物語は世界中に飛んでくれる
「今日も身体が
おっかし~♪」
変なリズムに乗せて
私か 口ずさむ
その通り
今日も身体がおかしいから
寝たきり
歩ける身体じゃない
本来なら
中学生なのかな?
・・・あ~ぁ
学校に行きたかったな
普通に勉強して
普通に恋をして
普通に
青春して
そんな
当たり前が
欲しかっただけなのに
「世界はなんて
理不尽なんでしょうね」
この言葉ばかり
出て来る
もう
理不尽には慣れてしまった
それだけ
理不尽漬けの人生だ
そんなある日
母が訪問看護の
話をしてきた
・・・う~ん
身体が悪いんだけど
まともに
会話ができるのかな?
まあ
話す事には飢えてるし
案外
気が紛れるかも?
そうやって
訪問看護師さんが
来てくれた
玄関まで
迎えに行ける
身体じゃないので
母が
その人を
私の部屋に
招き入れる
「・・・・・え?」
私は驚いた
「(・・・男の人じゃん)」
てっきり
女性だと思った
いやいやいや!
お母さん!?
男性だったら言って!?
っていうか!
私の部屋に!
男の人が居る!!
ちらりと
その人を見る
20代前半くらい?
・・・え?
・・・若いよね?
いやいやいや!
お母さん!?
寝たきりだし!
男性免疫ないんだけど!?
「初めまして?
ロジル・バーナと言います」
「・・・初めまして
・・・マウ・リアナです」
緊張どころじゃないよ!?
どうしてくれるの!?
お母さん!?
ベッドで横たわる私に
酸素 血圧 体温を計ってくれて
することと言ったら
・・・え?・・雑談??
何気ない話をしてくれた
ロジルさんの趣味
好きなこと
最近の出来事
何に夢中になってるかなど
・・・あれ?
・・・訪問看護って
・・・こういうことするの?
私の事を聞かれたから
私の趣味や好きな物
好きで
小説を書いてる話などもした
この人は
なんでも話を聞いてくれる
愚痴も不満も
否定せず
ぜんぶ受け入れてくれる
なんで?
けっこう
身体の事とか
重い話もしてるよ?
いつからだろう
ロジルさんが
来てくれる日が
楽しみになった
「今日は
どんな話をしようか?」
そう言うロジルさん
言いたかったけど
遠慮して言えなかったことを
聞いてみた
「・・・あの」
「なにかな?」
「・・・ロジルさんとの
・・・出来事を
・・・小説にしていい?」
「おっけー」
「・・・え!?
・・・嫌じゃないの?」
「なんで?」
「・・・・・」
そう言ってくれたし
小説にしてみた
明日には
作れてしまったけど
「・・・・・どうしよう」
ロジルさんに見せる?
でも恥ずかしいよね?
いや
恥ずかしいって
でも
ロジルさんなら
”否定される気がしない”
私は次の訪問日
ロジルさんに
完成した小説を
見せてみた
「・・・・・」
黙って
それを読むロジルさん
開口一番に
「僕とのことだね?」と
笑いながら そう言った
いや
聞きたいのは
そういう感想じゃなくて
「・・・どうでしたか?」
怖いけど聞いてみた
「僕は好き
これは物語だ」
「・・・いや
・・・物語だよ?」
「これ
小説サイトに
投稿してみれば?」
「・・・・・え?」
そういう物があったんだ
私の作品が
多くの人の目に入るの?
・・・怖いような
・・・見て欲しいような?
まあ
失う物はないし
・・・ポチ
・・・・・投稿
・・・・・してしまった
翌日
「・・・・・なんだろう?
・・・・・この赤い文字は?」
よく見たら
「作品がランクインしました」
・・・・・・え?
次の訪問日に
ロジルさんに見せた
「・・・・・すごいね」
「一日だけだったけどね72位」
「・・・だって
・・・こんな
・・・めちゃくちゃな
・・・タグで
・・・ランクインか」
「え?
タグって何?」
「・・・・・・・」
タグ修正を
手伝ってもらい
「これだけで
何かが違うと思う」
そして翌日には
ランクインしてなかった物の
読者は増えていた
それを
ロジルさんに見せる
「・・・やっぱり
・・・君は すごい」
「・・・そうなのかな?」
「楽しいこと見つけたね?」
「・・・・・え?」
「身体は動けなくても
君の物語は
世界中に飛んでくれる」
「・・・・・あ」
そうだよ
身体は動けなくても
私の物語は
世界中に届くんだ
4年後
それしかできなかった私は
小説ばかりを書くようになって
今では
家でできるライターの仕事で
少しの収入を得て
暮らしに役立ててる
「ロジルさん?
遊びに連れてって?
奢ってあげる」
「・・・いや
・・・君に
・・・奢ってもらうのは」
「なんで?」
「大人として
僕に奢らせて?」
「じゃあ割り勘で」
車イスの
私を連れてくれて
街のカフェで
アイスクリームを食べる
「おいしい」
「稼げるようになったんだね?」
「お小遣い程度だけどね?」
「0よりは良いよ?」
「ロジルさんのおかげだよ?」
「え?」
「私の書いた物語は
身体が動けなくても
世界中に届く」
「・・・・・」
「だから
私の代わりに
物語は
世界中に飛んでくれる」
「・・・・・」
「いつか
私が小説家になれたら
養ってあげるね?」
「・・・わ~ぉ
・・・魅力的な言葉」
さすがに
小説家にはなれなかったけど
私には生き甲斐と
「ロジルさん?
つぎは
どこに行こうか?」
ロジルさんと言う
恋人ができた。




