヒルク教に従う道理などない」


 そう言って一旦言葉を切ったザハルは、不快げな表情を隠す事無く眉を顰めた。


「だが、そうなると今度は獣人側これを機に王都からの逃亡を図ろうとするだろう。もしかしたら、昨日の戦闘が終息した隙を見て、既に王都を離れた獣人達もいるかも知れない。噂で先に情報を流しておけば、無暗に先走って王都を出る者の数を少なくできるだろうとの国王の御心だ」


 彼のその説明を受けながら、自分は成程と呟いて頷く。


 王都の壁外の不死者(アンデッド)はあらかた片付いている、獣人族の身体能力なら第一街壁を越えて、新市街を抜けて王都の外に出るのは簡単かも知れない。

 ただ、奴隷時の環境によってあまり体力が残されていなかった場合、それは危険な行為に変わる。


 今、自分とアリアン、チヨメとポンタに付き添いとしてザハルを含めた一行が居る場所は、王城傍に建てられた迎賓館のような屋敷の二階におり、その窓辺から屋敷前の庭を見下ろしていた。

 普段このような王城の敷地内に庶民が立ち入る事は無いそうだが、今日は目の前に広がる大きな庭に多くの獣人族の人々が集められていた。


 かなり数が多いように見えるが、それでも千人は超えない程度だろうと、ザハルは語った。


 一応先触れなどを街中へとやって自主的に足を運んだ者達だけなので、街中に残っている獣人族も当然いるだろうが、今日は彼らの目や耳にこの国の国王から直接の宣言を伝える事が目的だ。


 そうすれば後は彼らがその宣言を仲間内に広めてくれる──という事らしい。


 チヨメは先程から庭の同胞達の姿を眺めながら、何やら感慨に耽っているように見える。

 そんな彼女を横目にして、ザハルが徐に昨日の事を再びに口にした。


「チヨメ殿、昨日はニーナが御不快な思いをさせて申し訳がなかった」


 彼の改めての謝罪だったが、チヨメは特に表情を変える事無く我関せずといった風で、アリアンの視線を受けて応対は自分の役目となった。


「チヨメ殿もそれ程気にしておらぬ様子、ザハル殿もあまり気にされるな。……ところで、そのニーナ殿だが、今日は姿を見ぬが、リィル王女の所であるか?」


 そう言って話題を逸らす為に彼女の居場所を尋ねると、ザハルは苦笑を浮かべて後頭を掻いた。


「彼女はあの後、リィル姫様に折檻部屋に入れられて、今も反省中だ……」


 その彼の話に、隣で聞いていた二人から小さく吹き出す声が聞えた。

 視線を二人に向けるが、彼女達は揃って視線を逸らせて明後日の方へと顔を向ける。


「……そうか、それはニーナ殿も大変であるな」


 自分は視線を前へと戻しながら、年端もいかないリィル王女が鞭を持って、あの気の強そうな女騎士であるニーナに折檻している場面を想像する。


 ニーナが鞭で打たれ「くっ、申し訳ありません!」と顔を赤らめて謝罪している姿を思い浮かべるが、流石にこんな特殊性癖を目覚めさせるような行為ではないだろう。


 どちらにしろ、リィル王女に任せておけば問題はなさそうだと、ニーナの恥辱の折檻風景を心の中から追い出してザハルに相槌を打つ。


「そう言えば、ザハル殿は獣人族に対してあまり抵抗があるようには見えぬのだが?」


 その自分の問いに彼は、少し自嘲気味な笑みを漏らした。


「私はニーナのように貴族の出ではないのでね。村に暮らす子供の頃に、森で遊んでいて偶然会った同じ年頃の獣人族の友がいましてね、彼やその仲間には森で色々と助けられた事もあるのですよ……。私が彼らの恩に報いる為にできた事など、奴隷狩りの時や場所を漏らす程度でしたが」


 そう言ったザハルは、此方に羨望のような眼差しを向けて小さく会釈をした。


「そうであるか……」


 彼の話に出てきた獣人族の友、彼が今どうしているのかを問いたい気持ちはあるが、彼の先程の表情を見ると、あまり掘り起こすべき話題でもないのだろうと、曖昧に頷いて返した。


