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第42話 【隠し部屋】を有効活用しちゃえばよくない?

 話し合って【従者箱ヒロインボックス】内を、ひとまず適当に埋めることにした。

 併設されていた売店で、飲み物やカロリーバーを購入する。

 

 また、西園寺が買ってきてくれた着替えの衣類やタオルも、ちゃんと異空間へと入れておく。

 下着ショーツも何だかんだで、やっぱり【従者箱】の一覧リストには入ってた。

  

 ……まあ、うん、いいんじゃないですかね?   


 取り出す時には気をつけないと。

 汗拭きタオルと間違えて、顔拭いちゃったら変態――じゃなかった。

 大変だもんね!

 


 そうして、バッチリ準備を整えた後。

 昨日もお世話になったEランクダンジョンにやってきた。

  

 ダンジョン内に入って、早速【ダンジョングローブ】を使用する。



「えっと……雨咲君、よろしくお願いします」


「……その、雨咲君、転移よろしく」



 西園寺と東條が、照れながらも俺の身体に触れてくる。

 それを確認して、【隠し部屋】へと転移した。

 

 ……お二人さん、もうちょっと大胆に触れてくれても俺は気にしませんよ?

 


「よし。ちゃんと来れたな」


  

 ほぼほぼ中央に降り立った。

 

 先日、投石コボルトたちと戦闘を繰り広げたとは思えないほど、綺麗な空間のままである。

 モンスターも宝箱も出現せず、ただ何もない安全地帯と化していた。


 

「ふぅ……で、どうしよっか?」



 尋ねて来た西園寺の、左上へと視線を向ける。

 そこには今日も、更新された【調教ミッション】が表示されていた。   


 西園寺もまた、それを教えてもらうのを待っているかのようである。



[調教ミッション]


●デイリーミッション


 ダンジョン内で3分間、主人に開脚ストレッチを手伝ってもらう   

 報酬:調教ポイント+100

 

 ↓調教Lv.1により調教ポイント+50


 報酬:調教ポイント+150

 

 ↓調教布により調教ポイント+50

 

 報酬:調教ポイント+200  


 現在00:00.00   


― ― ― ― ― 

 

「西園寺は……“ストレッチ”だな。開脚を3分らしい」 


「へぇ~開脚か。3分でいいんだね? じゃあここでやっちゃおっか!」

  

 

 西園寺はすぐに、石畳の上にペタリと座り込む。

 そうして両脚を互いに反発させるように、ゆっくりと開き始めた。



「私も手伝った方がいいかしら?」



 手持無沙汰になるからか、東條がそう申し出てくれる。


 ミッション自体に東條の協力は必要ないが、一緒に柔軟をやっておいて損はないはずだ。

 ケガの予防にもつながるしね。

 

 

「ああ。反対から、西園寺の手を引っ張ってあげてくれ。俺は背中を押すから」 


「わかったわ――んしょっ」



 東條は西園寺の反対側に座り、同じように開脚する。

 そしてかかとを西園寺の踵にあて、ゆっくりと押し広げた。


 

「んっ……あっ」   



 西園寺から、いた気持ち良さそうな声が漏れる。

 ちゃんと効いているらしい。

 だがこれだけではミッションが進行しないので、俺も柔軟に協力する。



「背中、ちょっとだけ押すぞ~」


「う、うん、よろしく……んあっ」



 西園寺の背に両手を当て、少しずつ前に押す。

 東條が手を引くのと合わせ、西園寺の身体が徐々に前へと倒れていった。 

 

 ……若干色っぽい声が聞こえてくるけど、まあストレッチしてるだけだから、うん。

 エロくないエロくない。



【ダンジョングローブ】で、行ったことがある階層間を行き来できる以外にも。

 こうして【隠し部屋】にまで転移できたのは、かなりありがたかった。


 イベントモンスターを倒した今。

 誰も来ない、自分たちだけのスペースみたいに有効活用できる。

 こうして他人に見られたくない【調教ミッション】も、誰にはばかることなく挑戦できた。

 

 ……だから西園寺さん、もっとエッチな声出しちゃってもいいんですよ? 



◆ ◆ ◆ ◆ 



「西園寺さん、ゆっくりでいいから息を吸って。そして同じくらいかけて吐いてみて」


 

 東條は慣れているのか、西園寺へと的確にアドバイスしてくれる。



「う、うん。――すぅ~はぁ~」


 

 そうして東條の指導もあって、順調にミッションの時間は進んでくれた。



「――一度、戻しましょうか」


 

 ちょうど半分、90秒ほど経過したところで、わずかだが休憩を入れる。

 東條が西園寺の手を放したのを見て、俺も背中を押す力を緩めた。

 身体が後ろに戻った西園寺は、一呼吸つく。



「……ふぅ~。凄く効いてるよ。股関節はもちろんなんだけど、全身が温まってる気がする。えへへ」



 西園寺は短いスカートの上から手で、両脚の付け根部分を優しく揉み込む仕草をした。 


 ……うわっ。

 それはちょっとエッチ警察に通報はいるよ、大丈夫?   


 だがすぐに西園寺はその手を上げて、涼を求めるように上着のローブを脱いだ。

 手を団扇うちわのようにして、パタパタと火照った顔をあおいでいる。


 ……エッチ警察、今回は出動不要らしい。


 

「――よしっ、お願いします!」



 西園寺自ら、開脚の再開を申し出る。

 それをきっかけに、再び西園寺の黒いアンダーシャツに手を触れた。

   


「んしょ――すぅ~はぁ~……」



 東條の教えを生かすように、西園寺は深く呼吸をする。

 集中できるようにと、無言で背中を押し続ける。


 ……あれ?

