13 実技と能力開発
エミリーとの買い物デートに行った日の翌翌日。
冬用のバトルウェアに着替えた非魔法学科の面々。
昼下がりの学園の庭で、彼女達が実技に備えていた。
この日は実技試験当日だ。
シャネルは能力を発動出来るようにイメージトレーニングをしていた所。
「どう?」
「まだ」
能力の事を尋ねたエミリーへ、首を横に振って答える。
「まあ、頑張って」
「ありがとう」
頑張ろうと、シャネルは思う。
──私の相手はソフィ·ベルナールさん
事前に対戦相手は伝えられていたらしい。
エミリーの相手は、オリヴィアだ。
そしてシャルロットの相手が、デルフィーヌだ。
其々が実技に備え最終チェックを行う。
するとそこへマドレーヌがやって来て、タイミング良くチャイムが鳴る。
そして実技試験開始。
「では、早速始めます」
──授業開始の合図を出すと。
先ず最初の組は、シャルロットとデルフィーヌだ。
「手加減はしない」
「妾こそ、手加減無しでいくのじゃよ」
向かい合う二人。
お互いに本気を見せ合う。
「行く」
「来い」
身体能力を強化し、シャルロットの移動で突風が発生する。
そしてデルフィーヌと目と鼻の先に姿を表す。
現れたシャルロットは、突風を纏った殴りで吹き飛ばそうと動く。
直後──聖なる力を纏ったデルフィーヌが、突風を薙ぎ払う。
それからシャルロットへと仕掛け──
シャルロットとの距離を零に迄縮め、聖なる力を纏った蹴りを食らわす。
回避することすら叶わない。
諸に食らい、体が勢い良く吹き飛ぶ。
口端から血を吐く。
血を拭うと、再び相手が仕掛けてきた。
デルフィーヌの聖なる攻撃を、間一髪で全てを躱す。
「妾の攻撃を躱すは、相変わらず強いのじゃ」
とデルフィーヌが呟く。
再び相手が仕掛けてくる。
迫る次の攻撃を前に、シャルロットは──
「鳥さん、お出で」
シャルロットのもう一つの能力である鳥を操る能力だ。
ランダムに一度だけ鳥を呼べ、従わせることが出来る。
一日に最大三回まで呼ぶことが出来るのだ。
今回呼び出したのは、オオギワシ。
姿を表したオオギワシは、デルフィーヌを襲う。
それを聖なる力で受け流そうとするも…
「何じゃと!?」
受け流しきれず、オオギワシに今度こそ襲われてしまった。
「ぐあっ···」
──攻撃を食らい、身体中を痛みが襲う。
痛みを耐え凌ぐと、デルフィーヌは新たな一手を打ち出す。
空間に絵を描き始め…
描き上がった#鳥籠__キャージュ__#が具体化した。
鳥籠にオオギワシとシャルロットを閉じ込める。
それだけでは終わらない。
鳥籠が次第に縮小していき、押し潰された。
勝負あったと思いきや、まだまだ平気な様子だ。
「渋いのじゃ」
不満を漏らすデルフィーヌ。
そんなデルフィーヌに、軽い傷を負ったシャルロットが迫り…
──再び鳥を呼ぼうとした。
しかし、それよりも先にデルフィーヌが絵を描き出す。
描き出したのは、巨大な古代兵器。
描かれた巨体古代兵器が、シャルロットを抵抗させる間もなく襲う。
──グチョッ
「···ッ!」
骨が軋み、そして肉片が飛び散る。
マドレーヌが急いで蘇生魔法を使い、肉体をもとに戻す。
「チッ、負けちまった」
「やはり妾の方が強いのじゃな」
悔しさのあまり舌打ちをしてしまい、そんな少女へ余裕な表情で言い放つ。
それから次のペアで実技が行われた。
そのオリヴィアとエミリーの方は。
「宜しく」
「宜しく~」
二人は短く挨拶を交わす。
それから動き出した。
エミリーは水を纏う。
纏った水が竜巻となって、オリヴィアを襲う。
「そんなものか」
そう言って風を纏うと、風向きを変えた。
それによって、水の竜巻はエミリーの方へと一周して戻ってくる。
間一髪の所で何とか回避出来たようだ。
直ぐに次の攻撃を発動。
纏った水が蛇の形へと変化し、オリヴィアを食らう。
すると愛用の銃を構えたオリヴィアが、水の蛇を狙う。
──バンッ
放たれた弾は、水の蛇貫通していく。
水の蛇は消え、同時に纏っていた水も消えた。
その隙にオリヴィアが仕掛ける。
疾風を纏った刀で、エミリーを薙ぎ払う。
そして宙を舞う。
宙に血色の花が咲く。
薙ぎ払われたエミリーは、腹部から出血しながらも、身を捻って落下の衝撃を殺す。
「はあはあ」
──息が荒い。
息を荒らげるエミリー。
その隙にオリヴィアが地面に花を咲かせた。
咲いた花々は地に足の着いたエミリーを襲う。
止血してない腹部の傷口が拡がっていく。
咲いた花にベッタリと血が飛び散った。
