エッセイ「回転寿司」
掲載日:2014/09/23
2月の中旬、中谷美枝子と、小さな回転寿司屋に入った。
ところが、コンベアーには寿司など廻っていない。欲しいネタは店員に注文しなくてはならなかった。
「へい、らっしゃーい! なんでも注文してくださいよ」板前が威勢よく声をかける。
わたしは壁に並んだネタの札を見ながら、「えーと、シャコ」
すると、店員は肩をすくめて言うのだった。
「今の時期、シャコは獲れないんですよ」
「……じゃあ、クルマエビをひとつ」
「クルマエビなんて、冷凍ものしかないですよ」ばかにしたような顔をする。
「じゃあ、スズキでいいです」
「スズキは夏の魚ですぜ、お客さん」
わたしはムッとして
「じゃあ、何があんのさっ?」
「焼肉、プリンに茶碗蒸し。色々ありますぜ」店員はしれっと答える。
「寿司でもなんでもないじゃんっ!」
ついに癇癪を起こしたわたしは、そう叫ぶと、中谷が止めるのも聞かず、そのまま店を飛び出した。
こんな店、金輪際来てやるものかっ。