 やがて屋敷前の庭の隅にラッパらしき楽器を持った衛兵達が現れ、彼らが両端に整列すると(おもむろ)に手に持ったラッパを掲げて吹き鳴らし始めた。


 それを切っ掛けに今まで騒めいていた声が止み、人々の視線が一点に向かう。


 ファンファーレのような短い楽曲の演奏後、庭に張り出すようにして造られた屋敷の二階のバルコニーに衛兵を従えたアスパルフ国王が姿を現した。

 そして脇に控えていた衛兵の一人が大声で国王到着の口上を述べる。


「ノーザン王国国王、アスパルフ・ノーザン・ソウリア様、御来臨!」


 広々とした屋敷の中の庭に集まった獣人族のほとんどの者は国王を直接見た事はないのだろう、その口上にあれが国王かという言葉がそこかしこで囁かれていた。


 そんな中で、アスパルフ国王が徐にバルコニーの一番手前まで歩み寄ると、下階の庭に集まっていた獣人族の姿を見回すと、ややあってから国王が口を開いた。


「皆の者、今日ここに集ってくれた事に礼を述べよう。皆も知ってのとおり、つい先日まで我が国は未曽有の危機に立たされ、その存亡を占うは神のみぞ知るという状況にあって、其方ら獣人族の我が国への献身、まことに大義であった。この国を代表して余からも感謝の意を伝える」


 その国王の最初の労いの言葉に、獣人族達は互いに顔を見合わせた。

 人族の、それも国の頂点である国王が自らの言葉で獣人族に謝意を述べるなど、これまでに一度として無かった事であった為に、皆の顔には困惑の色が濃い。


 だが中には、その国王の言葉を苦々しげに顔を歪めて聞いている者達もいた。


 彼らにとって今更、国の危急の時にだけ施しと寛大さを見せて、獣人族の力を都合良く利用した狡猾な人族の王の言葉など信用ならない──などと考えているのかも知れない。


 しかし、そう考えている大多数は今回の招集は再び彼ら獣人族を拘束する為の罠だと断じて、この場に姿を現した者は極少数だった。


 加えて、周囲には武器を携行した衛兵が庭の外周に沿ってぐるりと取り囲んでいる事もあって、この場で国王の言葉に向かって唾を吐く者はいなかった。


「既に皆も噂で知っているだろうが、この王都を襲っていた無数の不死者(アンデッド)共は、その(ことごと)くが殲滅され、後は僅かな残党を残すのみとなった。それも間もなく撃ち滅ぼした暁には、再びこの王都に前以上の活気が戻る事であろうと余は確信している」


 人々の間に流れていた噂──不死者(アンデッド)のほぼ全てが討ち倒され、王都に迫っていた危機を回避したとの噂が、国王自らが肯定した事によって、小さくも確実な歓声が上がった。


「この今回の国の未曽有の危機に際し、我が娘リィルが使者となり他国より三者の英雄を招聘するに及び、()の者達はその力を如何無く発揮してくれたおかげで、余は今こうしてここに立つ事が出来ている。余はその者達に最大級の感謝と、その働きに応じた褒賞を与える事を約束した」


 アスパルフ国王のその話に、人々の騒めきが大きくなっていく。


 国王自身が、今回の事態を収めた者がたった三人の功績に因って成し遂げられたと公言した事により、人々は混乱したように頭を捻り始める。


 中には聞いていた国の危機がそれ程危ういものでは無く、腕の立つ三人程度の人数で解決するような事態に過ぎなかったのでは──と、そもそもの根底の大襲撃さえ疑い出す者もいた。

 しかし、それらの意見は戦時協力として働いていた際に、壁外に攻め寄せていた無数の不死者(アンデッド)の大群を目撃している多数の者達の証言からあっさりと否定されていた。


 他にも、何故その者達の活躍の報告を、わざわざ獣人族を集めて成されたのかという疑問なども出て、ますますその場に混沌とした予想やら推測やらが活発に交わされる。


 それにしても、言うに事欠いて三人の英雄とは大きく出たものだ。


 しかもリィル王女が使者に立ち、わざわざ呼び寄せた事になっている──たまたま雇入れた他種族の傭兵が事態を収拾してしまった、では国の体面状、恰好がつかない上に外聞も悪いとなれば多少の脚色は仕方がないのだろう。


