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27.エルフの里の救援2

 

 エルフ避難所近くの防衛線。


「放てー!」


 エルフたちは迫ってきたオークたちを弓でけん制する。


「この先は避難所だ! ここから先には一匹たりともオークを進まるな!」


 エルフたちの必死の防衛もあって、オークたちは無理に避難所の方には向かわずに、他の場所での略奪を優先し始めた。

 そんな中、ホワイトウルフに乗った獣人がオークたちを避ける形でエルフたちに向かっていった。


「新手か?」


 そう思ったエルフたちは弓を構えようとする。


「待て! あれはきっと援軍だ」


 その場を指揮していたエルドールの息子であるラエリスが弓を構えるのを止めさせる。


「エルフの皆さん、助けに来たっすよ!」


 ホワイトウルフに乗った獣人がそう言ってエルフたちの場所に近づいてくる。


「タケル様には人命救助を優先って言われてるっす。逃げ遅れた人とかいないっすか?」

「いや、事前に避難をさせていたのでそれはいない」


 エルフたちはオークたちが攻めてきたことが分かった時点で、住民の避難を進めていた。里の一部に人を集中させて、万が一、門が突破されたときの防衛ラインを狭めていたのだ。


「うーん、じゃあここの防衛に加わる形でいいっすか?」


 フォリンも強くはなった。しかし、一人でオークを何十人も倒すほど強くはない。積極的に危険な行動はしたくないし、タケルから無理をするなと言われているので、防衛の手助けをすることにした。


「ああ、それで頼む」

「了解っす」

「タケル殿はどこに?」

「あー、たぶんオークの大将とやりあってるっすね」

「大丈夫なのか?」

「それは大丈夫っす! 兄貴は強いっすからね!」



  ◆



 一方その頃、バルガスとタケルは互いに攻防を繰り返す形で戦っていた。

 バルガスが高い位置から斧を振り下ろすとタケルはそれを紙一重で躱し、鍬を下からかちあげる。その鍬はバルガスの横腹に当たるが、バルガスにダメージはなかった。


「無駄だ! 俺の体は鉄壁というスキルによって鉄のように固くなる! 今までこの守りが突破されたことはない!」


 そう言ってバルガスはタケルに攻撃を加えるが、タケルは距離を取る形で避ける。


「へえ、そんなスキルがあるのか。おもしれーな」

「余裕を抜かしていられるのも、今のうちだ!」


 バルガスはタケルとの距離を詰め、連続攻撃を仕掛ける。バルガスは完全に防御を無視して攻撃しており、こちらが下手に攻撃をするとカウンターを決められる可能性が高くなる。

 ゆえにタケルは今は回避に専念する。


「くっ! ちょこまかと!」


 バルガスは大振りで攻撃をしているためタケルは余裕の形で攻撃を避けていく。それにイライラするバルガスが思わず声を出してしまう。そんな様子を見て、タケルは疑問に思ったことを聞いてみた。


「なんでお前、こんなこと始めたんだ?」


 タケルは疑問だったのだ。なぜオークたちの方が有利な状態でわざわざ一騎打ちなどという要求をしてきたのか。普通であれば数的有利なら囲んで攻撃を仕掛けた方が確実だ。はっきり言ってわざわざ有利な状況で自分が不利になるようなことをするのはバカなのだ。そんなバカが何を考えているのか、タケルはすごく気になった。


「同胞を生かすためだ!」

「だから、奪うか……」


 タケルがバルガスの上段からの攻撃をかわしたことでその攻撃が地面に炸裂する。そして一連の攻撃が止まり、バルガスは肩で息をする。


「そうだ! 作物の収穫量は減り、森での採取もまともにない。魔獣は強くなり狩りもままならない。そうやって食料がどんどん減り日々やせ細る同胞たち。それを見続けなければならない俺の気持ちが分かるか! これほどの苦痛が、豊かな暮らしをしているお前に分かるか!」

