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第5話 遊園地デート中編 side:博樹



「もう、怖がりすぎでしょ」


「あの、頂上で浮く感覚がダメなんだよ」


 大人気のジェットコースターに並びたくないということで、俺たちは最初にそこに乗り込んだ。


 俺はジェットコースターが得意ではなくて、小さい頃は乗れなかった。光里がおじさんたちと乗っているのを下から見ていた。


 成長した今ではなんとか乗れるようになったが、ついつい絶叫してしまう。ちなみに、光里はジェットコースターが大好きだ。


「あれは、絶叫させるアトラクションだから、俺が正解なんだ」


 俺の愚痴に、光里は笑っている。強者はいつも弱者を理解しない。


 メインのものを2回、サブのものを1回乗ったので、時刻は12時手前だった。俺は叫び疲れて、お腹も減ってきた。


「早めに食べる?」


 それを察したのかはわからないが、ちょうどいい誘いだ。


「ああ、そうしよう」


 ジェットコースターのところから、飲食ゾーンまで移動する。この混み具合だと、早めのタイミングでもそれなりに待つかもしれない。


「見てよ、これ」


 光里が見せてきたのは、俺の間抜けな顔だった。周りを気にせずに叫んでいるようで、なんともカッコ悪い姿だ。


「ど、どこでこれを」


 催眠術で強制されたわけではない、俺の単なる間抜け顔だ。普通に恥ずかしい。


「途中にカメラがついてたみたいで、あそこで買っちゃった」


 確かにそういう写真撮影を売りにするアトラクションもある。あのジェットコースターもその1つだったようだ。


「博樹がへばってる間にね」


 くう、その時点で気づいていたら阻止したのに。俺に知らせなかったのは、そのせいだろう。


 言い合っている間に、目的地についた。だけど、レストランは大混雑で、全然落ち着いて食べることができなかった。味の方は普通だった。


「ごめんね」


「光里が謝ることじゃない。俺たちはアトラクションを楽しみに来たんだし」


 美味しいご飯や素敵な雰囲気のレストランを求めてきたわけではない。アトラクションは満足しているから、大丈夫だ。


「うん、ありがと」


 少し気落ちしている。プランの作成をしたから、責任を感じているのだろう。気にしなくていいのに。


 光里は手帳をめくって次の予定を確認している。


「次はお化け屋敷、だね」


 お化け屋敷か。意外な選択だな。


 光里はお化け屋敷が苦手なのだ。小学生のときは絶対に入らなかったという記憶がある。


「いいの。私も高校生だし」


 俺がジェットコースターの乗れるようになったように、光里も成長している。そういうことならいいだろう。


 ……。


 という話はいったい何だったのか。あれか、壮大な前振りなのか。いつから光里は芸人なったんだ?


「ひろきぃ」


 あ、当たってるぞ。やっぱり、見るのと触れるのでは全然違う。あ、いや、いつも見ているわけじゃない。あれだ、視界にどうしても入ってしまうんだ。


 光里は両腕を使って俺の左腕を掴んでいる。最初は余裕そうだったが、予想外の場所から人が飛び出してきてから、ずっとこの状態だ。


 俺としては役得だから嬉しい。きっちり脳内に保存しておく。


 その、涙目で上目遣いをしながら、存在感のある膨らみを大胆に押し付けるのは、心臓に悪すぎる。早死にしそうだ。


「そろそろ、出口だ」


「やった!」


 顔を眺めていた俺は、しおらしい笑顔にまたも心を打ち抜かれた。


 光里は可愛すぎる。


「何か言った?」


 やばい、口に出てたか?


「気のせいじゃないか?」


 お化け屋敷なら空耳も多いだろう。誤魔化されてくれるはずだ。


「出口だ!」


 会話を続けるのではなく、光里は出口に一直線に駆け出した。腕は解かれた。名残惜しい感触に手が空中で空振りする。


 しかし、すぐに手が握られた。俺は、手を引かれて光里についていった。




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