表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/13

第5話 遊園地デート中編 side:光里



「もう怖がりすぎでしょ」


「あの、頂上で浮く感覚がダメなんだよ」


 絶叫系が好きな私は、早くもグロッキーになった博樹をからかっていた。


 昔から博樹はこの手のアトラクションが苦手で、小さいときは何度も乗る私を地上で待っていた。


 私は一緒に乗って楽しみたくて無理に手を引っ張っては、お父さんに怒られていた。


「あれは、絶叫させるアトラクションだから、俺が正解なんだ」


 弱者が言い訳を吐いている。その気分が悪そうな顔で言っても説得力が皆無だ。


 まあ、毎回へとへとになって私の肩を借りる博樹は面白かったから、もう1回乗らないのは許してあげる。まだ私は満足していないのだ。


「早めに食べる?」


 今から他のアトラクションに並び始めると、昼時を逃してしまいそうだ。何だか、食べるところも混みそうな感じだから。


「ああ、そうしよう」


 博樹の同意を得られたので、私たちは飲食ゾーンまで移動する。この混み具合だと早めに来たのは正解だったと思う。


「見てよ、これ」


 私は、永久保存が決定している写真を見せた。


「ど、どこでこれを」


 博樹の寝顔はたくさん撮ってあるけど、こういう間抜けっぽい顔はレアだ。案の定、博樹は慌てている。


 普段のかっこいい顔も好きだ。でも、寝顔や子供っぽい顔も好きだ。つまり、私は博樹が大好きだということ。


「途中にカメラがついてたみたいで、あそこで買っちゃった」


 私がお茶目に言うと、最終的には博樹は許してくれる。博樹は私には甘い。


 どのタイミングって顔をしている。私は先んじて答える。


「博樹がへばってる間にね」


 ベンチに座らせたときも上の空だったから、チャンスだと思った。気付かれたら邪魔されちゃうからね。


 目的地に着くまでに消してくれってうるさかったから、つい言い争いになってしまった。


 博樹が何と言おうと、絶対に消さない。お互いにおじいちゃんとおばあちゃんになっても、今日の写真を見せて、あのときの写真だねって笑い合うことになる予定。


 そう、私は今日、ずっと大好きだった博樹に告白するのだ。


 それを意識するといつも通りに振る舞うのが難しかった。事前に見つけていたレストランは大混雑で、落ち着いて食べることができなかった。


 ネットの情報は、必ずしも当たらない。やっぱり、下見した方が良かったかな。


「ごめんね」


「光里が謝ることじゃない。俺たちはアトラクションを楽しみに来たんだし」


 博樹に慰めてもらうと、いつでも気分が回復する。私にとっての薬だ。


「うん、ありがと」


 今日は私が誘ったんだから、私がしっかりしないと。手帳をめくって予定を確認する。


「次はお化け屋敷、だね」


「大丈夫か?」


 私がお化け屋敷が苦手だから、心配なのだろう。昔の私のことを覚えていてくれて、嬉しい。


あの頃、博樹は怖がる私を無理に連れ込むことはしなかった。そういうとなんだか私がわがままみたい。子供ってそんなものだけど、博樹は昔から優しいんだよね。


「いいの。私も高校生だし」


 これは建前。本当はちょっと怖い。でも、私が可愛く怖がって博樹に頼り、女の子らしさをアピールするという計画だ。


 漫画にもたくさん出てくる定番シチュだし、効果ありそう。


 ……。


 という計画は、所詮は女子高生の浅知恵だった。漫画は、現実にはないから漫画になるのだ。私はそれを忘れて、乙女思考をしていた。


 初めは、わざとらしく怖がって、博樹をからかっていた。そして、徐々に怖くなった振りをして計画を実行していった。


 両腕を使って博樹の左腕を掴み、顔を見る。


 わかりやすく顔が赤くなり、私の腕や胸や顔をチラチラ見ていた。全部バレてるから。他の誰にやられても嫌だけど、博樹に見られると嬉しい。


 でも、途中で人が変なところから出てきて、びっくりして、怖くなってしまった。余裕がなくなって、博樹の腕をぎゅっと掴む。


 博樹の体温と匂いに、私は少し安心する。それでも、怖いものはこわい。


「ひろきぃ」


 前を見ている博樹はいつも通りだ。頼もしいような、私の1人相撲が虚しいような。


「そろそろ出口だ」


「やった!」


 やっと終わりだ。しばらくお化け屋敷には入りたくない。


「何か言った?」


「気のせいじゃないか?」


 何か喋った気がしたんだけど、気のせいか。緊張しすぎみたい。


「出口だ!」


 私は、博樹と一緒に出口に駆けていった。




ブックマーク・高評価をいただけると嬉しいです。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