「まあ、確かに奪う理由にはなるかもな。でも、お前。俺の村のこと知ってるな」


 バルガスはラグナに乗ったタケルを見た瞬間に分かっていた。行商人から聞いた農作物を豊富に持っている村の住人であることを。


「ああ、そうだ! それがどうした!」


 そう言ってバルガスは再びタケルを攻撃を再開した。しかし、バルガスがいくら攻撃してもタケルには当たらない。


「じゃあ、なんで俺のところに助けを求めなかった」

「っ! 我らには金もない差し出せる価値あるものもない! そんな俺はいったいどうすればいいのだ!」


 バルガスはまるで癇癪を起したかのように思いっきりでたらめな攻撃をする。


「はっ! あるじゃねーか! 立派なものが! 同族を思い汚れ役をやる覚悟、同族から慕われれる人徳、そして同族の中で際立っている強さ。俺はお前を気に入った」


 タケルはバルガスからの攻撃から逃れ、距離を取る。


「お前の残りの人生を俺によこせ。そしたら俺がお前たちまとめて面倒を見てやる」

「くっ! 今更そのようなことできるはずもない! この略奪を始めた責任を誰かが取らねばならない!」

「知るかよ。そんなこと」


 そう言ってタケルは鍬を放り投げる。


「思いっきりやると、殺しちまいそうだからな」


 素手で構えを取る。


「ほら、かかってこい。もう終わらせてやる」


 タケルの挑発に乗りバルガスは一気に距離を詰めた。


「くらえ!」


 バルガスは上段から斧を振り下ろすが、タケルは紙一重のところで躱す。そして、その攻撃の隙をついて攻撃の態勢を取る。


「皇極天武流闘拳術」

「無駄だ! 貴様の攻撃では俺にダメージは与えられない!」


 それでもバルガスは慌てない。自分の鉄壁というスキルに自信を持っているからだ。しかし、それが失策となる。


「【内崩拳】」


 タケルの拳がバルガスの脇腹に炸裂する。


「ぐふっ!」


 バルガスが口から血を吐き出す。そしてよろめきながらもタケルから距離を取るが、あまりのダメージに膝をついてしまう。


「内部破壊ってやつだ。いくら表面が硬くても効くだろ?」


 バルガスは意味が分からず動揺した。ただの拳が己の鉄壁の守りを乗り越えダメージを与えるなど今までではありえなかった。しかし、それでもバルガスは再び立ち上がる。


「まだやるのか」

「当然だ! 止めたければ俺を殺せ」


 バルガスは初めから分かっていた。自分ではタケルに勝てないことを。はっきり言って、一目見ただけで武の気配が違うだの。己との差を嫌でも思い知らされた。だからこそ、すべての責任を取るために一騎打ちを、己の死を望んだのだ。


「ったく、やっぱりお前はバカだな」


 タケルはバルガスに一気に距離を詰める。万全の状態でもタケルに振り回されている状態だったのだ。大きなダメージを負ったあとではますます動きが悪くなり、タケルの動きに反応できなかった。

 そしてタケルは再び内崩拳を放つ。


「ぐはっ」


 バルガスは吹っ飛び壁にぶつかり、ぐったりする。そしてもう立ち上がることができないようだ。

 その姿にバルガスの部下たちが唖然とする。オークたちの中では誰よりも強かった男があっという間にのされてしまったのだ。


「よし、お前は今日から俺のところに来い。いいな」

「……やはり……そんな甘えは許されない」

「うるせえ、それなら俺がお前たちをこき使ってやるから、それをもって罰とする」

「しかし!」

「つーか、お前は負けたんだ。黙って勝者に従え」


 そう言われたバルガスはもう反論することができなかった。そしてタケルは戦いを見守っていたバルガスに部下たちに向かって言った。


「さてと、お前ら、まだやるっていうなら相手をしてやるが、俺に従う気があるならさっさと武器を捨てて、他の奴らを止めにいけ」


 そう言われたバルガスの部下たちは他のオークたちを止めに走って向かった。




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