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第30話 トラウマを乗り越えてから、果実を美味しく収穫しちゃえばよくない?


「ふぅ~……」



 戦闘が終了して、安堵の息を吐く。

 盾を地面につき、緊張していた身体をリラックスさせた。



「おっ?」



 ミニゴーレムだった残骸が、光の粒子となって消えようとしていた。


 だがその一部が再び集まって、光の塊となる。

 そして塊は方向性を持って移動。

 最終的には西園寺の両手首――【調教(バンド)】へと、吸い込まれるようにして消滅したのだった。  

   

 ……今のが【調教(バンド)】、そして【調教才能Lv.2】による経験値1.5倍の効果だろう。

 目に見える形だったので、比較的わかりやすかった。



「わっ! やったよ二人とも! 私、レベル上がった!」 



 西園寺が飛び跳ねんばかりに喜んで報告してくれる。




[ステータス]

●基礎情報


 名前:西園寺さいおんじ耀ひかり

 年齢:17歳 

 性別:女性

 ジョブ:神官Lv.1

 支配関係:主人 雨咲あめざき颯翔はやと

  ―保有調教ポイント:20→120  


●能力値


 Lv.3→Lv.4 

 HP:16/16(10+3+3)   

 MP:9/10(4+3+3)→11/12(6+3+3) New!! 

 筋力:9(3+3+3) 

 耐久:11(5+3+3)  

 魔力:8(2+3+3)→9(3+3+3) New!! 

 魔耐:12(6+3+3)→14(8+3+3) New!! 

 敏捷:13(6+3+4)   

 器用:13(6+3+4)  


※(+3)=【全能力値+3】

 HP・MP・筋力・耐久・魔力・魔耐+3    

 敏捷・器用+4 




 確かにレベルアップしていた。

 そしてジョブ【神官】を得てから初めての成長でもある。

 ちゃんと調教ポイントも100増えてるし、【神官】による能力値の成長もあった。

 

 レベルアップを加速させてくれる【調教帯】+【調教才能】の組み合わせは、今後もとても有効に働いてくれるだろう


 ……ただ見た目的に、西園寺が手枷をしているみたいに見えるのがなんとも言い辛い。

 清楚で穢れない西園寺が、自ら自由を制限する手枷をはめているようで、凄く背徳的に感じる。


 端的に言えば。

 白を基調とした神官っぽい格好の西園寺に黒い手枷姿は、かなりエッチだった。 

    

  

「おめでとう、やったわね西園寺さん!」


 

 東條にしては興奮気味に、西園寺の成長を祝福していた。


 クールでキリッとした表情は崩れていない。

 だがそれでも、自分のことのように西園寺のレベルアップを喜んでいるのが伝わってきた。

 

 

「うん、ありがとう! ――じゃあ、東條さん。ヘイヘイ!」


 

 西園寺が片手をあげて、ヒラヒラと東條のアクションを待つ。

 もはやお決まりの、ハイタッチ待機だ。



「えっ? えっと……」



 だが東條はもちろん初めてのことで、西園寺の挙動に戸惑いを見せる。

 どうすればいいのかと尋ねるみたいに、俺へ助けを求めるような視線を向けて来た。


 ……うぐっ、可愛い。


 普段は隙の無いクールな女性が、不意に見せる弱ったような姿みたいで正直グッと来た。

 それが自分だけを頼ってくれたような感じで、なおさら東條へのギャップに愛おしさが湧いてくる。


 

 ……とりあえずその胸にぶら下がってる果実二つが重そうだから、それを支える手ならいくらでも貸すけど?


