21.弓対決1
翌日。
帰り支度をしているところにセリオンがやってきた。
「俺と勝負しろ!」
セリオンが昨日、してやられ恥をかかされたことを逆恨みして、タケルに勝負を仕掛けてきた。セリオンにとっては見下している相手にいいようにされたことに腹が立っており、その意趣返しのようだ。
「俺はもう帰るんだが」
タケルはそんな勝負に興味はなく、面倒くさそうに返事をしたあとそのまま帰り支度を進める。
「逃げる気か!」
「もともとその予定だったんだよ」
「いいから勝負しろ!」
そう言ってセリオンは地団駄を踏む。
「はぁ」
タケルは軽くため息をしながらも、すぐに決着をつければいいかと考えタケルは了承することにする。いつまでもうるさそうだし。
「で、何の勝負するんだ?」
「弓で勝負だ!」
セリオンは村の中でも弓の扱いは上位に入る。そんな自分の自信のあることで相手をボコボコにするのが狙いだ。
「あー、はいはい。弓ね」
「こっちだ! ついてこい!」
そう言ってセリオンはどこかに行ってしまうが、タケルはそのまま帰り支度を進める。
「なんでついてこないんだ!」
ついてこないことに気付いたセリオンが戻ってきてそう言った。
「帰り支度ぐらいさせろよ」
「ぐぬぬ。早くしろ!」
そう言われてもタケルは急ぐことなくマイペースで帰り支度を進める。そして、セリオンは入り口でタケルたちの様子を苛立ちながら見ている。帰り支度が完了したところで、
「もういいだろ! 早くしろ!」
「へいへい」
そう言ってタケルたちははセリオンについていく。向かう途中でフォリンが話しかけてくる。
「兄貴、弓なんて使えるすか?」
「ちょっとな」
「さすが兄貴っすね」
セリオンに案内されたのはエルフの里にある弓の修練所だった。
「ここから互いに五本の矢を射ってどちらが多く的に当たるのか勝負だ」
「なるほどね。あっ弓持ってないから貸してもらえるか」
「あそこに置いてあるのから好きに選べ」
タケルは数ある弓の中からパッと見て気に入った弓を選ぶ。
「弓の癖が知りたいから、試射してもいいか?」
「ああ、好きにしろ」
セリオンとしても負けたときに道具のせいにされてもたまらないので、好きにさせることにした。
そして、タケルが試し引きとして二、三本射ると全体的に右側による傾向があった。
「大体わかった。こっちは準備いいぞー」
「互いに矢を一本ずつ射っていくんだが、先行と後攻どっちがいい?」
「俺はどっちでもいいぞ」
「なら、俺が先に射る」
セリオンは先に成功させてタケルにプレッシャーをかけるために先行を選んだ。
セリオンの第一射目。真ん中に命中させた。セリオンはそのことに喜びニヤリと顔をほころばせタケルの方に自慢げに見る。
それに対してタケルはセリオンのことは完全に眼中に入っておらず淡々と弓を射る。そして、タケルもセリオンと同じように真ん中に命中させる。
それによってセリオンはプレッシャーを感じ、続いて第二射目で矢がわずかに真ん中からずれ的の左の方に当たり、セリオンの表情が少し崩れる。
そしてタケルは第二射目もほぼど真ん中に命中させる。
それを見たセリオンはさらに動揺し、弓の手元が狂ってしまい、第三射目は的に当たりはしたものの右の方にずれてしまう。
(くそっ!)
動揺し続けるセリオンをしり目にタケルは淡々と弓を射続ける。そして第三射目も真ん中に命中させる。
(落ち着け、冷静になれ)
連続で真ん中に命中させ続けるタケルにセリオンはさらに動揺するが、落ち着くためにゆっくりと深呼吸をする。しかしそれでも完全に動揺を消し去れなかったのか、第四射目は第三射目よりも中心ではあるが右の方にずれた結果になった。
(くそっ!)
タケルはセリオンの存在などいないかのように静かで、第四射目もほぼど真ん中に命中させる。
セリオンの最後の一射。
(ここで外すわけにはいかない)
セリオンがタケルに勝つことは難しいが、動揺して的から外すなんて言うのが一番恥ずべき行為だ。そのため気合を入れなおすが、矢は的の左の方にずれてしまう。それをみたセリオンは苦々しい表情を浮かべる。
そしてタケルの第五射目。タケルは相変わらず淡々と弓を構えていく。
(はずせ! はずせ! はずせ!)
そんなセリオンの祈りもむなしく、タケルは最後の弓矢も的の真真ん中に命中させる。
結果は誰が見ても明らか。タケルはすべての矢をほぼど真ん中に命中させたことに対して喜ぶこともなく、セリオンに勝利したことを誇ることもなく、ただの作業を済ませえただけのように淡々とセリオンにこう言った。
「これでいいか?」
「さすが兄貴っす!」
「すごい! すごい!」
フォリンとジルがタケルの活躍に喜ぶ。シェイドは唖然としていた。
「くっ! いいや、まだだ! 所詮これは止まった的! 実践では役に立たない! 次はもっと実践的な勝負だ!」
「まだやるのかよ」
セリオンは負けを認められなかった。これでもセリオンは弓に関してはエルフの里の中でも上位に位置しており、里のメンツのためにもこのままでは引き下がれないのだ。
「こっちだ! 早くついてこい!」
「へいへい」
一人足早に行ってしまうセリオンを追いかける形でついていく。だが、タケルはマイペースに歩いておりどんどんと距離が離れていく。すると、セリオンは立ち止まり
「遅い!」
とタケルに言ってくる。だが、そう言われてもタケルの歩くスピードは変わらず、セリオンのイライラは募っていく。
そんなこんなで目的地に着いた。そこは里の集落から少し離れた場所で、大きな広場だった。的も設置されておらず何をするのか見当がつかなかった。
「で、どんな勝負をするんだ?」
「この木の円盤を互いに狙って先に当てた方の点になり、先に五点先取した方の勝ちという勝負だ。まず俺たちは広間の真ん中にある二つの円にそれぞれが入る。その場所から四つの投擲場所から投げられる円盤を射るという形だ。これは獲物に気付くスピードと正確に射る腕が試される実践的な勝負だ。もし怖気づいたんなら、止めてやってもいいぞ」
タケルはこれが実践的なのか疑問に思った。弓が活躍するのは遠距離からの不意打ちなのでそこまで実践的だとは思わなかった。だが、それを口に出すとややこしそうなので、口をつぐんだ。いい訓練にはなるだろうが。
「いいや、やるよ。ここで止めたら、お前うるさそうだし」
「いいだろう。吠え面かくなよ」