マドレーヌがエミリーへ駆け寄って、回復魔法を使う。
「以外と早く蹴りが着いたね」
「わたしって全然駄目だった~」
悔しそうな素振りを見せるエミリー。一年間一度もないのだから無理もないだろう。
続いてシャネルとソフィの方は。
「宜しくお願いします」
「宜しくね」
二人は短く挨拶を交わす。
それから、お互いに動かないまま暫く経つ。
──自分の中に秘めているものを出すような
と昨日言われたことを何度目になるか繰り返す。
全然仕掛けてこないことに痺れを切らせ、ソフィが動き出した。
シャネルとの距離を詰めると、能力を発動する。
全身を燃え上がる炎を纏い、シャネルへと火を放つ。
躱そうとするも、間に合いそうにない。
──行成りヤバイ。始まって早速負けるなんて嫌
首をブンブンと振って。
──何か、何かないのか。必死に考えてると。
火が迫ってきていて…
これで終わりかと諦め掛けていた
──まさにその時だ。
脳裏に浮かんだのは何故か氷だった。
すると上空から大粒の氷が、迫る火へとどんどんと降っていく。
火は掻き消されてしまい。
「あ! あれがシャネルさんの能力….凄い」
エミリーは迚嬉しそうだ。
「あの能力凄いわ。アタイの火を掻き消すなんて」
ボソッと、ソフィは独り言を言う。
続いてソフィへと、氷が降り注ぐ。
「ゴアッ…」
氷で貫かれた肩や背中に、凄まじい痛みが走る。
未だこれでは終わらない。
脳裏に氷の剣を思い浮かべると、実際にそれが現れた。
「そう簡単にはさせない」
ソフィの右手に現れたのは、業火の炎を宿す、業火の剣だ。
絶氷の剣と業火の剣がぶつかり合う。
業火の威力か増すと、その倍の威力を絶氷が増す。
次第に業火の威力が弱まって行く。
軈て業火の剣が完全に消え、ソフィは氷の斬撃を食らう。
「ぐあっ……!」
バトルウェアを貫通する程の威力だ。
斬られたソフィは、呻き声を上げその場に倒れ込む。
マドレーヌが直ぐ様ソフィへ駆け付け、蘇生魔法を使う。
「何て言うか、凄かったな」
「私も吃驚しました」
思い返しながらその凄さを伝えるソフィへに、等の本人さえも驚く様子を見せる。
「シャネル·ネージュさん、お見事です。凄いですね」
「そうですか。あれだけ頑張ったんだから、当然です」
先生に褒められたシャネルは、ぺったんこな胸を張って言う。
「では、もう一戦行きましょう」
そう先生が言うと、別のペアで実技が行われた。
組み合わせは、エミリーとシャルロット。オリヴィアとソフィ。シャネルとデルフィーヌという感じだ。
シャルロットとエミリーの実技は。
初盤から発熱していて、能力と能力がぶつかり合う。
シャルロットの殴りをギリギリの所で躱し、仕掛ける。
その仕掛けを掻い潜ると、再び攻撃を仕掛け…
何度も繰り返す内に、エミリーが弱っていき、シャルロットが有利となって、そして勝利した。
続いてオリヴィアとソフィの方は、オリヴィアが風と花、愛用の銃でソフィを圧倒した。
「宜しくお願いします」
「宜しくなのじゃ」
向かい合って、二人は短く挨拶を交わす。
空間に絵を描き始めたデルフィーヌ。
すると現れたのは、漆黒の狼だ。
漆黒の狼がシャネルに食らいつく。
しかし、食らいつく寸前で氷に串刺しにされてしまい。
「中々やるのじゃな」
そうシャネルを褒める。
再びデルフィーヌが空間に絵を描く。
具体化されたのは、巨大な人型兵器だ。
巨大な人型兵器が、シャネルを押し潰そうと巨腕を振り下ろす。
──流石にこれなら、効かないのじゃないのじゃか?
等と思っていると。
──あんな巨大な人型兵器を壊せる位の氷…
と頭の中でイメージを膨らます。
巨腕が等々振り下ろされた。
しかし押し潰されることはない。
何故ならば、巨大な人型兵器の腕が凍り付けにされ、全身に迄氷が広がってきたのだから。
「何と言う事なのじゃ」
驚きを隠せないご様子のデルフィーヌ。
そんなデルフィーヌもまた凍り付けにされてしまう。
──勝負有りだ。
マドレーヌが火の魔法を使って凍り付けのデルフィーヌを救うと。
「妾に勝つとは中々のものじゃ。お主に興味が沸いたのじゃ」
「そう言われると、嬉しいです」
シャネルへ駆け寄ってきたデルフィーヌは目をキラキラとさせていた。
その反応に満足げな様子のシャネルであった。
「では実技はここ迄にします」
マドレーヌが実技の終了を伝えると、その場から立ち去り…
「私達も部屋に戻りましょう」
五人は学生寮へ向かって歩いていく。




