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第4話 遊園地デート前編 side:博樹



 友人曰く、今週の俺はおかしかった。テンションが乱高下していたそうだ。


 俺自身にもその自覚がある。光里と出かけると想像していたからだ。


 光里が付き合っているという噂が本当なのか、だとしたら俺とのお出かけは単なる下見なんじゃないか。


 でも、好きでもない人と遊園地にはいかない。実は俺のことが好きじゃないのか。それとも、ただの幼馴染なのか。


 幼馴染としての関係を優先するといっても、その決意は弱いもので、俺は光里への想いを止められない。


 まあ、好きな女の子とのお出かけが楽しみすぎて浮ついているという面もある。我ながら、単純な男である。


 絶対に変なことをするなよと念押しされて、俺は金曜日に友人たちに見送られた。俺には信用がなかったらしい。


 そして今、俺はランド入り口の広場で光里を待っている。隣の家だけど、わざわざ入口の前で待ち合わせているのだ。


 なんだかデートっぽい。こういうところも俺がデートだと勘違いしてしまうポイントだ。


 初めてのちゃんとした女子との「お出かけ」について着ていく服がわからず、シンプルな服装にした。


 黒いスキニーパンツに白い半袖シャツ。青いカーディガンを羽織っている。靴も新しめの落ち着いたスニーカー。


 みんな持っているナ○キのボディバックに諸々を入れてきた。いくら財布に入れておけばいいんだ?


 友達と出かけるときは適当な服でも怒れられることはないし、そういう服で来るやつも多い。俺も普通の服装だ。


 でも、今日は遊園地へのお出かけで、幼馴染とはいえ好きな女の子と2人なわけで。


 とりあえず、ネットで検索しまくった。あとでバレないように、「デート 男子高校生 ファッション 夏」などの履歴はきれいに消した。


 記憶を覗かれたり直接質問されたりすれば、結局は隠しようがないけど、せめてもの足掻きである。


 ワックスを使って髪型を整えて、俺は早めに家を出た。男が先に着いておくものだと思ったからだ。


 集合時刻の30分前ぐらいに着いて、待つこと15分。スマホを使うとなんか感じ悪いかなと思って、時刻とメッセージを見るだけにしていた。


「ひろきー」


 この声は光里だ。俺は声のした方に向かって歩き、光里を見つけた。


「ごめん、待った?」


「ううん、いま来たとこ」


 すごい、俺たち彼氏彼女してる。夢みたいだ。


 俺は光里の服を見た。


 今日のファッションは、ハイウエスト?のミニスカートにフリルの付いた白いシャツ。スニーカーは可愛い系だ。


 たまに見る光里の私服とは全然違って、今どきの可愛い女の子みたいだ。というか、俺の妄想が現実になったように感じる。


 頭のてっぺんからつま先まで俺の好みが反映されている。心臓がバクバクして、口を開けられない。重たい石が載っている。


 あっ、笑った。まるで俺が喜んでくれて嬉しいみたいだ。俺の勘違いだろうけど。


 ええい、男は勇気。


「光里、すごく可愛い。いつも可愛いけど」


 どうだ、言ってやったぞ。言いたいこと、簡潔に言ってやったぞ。


「博樹もかっこいいよ」


 俺の言葉に顔を赤らめて、手をグッと握ってから、俺を上目遣いに見つめて、光里は小声で言った。


 お互いの目線が合ったのは一瞬で、でも何時間にも感じて、さっと目線を逸らした。


 こいつ、可愛すぎる。こんな顔、他の誰にも見せたくない。俺は早く列に並ぶことにした。


 話すことをたくさん考えてきたはずが、さっきので全部吹き飛んで、変なやりとりを続けた。情けない。


 俺がもっと成長すれば、スマートに会話できるのだろうか。


 チケットを見せて中に入ったので、光里に問いかけた。


「今日はどうする?」


 一応は俺の方でもプランを立ててきた。それが光里の好みに合うかはわからないが。


「計画はバッチリ」


 手帳にはぎっしりと予定が書かれていた。書き込みがたくさんあって、考え込まれていることがよくわかった。


 もし下見だとしたら、イケメンボーカルは幸せだろう。俺と代わってくれ。


「じゃあ、行こう」


 俺はそのスケジュールに従うことにして、歩き始めた。とにかく、今日は遊園地を楽しもう。


 俺の少し後ろを歩いている光里のことが気になり、チラ見する。光里は手をおずおずと差し出していた。


 そんなことすると、本気にしちゃうぞ。いいのか?


 俺は無言で手を差し出した。少しずつ距離を縮めて、その手に触る。


 今日の俺は一味違う。言い換えると、ネジが吹っ飛んでる。それもこれも、全部光里のせいだ。責任とってくれ。


 いわゆる恋人繋ぎ。小さい幼馴染ではなく、遊園地で2人でデートする高校生として、恋人繋ぎ。


 光里が小声で何か言った。聞き取れなかったけど、握り返されたから、受け入れてくれた、と思う。


 気分を幾分かさらに高揚させて、俺はデートに繰り出した。



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