26.エルフの里の救援1
エルフの里に向かって森の中を移動中、これからのことについてタケルは指示を出す。
「ダルム、シェイド、フォリン。お前たちが百人ずつ連れて動け! いいな!」
「「分かった」」
「はいっす!」
タケルは部隊を動かすために、司令塔となる三人を選んだ。指揮能力はどれほどあるか分からないが、この中では古参で実力も高いので、とりあえず任せておけば大丈夫だろう。
「兄貴、あれ!」
「ああ、急ぐぞ」
タケルたちがエルフの里に近づくと、森の方から煙が立ち上っているのが見えた。すでに戦闘が始まっていることが明らかだった。
さらにエルフの里に門が見える位置までくると、その門が破られていることが分かった。
その様子にタケルは思わず眉をひそめた。
「もう門が破られてるとはな」
タケルの予定ではエルフの里の門を破ろうとしているオークたちの後ろから、ホワイトウルフたちの機動力を生かして、かき乱す予定だった。攻めの圧力が減れば、エルフたちも戦いやすくなり、状況によってはタケルが大将を倒して相手を引かせることもできると考えていた。
しかし、そのプランは完全に無に帰した。
そこでタケルは再度どうするべきかを考える。
「ダルム、シェイド、フォリン、お前たちはそれぞれ分かれてエルフたちが戦っているところまで駆け抜けろ! エルフと合流後は人命救助優先だ! 無理に敵を倒そうとしなくていい! 時間稼ぎをしろ!」
「「分かった」」
「はいっす!」
門を破られたというのはすなわちエルフの敗北に近い。そのため敵を倒す事よりもエルフたちを救うことに力を入れることにした。
「個別に行動するときは最低でも二人以上で行動するのを徹底させろ! 決して一人で戦うな! 無理なら引いていい! こんなところで死ぬんじゃねーぞ!」
これはあくまで援軍で本来主力として戦うのはエルフたちだ。それにすでに負けているようなもののため、わざわざ傷つき血を流す必要はない。だからこそ、タケルは獣人たちに生き残ることを徹底させる。
「兄貴はどうするんすか?」
「そんなもん決まってるだろ! 俺が敵の大将をぶっ叩く!」
敵が略奪のために里中に散っているのであれば、大将の周辺には隙があるはず。ラグナがいれば多少の敵がいてもどうとでもなる。
「よーし! お前ら! こっから気合入れろ! 行くぞ!」
「「「おおおおお!」」」
そう言ってタケルたちはエルフの里の中に突入していった。
突入後部隊は三つに分かれてエルフたちの下に向かっていった。そしてその中でタケルとラグナは大将がいるだろう方向に単独で向かっていった。
その様子を見ていた一人の獣人がフォリンに尋ねる。
「タケル様を一人で行かせてよかったんですか?」
「うーん、大丈夫じゃないっすか? ラグナ先輩もついてるし無理なところにはいかないんじゃないっすかね?」
本来であればこちらの対象が一人単独で敵陣に突っ込んでいくなんて言うのはあり得ない。しかし、フォリンはタケルとラグナの強さを知っている。正直、そこら辺にいる普通のオークじゃあ足止めすらできない。
「タケルの兄貴の心配よりも、俺っちたちは俺っちたちの仕事を全うするっすよ」
そう言うフォリンの前にようやくオークたちが見えてきた。
「ホワイトウルフ先輩、できるだけオークと接触は避けてエルフの人たちのところに早くいきましょう!」
それを聞いたホワイトウルフたちはオークを避けるように前に進んでいった。
シェイドの部隊はディープスパイダーをうまく活用していた。
「ディープスパイダーは糸でオークたちの邪魔をしてくれ」
糸を吐かれたオークたちは身動きが取れず、大きく行動が阻害された。そうしてシェイドの部隊はオークの足止めをしつつエルフとの合流を目指した。
ダルムの部隊は猪突猛進に進んでいた。
「行くぞ」
ダルムたちは最短でエルフたちの合流を目指し、目の前にオークがいようと構わず前進したため、途中にいるオークたちには確実にダメージを与えて言った。オークたちは来るはずのない方向から敵が来たことで混乱しまともに反撃ができない状態だった。ダルムたちは猪突猛進に進み、エルフたちとの合流を目指した。
「さて、大将はどこにいるのかね」
そして、タケルとラグナは敵中を突破していた。途中でオークが邪魔をしてくることもあるが、ラグナが激突して吹っ飛ばしていた。
そうして突き進んでいるとタケルたちは周りのオークたちと比べて一回り大きいオークを発見した。そのオークの周りには部下を十人ほどおり、いかにも一番偉そうな感じを醸していた。
タケルたちはそのオークに正面から近づき問いかけた。
「お前が、オークたちの大将か?」
「そうだ」
ラグナに乗ったタケルと相対しても、敵の大将は一切臆することなく堂々と返答をした。
「今すぐ引くっていうなら見逃してやる」
タケルはラグナに乗りながら偉そうに言う。タケルとしては別に殺す必要はないのだ。この争いが終わればそれでいいので、すぐに引くなら見逃しても全く問題ない。
「それは無理な相談だ」
「まあ、だろうな」
口で言ってすぐ引くのであればそもそもエルフの里を襲っていないだろう。タケルはダメもとで聞いただけであった。
タケルはラグナから降りた。
「名は」
「バルガス」
「タケルだ。まとめて相手してやるからかかってこい」
そう言ってタケルはギフトボックスから鍬を召喚する。
「なめるな。貴様なんぞ、俺一人で十分だ」
「バルガス!」
そばにいたバルガスの部下であろうオークがバルガスを諫める。
「ザルク、万が一の時には他の皆を任せた」
「ぐぅ、分かった」
バルガスな真剣な表情に、ザルクはそれ以上反論することはできなかった。バルガスは自分の武器である大斧を手に持ち一人前に進み出た。
「この略奪を決めたのは俺だ。他の者は俺に従ったに過ぎない。もし他の者たちたちを止めたいのであれば、俺を殺すことだな」
「……そうかよ」
タケルとバルガスは互いに武器を構えにらみ合う。数瞬の後、互いに距離を詰め、武器が交錯した。