 ただ、今この前庭に集まっているのは王国の全国民でもなければ、王都の全住民でもない。

 自主的に集まった数百名の獣人族という数は、言って見れば学校での全校生徒を集めた程度の数でしかない為、そこで英雄と呼ばれる事には若干の抵抗がある。


 かと言って、王都の全住民の前で同じような紹介をされるのも遠慮したい。


「彼の者達が余に願い出た褒賞の内容──それは、この国におけるエルフ族及び、獣人族の奴隷の即時解放。そして今後の正当な理由、罪過なく、両種族を奴隷として所有する事を禁じ、違反した者には相応の罰を以てこれの対処にあたる事。獣人族の罪状の規定は人族の法に準拠する形とする旨をここに約束し、宣言する!」


 そのアスパルフ国王の宣言の後、一瞬の静寂が訪れ、次の瞬間、人々の間に動揺したようなざわめきが一斉に起こるが国王は黙って彼らの様子をゆっくりと眺め渡す。


 今まで実しやかに街中で噂されていた奴隷解放、それが国王の口から宣言されたのだ、今までの彼らの処遇を考えれば簡単に信じられる話ではない。

 しかし、そこに解放の条件を国に突き付けた存在がいるとなれば話の印象は違ってくる。


 そしてそんな条件を国に提示した三者の存在に話題が移っていく。


「ではその三人の英雄を諸君らに紹介しよう! カナダ大森林よりエルフ族の騎士、アーク・ララトイア殿! 同じくエルフ族の戦士、アリアン・グレニス・ララトイア殿!」


 アスパルフ国王のその紹介の言葉に、自分とアリアンはバルコニーへと出て行き、国王の横に並んで前庭から此方を見上げる人々の前に立った。


 集まっていた人々は此方の姿を見て口々に何かを言い合っている。

 一応事前に打ち合わせをした通りの段取りなのだが、改めてこうして注目される居場所に立たされるというのは慣れないものがある。


 街中を歩けばいつも人目を集める事を考えれば、広場で人目を集めた程度の規模だが、国王の紹介の後に登場するというのが何とも居心地を悪くしている。

 人々の中には自分やアリアンをパルルモ枢機卿との戦いを見ている者もいたようで、そこかしこでその話題が上がっていた。


「人族の国の危機にエルフ族が手を貸したって、信じられるか?」


「おいおい、鎧被った奴は本当にエルフ族なのか? 鎧着たエルフなんて聞いた事もないぞ?」


 エルフ族が人族の国家の危機を救うために手を貸したという話を信じられず、そして自分の事を指して本当にエルフ族なのかを疑う者まで様々だ。


「しかもまだ派手な兜被ったままだ、顔見せない気なのか?」


「馬鹿だな、察してやれよ。英雄で顔を売らない奴なんていねぇよ。なら、素性を知られたくないか、二目と見られない顔のどちらかなんだろうよ」


 中には余計な気づかいを見せている者までいるが、鎧の中身は骸骨なので当たらずとも遠からず、といった所だろうか。


「そしてもう一人、ジンシン一族を代表して、チヨメ殿!」


 最後に出て来たチヨメはいつもと変わらない表情をしているが、忍び装束で口元を隠しているのは緊張を隠す為か、それとも忍者としての矜持なのか。

 そんなチヨメのアスパルフ国王の紹介に、集まった人々から一斉に驚きの声が上がった。


「今、ジンシン一族って言ったか?」


「まさか彼らがこの国まで来ていたのか!? オレ達は本当に解放されるのか!?」


 驚きと歓喜に沸く人々の中で口々に上がる“刃心(ジンシン)一族”の名前の効果に、改めて獣人族の中での知名度に驚かされる。


 チヨメはそんな人々の様子をじっと眺め渡しながら、自身の尻尾をゆらゆらと揺らす。

 しばらく活気に沸く人々を眺め終えたアスパルフ国王は、階下の衛兵に指示を送ると、再びラッパを持った衛兵がごく短い楽曲を吹き鳴らし、人々の注目を再度国王へと向けた。


「まずはこの王都の者達が解放されるが、諸都市での解放は今回の一件が片付いて後、順次の対応となる。また、チヨメ殿は今回解放された獣人族の中から新天地開拓の移住者を募ると事。詳しくは後日、街に触れを出すのでそちらで確認して欲しい。以上だ」


 アスパルフ国王の最期の言葉と共に衛兵から解散の号令が掛かると、屋敷から外へと出される中でも、人々は今回の話の内容に興奮冷めやらないといった面持ちで語り合っていた。