 

 手の指、第二関節辺りに。

 ローブ姿の西園寺を押していた時には感じなかった、引っかかるような感覚を認識する。

 


 ――こっ、これは、胸の方の下着、ブラさんなのか!?

  


 ……いや、なんか愛称みたいに言っちゃった。


 意識すると、やはり二重になっているというか、周辺よりも少しだけ厚い感触がある。

 ここに黒インナーとは別の、布生地があるのだ。 

    


「雨咲君、あとどれくらいかしら?」


「残り秒数か? えーっと……5秒だ」



 東條に呼びかけられ、何とか平静を装って画面を確認する。

 そして口に出した秒数は、俺が西園寺に合法的に触れていられる時間でもあった。

 

 もうすでに3秒を切っている。

 切ない、あまりに切ない。


 何とか指にこの感覚を焼きつけようと、全神経を集中させた。


 多分、熱心にストレッチしてくれてる西園寺本人よりも。

 この約3秒間だけは、俺の方が集中してたと思う。

 


「あっ――やった! 終わった、かな?」 



 そうして、別れの時間が訪れてしまった。

【調教ミッション】の成功を示すように、西園寺の全身に黄色い魔力の光が走る。

 

 それを見て、西園寺の背中からゆっくりと手を放した。

 まるで、やっと出会えた最愛の恋人と別れを惜しむかのように。

 

 ……さようなら、ブラさん。

 俺の指にそっと触れてくれた君の感触、ずっと忘れないから……。



 そうして一人、哀愁あいしゅうを漂わせながら。

 西園寺の【調教ミッション】を達成したのだった。 

 

◆ ◆ ◆ ◆


―[調教ミッション]―


●デイリーミッション


 ダンジョン内で主人に5回、耳元から褒めてもらう   

 報酬:調教ポイント+100


 現在:0/5回

    

― ― ― ― ―



 今度は東條のミッション達成にいそしむことに。

 こうでもしないと、過去の恋人ブラさんの幻影を今も追い続けてしまうからな……。  



「――東條って、凄く美人だよな」


  

 指示にある通り、東條の耳に顔を寄せてささやく。  



「っ~!」



 東條が、こそばゆそうに肩をビクッと反応させる。

 我慢できなかったのか、甘い吐息も漏れていた。

 耳も真っ赤になっている。

    


「……東條って努力家だから、凄いなっていつも思ってるよ」


「っ~~!」



 低く小さな声は、再び東條をゾワッとさせてしまったらしい。

 耳を覆い隠そうとするように、反射的に手を動かしていた。



「……スマン。不快かもしれんが、マジでこれがミッションなんだ」 



 最高癒しボイスの西園寺がASMRをしてくれるならともかく。

 俺が耳元で囁いても、拷問にしかならないよね。

 まあ俺の発する苦痛ボイスに耐えるのがミッションだと言われれば、それまでなんだけどさ……。



「あっ、いいえ、そうじゃないの!」    



 だが東條は慌てたように、首を強く横に振る。

 

 

「その……雨咲君の声は普通に素敵だと思うわ。もちろん、嘘をついてるとも思ってないの」


 

 照れで顔を赤くしながらも。

 正直に、思ったことを何とか言葉にしようとしてくれている。

 

 そんな誠実さや必死さが、東條からはちゃんと伝わってきた。

 だがそこまで言ったところで、急に迷いが生じたように言いよどむ。


 見守ってくれている西園寺や、俺を交互に見て口をモゴモゴさせていた。



「……大丈夫。東條さんがどんなことを言っても、呆れたり見捨てたり、嫌いになったりしない。私も、もちろん雨咲君だって。ね?」


 

 西園寺の言葉に、大きく頷いて肯定する。

 東條もそれを受けて、決心したようにゆっくりと口を開いた。



「ありがとう。――あの、私。その、耳が、弱いらしくて」


「……えっ?」



 ――耳が、弱点!?


 

 エッチ警察、直ちに出動!

 被疑者は17歳女。

 美人でおっぱいと太ももがエッチなだけに飽き足らず、耳が弱点などとエッチな供述をしている!


 いつもクール美人な魅力しかない顔のくせに、それを知られて恥ずかしいみたいなギャップ可愛い顔しやがって。

 反省の色なし。

   

“童貞ボッチたぶらかし罪”および“単純エッチ罪”で緊急逮捕だ!! 

 


「あ~。まあ嫌なわけじゃないなら、休み休み続けるか?」


「ええ。配慮してくれてありがとう。……あっ! 誓って言うけど。本当に、雨咲君の声が嫌とかじゃないのよ? むしろ低くて素敵な声だと思ってるわ」

    


 わかったから、そんな必死にフォローしてくれなくてもいいって。

 嫌がられてないとは流石に伝わったから。

     


 東條の意外な弱点が判明したものの。

 何とか残りの回数、耳元で東條を褒めることに成功したのだった。


【備忘録】 

 エッチ警察:過去、超凶悪犯の検挙実績あり。

 超凶悪犯:ヒカリウムなどという超中毒性のある成分を無自覚に体外へと放出。

 とある若年の被害者男性を、それ無しでは過ごせない極めて重篤じゅうとくな中毒症状へと陥れる。

 また自身もエッチな仕草を無自覚に繰り返し、被害者男性を数えられないほどに誘惑した。

 “童貞ボッチたぶらかし罪”および“加重かちょうエッチ罪”など、複数の重大エッチ犯罪に問われている。 


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