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第3話 誘い side:光里



 博樹の目は正気を失って、自分の力が効いていることを実感する。


 私はスマホのタイマーをかけて、いつもの指示を出す。


「私の指示があるまで、私を好きか絶対に言わないで」


 博樹の気持ちを急に言われるのは避けたい。臆病な私の本音だ。


「わかった」


 催眠術を使っても博樹は喋れるし、目だっていつものように戻せる。融通が効く力である。


「ねえ、なんかいい感じのやつやって」


 催眠術をかけるようになってかなり経つ。私は、やりたいことをあらかたやってしまったのだ。


 私は、私に対する気持ち以外、博樹のことはなんでも知っているし、なんでもやらせてみた。撮った写真は私だけの秘密だ。


 私の指示に従って、博樹はゆっくり私に近づいてきた。何をするんだろう。


 すると博樹はベッドに腰掛けた私を、あっという間に押し倒した。


「きゅ、急になにを」


 私が言い切る前にベッドに手をついて、30センチほどに顔を近づけて、私と目を合わせる。


「光里、好きだ」


 ……。


 はっ。キュン死寸前の状態になっていた。自然と私は目をつぶって、完全にキス待ちの顔に。


 慌てて目を開けるとまだ博樹はそこにいて。


「好きだ。愛してる」


「だめだめだめー!」


 私の叫びに催眠状態の博樹は体勢を元に戻した。あっ、ちょっと残念。


 違う、そうじゃない。


「なんでこんなことしたの」


 私の指示は曖昧だから、これは博樹の深層心理が原因。つまり、博樹が悪いのだ。


「あの少女漫画が好きなんだろ」


 それはこの前、博樹に話した漫画だ。最近、私の友達の間で大流行していて、話題にしたと思う。


「だからって急にされたら困る」


 私が死んじゃう。心臓に悪すぎる。


「ごめん、光里が好きかと思って」


 好きだけど、超好きだけど。博樹にされたいけど。それは、催眠状態の博樹ではないのだ。


「と、とにかく禁止」


「わかった」


 え、でも、博樹が深層心理で私にしたいってことは、やっぱり博樹って私のこと。


 だって、博樹の小さい時の思い出って私の話ばっかりだし。それ以外の記憶全然なかったし。


 小学校でも、みんなに夫婦って言われても、私とならなんか嬉しかったって記憶してたし。


 わ、私がいたから、城北高校受けたんでしょ。私とのツーショットが宝物なんでしょ。


 それって、もう好きじゃん。私のこと大好きじゃん。


 でもでも、もし違ったら。私なんて好きじゃないって言われたら、私もう生きていけない。どうすれば!?


 その後も私は悩み続けた。


「終わったのか」


 気がつくと、制限時間の1時間が経ってしまった。また今日も聞けなかった。


 私、今日こそは絶対に聞いて、絶対に成功する状態で告白するって決意したのに。また先延ばしにしちゃった。


「今日もバッチリ」


 うう、いつも通り嘘をつく。私は、博樹の弱みを握っていると誤魔化している。正直に言ったら、告白になってしまう。


「そうか」


 博樹はなんともいえない表情だ。催眠術にかかるのはちょっと怖いらしいので、私は明るく振る舞うようにしている。


 そして、私は勇気を振り絞った。


「ゆ、遊園地行かない?」


 しまった。これじゃあ意味不明だ。今、そんな話をしてなかった。


「遊園地?」


 案の定、博樹は不思議そうだ。何か言い訳を考えないといけない。


「そう、よく行ってたでしょ、ランド」


 このあたりでランドとは、近所にある家族向けの中規模遊園地のことだ。舞浜にあるネズミの国ではない。


 いつか、いつか絶対に2人でそっちも行くけど。それはまだ先の話だ。


「ああ、行ったな」


 小学生のときは家族ぐるみでよく遊んでいて、ランドは定番の場所だった


 博樹もそのことは覚えていて、私と交換したお土産が大切に保管されていることもすでに知っている。初めてそれを聞いたときは、嬉しかったなあ。


「いいよ、行こうか」


「ほんと!?」


 なんだ、こんなに簡単に上手く行くなんて。私、勇気出してよかった。


「来週の日曜日、午前10時で」


 ふふ、気持ちは聞けなかったけど、予定は聞いておいたのだ。


「ああ、わかった」


 やった、博樹とデート。2人で遊園地デート。そして、私はランドで博樹に告白する。


「じゃあ、またね」


 今から日曜日が楽しみだ。




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