 

「ハイタッチだ、ハイタッチ。手で、西園寺の手を叩いてやればいい」


「あっ、そうなのね……」

  


 東條は恐る恐る近づいていく。

 そして今か今かと待ち構える西園寺の右手へ、壊れ物でも触れるように、その手を品良く重ね合わせたのだった。

 


「いえ~い! やったね東條さん!」


「え、ええ」



 ペタンという情けない音しかしなかったが。

 西園寺はそれでも、とても嬉しそうな笑顔になる。


 東條も。

 西園寺と触れ合った手を、不思議そうに見返していた。


 次にその手を。

 まるで宝物でも見つけたみたいに、愛おしそうに見つめる。

 そして大事に大事に胸に当て、左手でそっと包んでいたのだった。

  

 ……美少女同士の何気ないやり取り、尊くて可愛すぎんだろ。



 後方腕組み見守りおじさんと化してたのだった。



「雨咲君も、いえ~い!」



 その後、俺へも緩々なハイタッチ要請がなされる。

 


「はいはい……――いえ~い」 


「……何でそんな覇気のない、死んだような声なのよ」

  

 

 それにノリノリで応じてたら、東條に辛辣しんらつなツッコミをされたのだった。 

 テンション上げたつもりだったのに、周りからは死んだように聞こえるらしい。

 辛い……。

 


◆ ◆ ◆ ◆ 


 

 その後、話し合って探索を続行する。

 西園寺も東條も、余力は十分。

 モチベーションも非常に高かった。


 この時点ですでに、俺たちは記録更新中なのだ。

 

 西園寺と俺は先日、1回の戦闘で離脱。

 東條に至っては1勝もできず、俺たちに救出されるに終わっている。

 

 なのでミニゴーレムに完勝ともいえる勝利を収めて、俺たちの士気はとても高かった。




「……いた。ゴブリンだ」



 しばらく歩いて、次のモンスターを発見する。



「ゴブリンっ!」



 東條にとってはリベンジすべき相手だ。

 早々に再戦できるのはある意味で幸運とも言える。



「――私も前に出るよ! 1体引き受けるねっ!」    



 3体のゴブリンを確認し、西園寺がすぐさま前衛に移動。

 盾を構えてゴブリンのヘイトを買う。


 俺も同じく別の1体を相手する。



「東條っ、弓使い(アーチャー)から先に潰せっ!!」


「ええっ!――」

 


 東條が両手剣を抱えて、最奥のゴブリンへと駆ける。

 西園寺と息を合わせ、東條が急襲しやすいよう連携した。



「っ!!」



 2体の攻撃を盾で防ぐ間に、東條はもうアーチャーゴブリンへと迫っていた。

 


「GIGIGI!? GISYA――」



 慌てて矢を放つが、東條は上手く両手剣の刀身でそれをはじく。

 冷静に状況を見ていて、また身体の動きもそれに連動するように滑らかだった。



「――【強撃】!!」



 アーチャーゴブリンは慌てて次の矢をつがえようとする。

 だが焦ってか手元が狂い、矢を取りこぼしてしまっていた。


 その隙を逃さず、東條はスキルを発動。

 刀身が一際強く輝く。



『オーバーキルになろうとも、確実に一撃で仕留める』、そして『数的有利を作るのだ』。



 そうした東條の強い考えが、言葉にせずともハッキリと伝わってきた。 

  


「GIGIGI――」


「せあっ!!」



 反射的な動きで、まるで盾のように掲げられた弓もろとも。

 東條の両手剣は、アーチャーゴブリンを一刀両断にしたのだった。



「仕留めたわ! 挟み撃ちにしましょう!!」   



 余韻を感じさせず、東條はすぐにこちらの加勢にも来てくれる。 



「GIGA!?」


「GIGI?」



 仲間がやられたことを確認するためか。

 西園寺と二人で相手していた2体が、反射的に振り返る。

    

 そこを見逃さず、すぐさま片手剣で切りつけた。

 


「やぁっ!!」



 西園寺もそれに連動してくれる。

【調教(バンド)】のデバフの影響か、少し動きは鈍かった。

 だがそれでも、ここまで大きな隙だとほとんど関係ないレベルである。



「せあっ!!」


 

 二人でダメージを与えたところに。

 追い打ちで、東條が切りかかった。

 

