プロローグ
ジャンルは一応異能バトル。GA一次落ち。構成にかなり失敗しています。ロリ&エロが多めでグロもありますが、ラノベであれば『五年二組の吸血鬼』なんかもあるので問題ないでしょう。……多分。
「人生を……変えてみたくはないかい?」
吐く息も白い十二月の夜の路上のことである。凱胴辰也は目の前に突然現れた人物の言葉に、顔を上げて固まった。
黒いフードを頭からすっぽりとかぶり、身長は辰也よりやや低いくらいで背の低い男だとも背の高い女だともいえる。声も男とも女ともつかない中性的なもので、顔はフードの影になっていてよくわからない。頭のてっぺんから爪先まで、徹頭徹尾怪しい人物だった。
「えっと……しゅ、宗教ですか……? ごめんなさい、そういうのはちょっと……」
しどろもどろになりながら辰也は言う。辰也はいかにも気弱そうに見えるのか、たまにこういうことがあるのだった。外見通り辰也はそんなに気が強い方ではないが、さすがに断る。断らないと、さらに大勢の知らない人と対面しなければならなくなるではないか。
「ハハッ、いきなりすぎて戸惑うのも無理はないね。でも、残念ながら宗教の勧誘ではないんだ。ただ、君に渡したいものがある。それだけだよ」
そう言って黒いフードの人物は、辰也の前に何やら黒い固まりを差し出した。辰也は差し出された物体を見て、ヒッと小さく声をあげた。
黒い、爬虫類の鱗で覆われたような拳大のそれは、規則的に収縮を繰り返していた。まるで、心臓が鼓動を刻むかのように。
「『魔王の心臓』──これを受け取ることで、君は神にも悪魔にもなれる」
「魔王の……心臓?」
辰也は目の前の人物の言葉を復唱し、手元で力強く動き続ける『魔王の心臓』を覗き込む。フードの奥で、見えないはずの顔がにやりと笑ったのを、辰也ははっきりと感じた。