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13.やられたらやり返す

 

 タケルは獣人たちの上半身をディープスパーダ―の糸でぐるぐる巻きにして身動きが取れない状態にしてから、村へ案内させることにした。彼らは互いに糸で繋がっている状態で散り散りになって逃げることはできないようにしてある。


「ほら、さっさと歩け」

「どうか勘弁してください。謝りますから」

「うるさい、黙って案内しろ。それにな、俺もちょうど欲しいものがあるんだ。この機会に手に入れてやろうと思ってな」


 あくどい顔をしながらタケルは言った。


「っ!」


 その言葉を聞いた獣人たちはタケルのことをにらみつける。


「恨むんなら自分のバカな行動を恨むんだな」


 獣人たちを先行させて村に案内させる。その周りにはホワイトウルフとディープスパイダーの子供たちがおり、獣人たちが変なことをしないか見張っている。

 タケルは少し離れてところで、ラグナと作戦会議をする。


「主、これからどうするので?」

「どうするかなー」


 向こうが襲ってきたので、返り討ちにしたし、やられてそのまま解放というのも気にくわないので、こういうことになってしまった。正直いきなりすぎて、何も考えていない。


「まあ、調味料関係と調理器具は欲しいよなぁ」


 ぼやっと考えていたことを口に出したそのあとに、タケルの天才的な頭脳にひらめきが降ってきた。


「村を丸ごと乗っ取ることを最初に要求するか」

「さすがに難しいのでは?」

「カリュネラの時と同じよ。大きく要求してそのあとに譲歩するって奴だ」


 村をタケルの支配下に置くとなれば、当然断られる。しかし、それでいいのだ。タケルたちの本当の狙いは調味料や調理器具だからだ。

 獣人の村は調味料や調理器具は失うが、相手から譲歩を引き出したことによってメンツが保たれる。これがウィンウィンの交渉というやつだな。


「なるほど! さすがは主です!」


 不安そうにしているジルがタケルのことを見つめてくる。そんなジルの頭をなでながら


「安心しろ。バシッと交渉を終わらせて調味料を手に入れたら農場でうまい飯を食うぞ!」

「うん!」


 そういってタケルたちは笑った。

 それからしばらく歩いた後、先行していたホワイトウルフが村を見つけたようで、タケルに知らせてきた。


「どうやら、奴らの村が見つかったようです」

「そうか」


 ジルはどこか緊張している。かつて住んでいた村。そして追い出された村だ。当然知り合いもいるだろうし、気まずいのは仕方のないことだろう。


「あのバカどもの口は塞いでおけ。交渉の邪魔だ」


 報告に来たホワイトウルフに乗っていたディープスパイダーの子供が了解という感じで手を上げる。

 交渉中にあのバカどもにあることないこと言われと面倒だからだ。よく分からない男と以前から知り合いで同じ村の仲間のどっちの言うことを信じるかは明白だ。だから、強制的にお口チャックをしてもらう。


「んーーー! んーーー!」


 獣人たちは何かを訴えているようだが、何を言っているのか分からない。口を塞いでおいて正解だった。


「お前ら静かにしてろよ。さてと、交渉にいくか」


 獣人たちを糸で引っ張りながら、村に向かっていく。村に向かうメンバーはタケル、ジル、ラグナの他にホワイトウルフ五匹だけだ。残りの半分はいざというときに備えて周辺に隠れてもらっている。


 村は簡易的な木の柵に囲われており、簡易的な門のようなところに、門番のような人が二人突っ立っているのが見えた。すると、相手も気付いたようで怪訝な表情を浮かべている。すると一人が村の中に入っていき誰かを呼びに行ったようだ。そしてジルは不安があるのか、タケルの裾を掴んで離さないようにして付いてきている。

 ある程度近づいたところで門番が槍をこちらに向けて叫んできた。


「そこで止まれ! この村にいったい何の用だ!」


 タケルはそこで立ち止まり、襲ってきた獣人たちの方を指さした。


「こいつらに見覚えがあるか?」

「ある。我らの村の仲間だ」

「じゃあ、こいつらが何をやろうとしてたか知ってるか?」

「……森で狩りをするのがそいつらの仕事だ」

「狩り、ねぇ」


 タケルは門番には聞こえないような大きさの声でつぶやいた。


「こいつらは俺たちが川にいたら、急に食料をよこせと言って来た。それを断ったら、なんて言ったと思う。俺たちを痛めつけたあと人質にして、村から食料を奪い取ってやるって言ったんだよ。これはお前らの村の総意ってことでいいのか?」

「なっ! そんな話は聞いていない!」

「お前が聞いていないだけじゃないのか? 俺は知ってるぜ? こんな子供を追い出さなきゃいけないほど困ってるってな」

「それは……」


 門番はジルを口減らしにしたことに負い目を感じているのか、よほどひどい食糧事情でその可能性もあると考えたのか、言葉の歯切れが悪い。


「お前じゃ、話にならん。長でも連れて来い」

「……分かった。おい、長を呼んできてくれ。至急だ」


 門番は近くにいた村人に大声で呼びかけ、長を呼ばせに行った。そして、少し待っていると武装をした獣人の男たちを連れて、長がやってきた。門番から話を聞いているようだ。そして、いつの間には村の多くの人が野次馬として様子を見守ることになった。

 武装をした獣人の中でも一番体格がよく強そうな奴とタケルの目が合う。


(このバカどもよりも強い奴くらいいるか)


 長と武装した獣人たちは他の奴らよりも少し前の方に進み出てきたが、警戒をしているのかまだ距離がある状態で、タケルに話しかけてきた。


「話は聞いた。しかし、それは我らの総意でもなければ儂が指示したことでもない。そやつらが勝手にやったことだ」


 こいつらを切り捨てて話を終わらせる気かとタケルは思ったが


「しかし、そやつらもわしらの仲間だ。要求があれば聞く。その代わりにその者たちを解放して欲しい」


 狩りをして外から食料を確保できるやつっていうのはそれなりに大切な存在らしい。って言うことなら、当初の予定通り大きな要求をぶっ放すだけだ。


「俺はよ、この村を俺の物にしようと思ってな。そうすりゃあ、こんなバカみたいなことになることもなくなるからな。だから、俺の支配下に入るっていうならこいつらは生かして返してやる」


 タケルの言葉を聞いた獣人たちはざわざわとざわめき始める。そして、武装した獣人の男たちは殺気を滲ませてタケルをにらみつけてくる。


「皆、静かにせよ。そなたに、一つ聞きたい!」

「なんだ?」

「そなたの支配下に入れば、食べ物の面倒は見てくれるのか?」

「ああ、そんなの当然だろ」


 タケルの回答を聞いた獣人たちのざわめきはわずかに静まる。


「皆と話し合いをする時間が欲しい」

「いいだろう。でも、そんなには待たんぞ」


 タケルは早く欲しいものを手に入れて帰って料理する時間が欲しいので何時間も待っていられない。タケルの感覚で十分ぐらいしたら、返答を要求するつもりだ。


(断ってもいいぞ。そしたら、俺の本命の矢が飛び出すからな)


 タケルは悪い笑みを浮かべながら、獣人たちの話し合いの結果が出るのを待つであった。


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