 刀身の大きな両手剣は、ただ振るっただけでも大きな威力が出る。


 そしてそんなインパクトを出せる剣を。

 東條は女性の身で、重さを感じさせず振るいきる。


 

 華麗さすら感じさせる動きで。

 残った2体のゴブリンたちを、見事に倒しきったのだった。



「やった……ちゃんと、倒せたんだ、勝てたんだ、私っ」   

 

 

 ゴブリンの光が【調教(バンド)】へと吸い込まれていく間も。

 東條は喜びをにじませた声で、勝利を嚙み締めていた。

   

 ゴブリンとの間でつい先日。

 トラウマになってもおかしくないような経験をした中で。

 早々にその悪い記憶を、自らの手で振り払うことができた。


 東條にとってはこれ以上ない戦果になっただろう。



◆ ◆ ◆ ◆


 

 その後も1時間以上をかけて。

 3回、モンスターと接敵することができた。

 


 アーチャーを含めた2体との戦闘は、数的有利でゴリ押しし。

 その後に遭遇したノーマルゴブリン3体は、慎重に連携しながら討伐。

 

 最後。 

 ミニゴーレムだけは、西園寺の【ホーリーショット】を使うことになった。

 

 だが俺も西園寺も【ヒール】を使用することはなかったので、十分な戦績だろう。


 俺も東條もレベルが1上がったが、西園寺がさらにもう1レベル上がったことには驚いた。

【調教(バンド)】の、そして【調教才能】の恩恵の凄さを改めて実感する。

  


「今日は十分だろうから、ここらで引きあげようと思うんだが……異論は?」


「ありません、雨咲師匠!」


「ええ。今日はもうすでに収穫だらけだもの」


 

 帰還の総意を得て、ダンジョンから外へ戻ることに。

 ……だがその前に。

 

 東條の“収穫”というワードで、大事な用事を思い出す。



「えーっと。じゃあ出る前に、一個だけ。非常に言い辛いんだが……」


「あっ――えっと。はい」



 西園寺がすぐに察したというように、かぁっと赤くなる。

 恥ずかしそうに無言になって、視線をあらぬ方へと逸らした。


 うぅ、ごめん。

 西園寺のいちご母乳――じゃなかった。

 いちご・オレ、いただきますね。



「? なにか、あるの?」


 

 この中で一人、分かっていない東條はキョトンとした表情。 

 いつも涼しげな顔の美人が不思議そうに首をかしげている姿は、とても可愛らしかった。


 東條もやはり西園寺とはまた別ベクトルの、魅力的な美少女だと再認識させられる。


 

「えっと。俺が【従者果実】っていうスキルを持ってて――」


「あぁ~ならもう西園寺さんから話は聞いてるわ。大丈夫よ、私の物も遠慮なく収穫してちょうだい」



 東條は特に気負った様子も、恥ずかしがる様子もなく。

 従者の【調教ツリー】に連動して、俺が強くなれるスキルだと説明してみせた。    

 

 内容も正しく、言葉通り西園寺にレクチャーを受けていたのだと分かる。


 なら話は早い。

 ありがたく、東條の【調教ツリー】に対応する【従者果実】も閲覧させてもらうことに。




[従者果実 収穫画面]


 保有調教ポイント:640


東條とうじょう雪奈せつな 果実一覧

 

 〈基礎 果実1〉【HP 経験点小】  必要調教ポイント:25 収穫日数:1日  


 〈基礎 果実2〉【MP 経験点小】  必要調教ポイント:25 収穫日数:1日


 〈基礎 果実3〉【筋力 経験点小】 必要調教ポイント:25 収穫日数:1日


 〈基礎 果実4〉【魔力 経験点小】 必要調教ポイント:25 収穫日数:1日


 〈ジョブ 果実1〉【強撃 経験点小】 必要調教ポイント:100 収穫日数:1日



― ― ― ― ―



 基本的な内容は、西園寺の【従者果実】とほとんど変わらない。

〈ジョブ〉のスキルの選択が、そのまま違いに反映されているくらいだ。


 

 東條関連のイベントが立て込んでたので、使わずにとっておいた調教ポイントがかなり貯まっている。


 豪快に200ポイントを使い、全穫状態にした。




[従者果実 収穫画面]


 保有調教ポイント:290


西園寺さいおんじ耀ひかり 果実一覧 

 ・

 ・

 ・

 〈基礎 果実5〉【HP 経験点中(×2)】  必要調教ポイント:50 収穫日数:1日 →収穫OK! 


