漫才「ダイイングメッセージにも風情を」
A:ツッコミ
B:ボケ
A「どうもーよろしくお願いいたします」
B「皆さーん!!!ダイイングメッセージにも!!!風情が必要だと思いませんか!?!?!?」
A「……」
B「……(Aの方を向いて顔を近づけながら)ダイイングメッセージにも!!!」
A「うるさいうるさい!! ボリュームおかしいよ!」
B「ちゃんと時間内に収めますって」
A「コンテンツのボリュームじゃねえよ!」
B「(客席の方に向き直る) 皆さんも、ダイイングメッセージには風情が欲しいですよね!?」
A「………」
B「………あっ、ダイイングメッセージというのは被害者が血文字とかで遺す事件の手がかりで」
A「言葉をご存知ない訳じゃないんだよ!ポカンとされてる理由はそこじゃない!」
B「いやね、僕ドラマや漫画でずっと気になってたんですよ。ダイイングメッセージって味気なくないすか」
A「味を求めるもんでもないよ」
B「まず簡潔でしょ」
A「死の間際だからね」
B「たまに途切れてるでしょ」
A「死の間際だからね」
B「色も一色しかない」
A「赤以外遺せねえんだ人間は」
B「分かってますよ?死の間際だから長文を遺せないのは」
A「俺が言ったよそれ」
B「でもだからこそ最後にひと花咲かせたいじゃないですか」
A「シンプルに手がかりを遺してくれ」
B「よって僕は、ダイイングメッセージを五七五で遺すことを提案します!」
A「……五七五?」
B「そしたらコンパクトにまとめつつ風情も生まれるでしょ?」
A「どうかなぁ」
B「じゃあ実際にやってみましょう。あなたは警察をやってください。僕はダイイングメッセージを遺した幽霊をやります」
A「………!?!?(戸惑いながらも警察官役を始める)」
A「被害者は若い男性か…」
B「(後ろからAにつきまといながら) ウ~~~~……」
A「これは…血文字で何か書いてある!なになに…」
B「ウ~~~~~~~…」
A「淡き恋 破れし者の 恨み節」
B「……………」
A「……………どういうことだ?」
B「つまり僕に振られたリツ子が僕を恨んで」
A「解説をするな!!!」
(マイクの前に戻る)
A「幽霊!!! 解説をするな!!!」
B「だって分かってなかったから」
A「実際の被害者はそんなズル出来ねえんだよ!」
B「でもわずか17文字で恋愛沙汰の事件だとは伝わったでしょ?」
A「…あなた、リツ子さんに殺されたんだって?」
B「はい」
A「じゃあ『リツ子』って書けや!!3文字で済むわ3文字で!」
B「風情がないし…」
A「それで情報量薄まったら本末転倒だろうがよ!…せめて犯人の名前が分からないケースにしてくれる?それだったらまだ五七五で遺す意義を検証できるからさ」
B「なるほど」
(再び警察官役と幽霊役に分かれる)
A「被害者は若い男性か…」
B「………」
A「これは…血文字で何か書いてある!なになに…春風と ともに去りゆく 想い人……どういうことだ?」
B「(後ろからAの肩をガシッとつかむ) ウウウ~!」
A「うわあっ!?ゆ、ゆ、幽霊!?」
B「ウウ!ウウ~!(床の別のところを指さす)」
A「えっ?(視線を落とす)……過ぎ去りし 夏の思い出 えがく夜」
B「ウウ~!(さらに別のところを指さす)」
A「秋風と ともに舞い込む ヤな知らせ」
B「ウウ~!(さらに別のところを指さす)」
A「冬になり 裏切り者が 現れる」
B「ウ…ウ…(次を探してキョロキョロする) ウウ~」
A「(Bの後頭部をはたく)17文字に収めろ!!!」
(マイクの前に戻る)
A「何?いま4, 5箇所に遺してたよね?」
B「はい」
A「当初のコンセプトは?」
B「風情を出しつつコンパクト」
A「とっ散らかってんじゃねえか!しかもだんだん雑になってった。何?『ヤな知らせ』って」
B「もう死ぬから言葉を選べなくて」
A「最初に俺言ったじゃん、死の間際に考える時間ないって」
B「でも風情はあるでしょ、『ヤな知らせ』は秋の季語」
A「ウソをつくな!秋に謝れお前!…しかも最後キョロキョロしてさ、どこに遺したか分からなくなってたよね?」
B「はい」
A「リスかお前は」
B「リスじゃないでーす!!れっきとした人間です!!!」
A「強く主張するとこ今じゃないだろ」
B「じゃあ、あと1個!最後にこのダイイングメッセージだけでも見てほしい!(手のひらに書いてBに見せる)」
A「なになに……淡き恋 破れし者の 恨み節 …最初に遺したやつじゃん」
B「よく見て」
A「なに」
B「きれいな緑色」
A「人間ですらねーじゃねえかお前!!もういいよ」
A&B「ありがとうございましたー」




