⑫「オフ会」
結局、次の決勝戦で負けてしまった【まぐまぐと愉快な仲間達】だったが、そこまで積み重ねてきた生存率と勝率のポイント差でリーグ戦三位が確定した。今回はゲーム制作会社主宰のトーナメント大会という事もあり、副賞が有るらしいのだが……その時まで詳しく知る機会が無かった。
《 新着メッセージが一件あります! 》
大会終了から二日後、仕事中の俺のスマホにメールが送られて来た。八雲からかと思いながらメールを確認すると、パーティーリーダーの【まぐまぐ】からだった。
《 この度は【 ALL KILL ONLINE 】ゲーム大会に御一緒して頂き、有り難う御座いました! 》
丁寧な書き出しから始まったメールの内容は、次第に熱を帯びてくる。
《 ……な、なんと副賞というのが!! ネット共通ギフト券だったんです!! いやぁ~、太っ腹な主催者で良かったね~♪ 》
と、そこまでは読み飛ばしても別に問題は無かったが、その先に書かれていた内容に、俺は少しだけ困惑してしまった。
《 ……でも、受け取れるのはパーティーリーダーの私一人だけらしいんです!! これにはちょっと困ってしまいますよね……だって、私ったらリーダーといっても名ばかりだし、【クロクマ】さんや【YAGU-ふりる】さんの住みも知らないですし 》
《 だから、もし良かったらお互いの在住県くらいまで公開して、近かったら会って直接手渡したいんですが、どうでしょうかねぇ? 》
……まあ、俺は別に構わないが、八雲が果たして大丈夫かと心配する。相手が【まぐまぐ】なら、間違いなく女性だろうから八雲は拒否反応を示しはしない。でも、まあ……大丈夫かな?
「……ご免なさいっ!! あの時は嬉しくてちょっとテンパってました!!」
ちょっとだけぽっちゃり系の【まぐまぐ】サンはそう言いながら手を合わせ、でも笑顔のまま俺に向かって謝罪した。
俺と彼女が互いに在住県を教え合った結果、隣県同士だと判明した。つまり、俺と八雲、そして【まぐまぐ】はほぼ隣接した地域に住んでいたのだ。但し、同じメンバーの【ひら☆彼氏】と【ひら☆彼女】の二人はちょっと離れていて、今日この場には来ていない。
「それにしてもふりるサンが、こんな可憐な女の子だったなんてねぇ~! 正直ビックリしたわ!」
【まぐまぐ】はそう言うと、助手席に座ったままで俺達の話を聞いていた八雲に向かって手を振った。そして、俺の方に視線を戻すと、
「……それで【クロクマ】さんはイメージ通りだったし~!」
そう言って可笑しそうに笑う。何が面白いのか判らないので、俺は微妙な顔になっていたのだろう。【まぐまぐ】は急に真顔になると、
「……あ、ごめんなさい。ちょっと私だけテンション上がり過ぎよね……」
そう言って黙ってしまった。流石に俺も大人げないと思い、
「いや、気にしなくていいですよ。ほら、やく……彼女は軽い対人恐怖症なので緊張しているだけだし」
そう言って【まぐまぐ】を安心させる。しかし、隙を突いて彼女が繰り出した鋭い言葉は、やはり女の勘って奴なのだろう。
「そうね、判った! ところで二人はやっぱり付き合ってるの?」
「……そう言うと思ったよ。まあ、一応付き合ってるんだ」
ああ、やっぱりと言いたげな表情になると、漸く手に持った封筒を差し出して、
「じゃあ、これは二人の分。中身は見てのお楽しみ!」
そう告げてから、自分の車に乗り込もうとしたが、振り向いて言った。
「……そうそう! 良い機会だから折角だからオフ会しない?」