 〈基礎 果実6〉【MP 経験点中(×2)】  必要調教ポイント:50 収穫日数:1日

 →収穫OK! 


 〈基礎 果実7〉【敏捷 経験点中(×2)】 必要調教ポイント:50 収穫日数:1日

 →収穫OK!

 

 ・

 ・

 ・


― ― ― ― ― 



 西園寺の方も、全部が収穫可能な状態だ。

【HP・筋力・耐久+3】【MP・魔力・魔耐+3】【敏捷・器用+4】の【調教ツリー】。

 それらを解放したために増えた3つの果実も、合計150ポイントで収穫可能にしてある。

  


「じゃあ、始めるぞ?」


「……はい」


「 ? ええ」



 羞恥心で顔を真っ赤に染める西園寺。

 そしてそれを不思議そうに横目で見る東條。


 ……あっ、これもしかして、この先のことは――



 ――だがそこまで察したが、時すでに遅し。


 

【従者果実】の収穫が始まってしまう。


 最初に。

 いつも通り、西園寺の胸元から赤い光の点が飛び出してくる。

 まるで胸のとがった先っぽから、赤い果実が収穫されているかのようだ。

      

 口の中にフレッシュないちごの味が飛び込んでくる。

 直後に甘いミルクの味がして、口内でいちご・オレの完成だ。



「えっ?――」



 一方の東條はというと。

 西園寺の身に何が起こったのかわからず、思考停止したように綺麗な口が空いていた。

 

 そしてその大きく育った立派な胸の先から。

 鮮やかな青紫色をした光の粒が、連続して押し出されてくる。


 

「なっ、えっ――あっ、ちっ、違うの! これは、私とは関係なくて! そういう、母乳が勝手に出ちゃう体質とかじゃないのよ!?」



 なにを勘違いしたのか。

 東條は見たことないほど真っ赤になって慌てて、よく分からない弁明をしていた。


 両腕で抱きかかえるようにして、こぼれそうな巨胸を隠そうとする。

 だが無慈悲にも、その手から果実は漏れ出てきた。

   

  

 口の中。

 さわやかな酸味と甘味が、バランスよく駆け抜ける。



 ――これは、ブルーベリーっ!!


 

 アントシアニンパワーたっぷりで、アイに良い果物。 

 それが東條のパイから収穫されたというのか!?



 ――だがそれだけでは終わらなかった。



 遅れて、酸味あるトロリとした乳味を知覚する。

 先に訪れたブルーベリーと合わさり、それは既知の馴染み深い味へと変化した。



 ――ブルーベリーヨーグルト味、それも飲むヨーグルトタイプ、だと!?



 フレッシュな味わいでゴクゴク飲めてしまう。

 美味い、美味すぎる。


 西園寺とはまた違った、素晴らしいテイストだった……。 

 

 だがそこでハッとして、二人へ視線をやる。

  


「うぅぅ……」


「……むぅ~!」

 


 小動物のように体を縮めて、胸元を控えめに手で隠す西園寺。

 上目遣いで見てくる姿はあまりに可愛らしく、庇護欲を嫌でもかきたてられた。

 

 そして東條は真っ赤な顔でしゃがみ込み、両腕で胸を抱き隠すようにしている。

 何か不満を訴えるようにこれまた上目遣いで睨んでくるが、とても可愛らしい仕草に映ったのだった。



 ただ二人の機嫌をなおすには、少し時間がかかりそうだな……。  


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