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5.この世界の常識

 

 翌朝。タケルは早朝から畑仕事をしていると、フィリーが起きてきた。


「おはよう。昨日はよく寝られたか」

「ええ、おかげさまで」


 フィリーは昨日食事を食べたあと、タケルの拠点に泊っていった。小屋というか土の箱はもう一つ作ったので、別々に寝た。扉問題は相変わらず解決していないが、ラグナたちがいるので、家の中まで入ってくることはそうないだろうし、獣が近づいてきたら騒ぐので目を覚ますはずだ。


「これから、女神様にお供え物するんだが、一緒にやるか」

「意外と信仰深いのね」

「そりゃあ、女神様にこの世界に連れてきてもらったからな」

「ああ、そういえばそうだったわね」


 フィリーは相変わらず信じていない様子だが、タケルはスルーして、共に女神様の神棚がある場所に向かう。

 そしていつものように収穫して食べきれないだろう野菜を神棚の台に置き、祈りを始める。


「女神様、いつもありがとうございます。本日取れた野菜です。どうかお納めください」


 いつものように祈りを捧げるといつものように野菜は光の粒子になって消えていく。

 フィリーは閉じた目を開くと、その状況に驚いた。


「えっ! あれ!? 野菜はどこにいったのかしら?」

「そんなの決まってるじゃないか。女神様のところだ」


 これはタケルの推測だが。多分合っている。ちゃんとポイントをもらえるから。


「そんなことって……」


 フィリーはタケルの話を聞いても未だ信じられないようだ。


「ちょっと待て。この世界じゃ祈って捧げものをしたら女神様のところに届くんじゃないのか?」

「そんな話聞いたことないわよ」

「あれ~?」


 どうやらこの世界の理だと思っていたことは、特別なことのようだった。そして、タケルはもう一つ気になることがあったので、フィリーに聞くことにした。


「それじゃあ、こう、念じると、パッと画面が現れて、ピッて押すと、ポンと現れる。これって普通じゃないのか?」


 女神様のギフトボックスを使う様子を実演して見せて、鍬を召喚する。鍬は何個あってもいいからな。


「ねえ、今どこから出したの?」

「まじかー」


 タケルは謎機能もこの世界の機能だと思っていた。けど、違った。どうやらすごい能力をもらっていることに、タケルはようやく気が付いたのであった。


「これが女神様にもらった能力だぜ」


 タケルは決め顔で言う。

 実際に野菜が消えたり何もないところから鍬を出したりするところを目にしたフィリーは、ようやくタケルの頭がおかしい発言を信じ始めたようだ。


「あなたの言うこともあながち嘘ではなさそうね。転生してきたとか言う話はさておき、女神様からすごいスキルをもらったということは確かなようね」

「おっ、ようやく信じたか」

「これだけ不思議なことを目にしたら、さすがにね」


 女神様のギフトボックスの話をしたついでに、今ある問題について相談をする。


「実はな、神棚の前で捧げものをするとポイントがもらえるんだ。そのポイントを使ってさっきみたいに鍬だったり作物の種だったりをもらうことができるんだ。ただ、最近な、大量の野菜を捧げてももらえるポイントが減ってきてよ。何が悪いんだと思う?」

「……同じものを大量にもらって女神様も困ってるんじゃない」

「やっぱりそうかー」


 タケルはポイントがもらえることが分かってから毎日野菜を収穫し、女神様に捧げていた。しかし、量を増やしてもポイントが変わらなかったり、最近に至っては前よりももらえるポイントが減ってきたりしておかしいと思っていた。


「もっともらえるポイントを増やしたいんだけど、なんかいい案あるか?」

「うーん、女神様にそのまま届くんだとしたら、ちゃんとした料理にした方がいいんじゃないの?この芋とかそのままもらっても困るけど、温めたら甘くておいしいし」


 これはタケルにとって盲点だった。農業スキルをもらったのだから、そのスキルを使って生み出したものじゃないといけないと思っていたが、別に手を加えてもいいのかもしれない。何なら他のものでも、ポイントに変換できるかもしれない。


「そのアイデア、もらった!」


 こうして早速タケルは朝食がてら、サツマイモを温め、鶏肉を焼いた。それを木の板に載せて祈りを捧げた。


「十ポイントも入ってる! 料理まじスゲー」


 山盛りの野菜が三ポイント。温めたサツマイモと焼いた鶏肉は十ポイント。ひと手間加えることでポイント量は増やせるし、何ならタケルが作った野菜でなくてもポイントに変換できるという事実を知れたのは大きい。


「もしかして味でもポイント量は変わるのか?」

「その可能性もあるんじゃない」


 これからは本格的にうまい飯を追い求める必要があるな。


「ってなると、調味料や調理器具が欲しいな」


 現状あるのは塩のみだ。調理器具もまともにないので、石で温めるか火で焼くかのどちらかだ。これでは前世で食べたようなおいしい料理を作ることはできない。


「何か当てはあるか?」

「うーん、物によっては他の村に行けば、売ってもらえるんじゃないかしら?」

「他の村か……」


 タケルはいまいち気が乗らなかった。いつかは人と交流したいとは思っているが、タイミングは今じゃない気がする。うまく話がつけばいいが、頭がおかしい奴だと戦争になる。農民にとって土地は財産だ。タケルはこの土地を奪われるくらいなら、戦うことを選ぶ。気が乗らない時に行動を起こすと大抵ろくなことにならないということを前世の経験から知っている。


「あんま気乗りしないし、そのうちだな」


 タケルにはまだやりたいこともまだまだあるので、焦って外に出る必要性もないのだ。



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