 そんな彼らを見送りながら、隣で同じくそれを眺めていたチヨメに話を振る。


「新天地への移住か……最初はどれくらいの人数を想定しているのだ? チヨメ殿」


「まずは五十人から百人程ですね……、開拓先の里はまだ十分に受け入れる用意がありませんから、過酷な環境でもやっていける男手が中心です」


 その彼女の答えに、アリアンが小さく肩を竦めて嘆息する。


「ますます、暑苦しい里になりそうね……」


 里の現状を思い起こすと、そろそろアリアンがあの里を訪れるのは危険な気がする。

 彼らがアリアンをどうにかできるとは思わないが、色々と辛抱堪らずに行動して彼女に返り討ちにあって大怪我をする可能性を考慮すべきではないだろうか。


 そんな事を考えていると、衛兵の一人が慌てた様子で国王の下へ駆け寄って来る姿が目に入った。

 それをザハルが逸早くに反応して止めると、その衛兵に用件を述べさせた。


「待て! 国王様の御前だ、先に用件を言え」


「はっ、それが、第一壁外にて隣国サルマ王国のブラニエ辺境伯様からの使者だという者達が来ておりまして、国王様との会談の場をブラニエ辺境伯様がお望みとの事です。如何致しましょうか?」


 その衛兵の報告を聞いていたアスパルフ国王は怪訝な顔をして前へと進み出た。


「待て、その者達は本当にブラニエ辺境伯の使者なのか?」


 国王からの直々の問い掛けに対して、衛兵はあっと小さく声を漏らして慌てて懐から一枚の書状を取り出すと、それを手前に立つザハルへと手渡した。


「申し訳ありません! その者達から辺境伯様よりの書状を預かっておりました事、失念しておりました! それと先程のご質問ですが、使者を名乗る者達は確かに辺境伯様の家紋を記した紋章旗を掲げておりました!」


 その衛兵の答えにザハルは頷きつつ書状を手に取り、そこ押された封蝋の紋を確認する。

 そんなやりとりを眺めていたアリアンが、何かに気付いた様子で此方に話を振ってきた。


「そう言えば、ここへ来る際に通った領地がサルマ王国だったんでしょ? あれの事じゃないの、ほら不死者(アンデッド)に襲われていた兵士の一団……」


 その彼女の言葉に自分も、そしてザハルもようやく思い出した。

 昨日、今日と目まぐるしい日々が続いていて、いつの間にか記憶の彼方だった。


 ザハルは書状を手にしたままアスパルフ国王の下へ足早に歩み寄ると、彼の耳元で小さくその時の状況を話して、持っていた書状を国王へと手渡して後ろへ下がった。


「……なんと、リィルがそのような指示を? ブラニエ領にも件の化け物が入り込んでいたのは、まさかリィルを追ってか、それとも別口なのか……。彼の辺境伯はそこらの蒙昧な貴族とは違う、リィルが領内を横切った事は既に見当がついているのだろうが。何が目的か……」


 アスパルフ国王はそう言って書状の封蝋をその場で開封し、中の内容に素早く目を通す。

 だがその表情がすぐに驚きの顔に変わる。


「ブラニエ辺境伯はなんと?」


 その国王の驚きにようにザハルは思わず問い掛けていた。

 ややあって、アスパルフ国王は書状に落としていた視線を上げて眉根を寄せた。


「何やら向こうでも危急の事態が迫っているのかも知れん……。時節の挨拶も無く、ただ私との非公式の会談の申し込み、それだけが書き記されていた。手順の一切を無視してのこれはまるで……」


 そこまで言って一旦言葉を切った国王は、報告に来ていた衛兵に視線を向けた。


「ブラニエ辺境伯に今すぐ返事を出す。アーク殿らにはすまないが、今日はこれで失礼する」


 そう言ってアスパルフ国王は、周囲の供回りなどを連れて足早に屋敷を出て行く。


「ふむ、何やらきな臭くなってきた気がするな……」


「きゅん?」


 足音高く屋敷から遠ざかる国王の背中を見送り、そんな呟きを漏らすと足元でポンタが不思議そうな顔で首を傾げる。


 アリアンは特に思うところはないのか、そんなポンタの尻尾を黙って撫でていた。

 しかしチヨメは自分と同じ、何か言い知れぬ気配を感じてか、頭部の猫耳を真っ直ぐに立てた。


「ボクも同感です……」


 自分とチヨメが見上げた王都の空は先程よりも一層その分厚さを増して、まるで全てを押し潰すかのように低く垂れこめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