鍵で開くのは何ですか?
鍵を見つめる人の話。
机の上に置いていた鍵がふと目につき、指で弄ぶ。
読みかけの本には栞を挟んでいるから大丈夫。
綺麗な形の鍵は、アンティークショップで買ったものだ。
首に下げられるようにチェーンが通されたその鍵は俺にとって大事なもの。
チェーンを持ち上げ、空中に浮き上がった鍵を見つめる。ゆっくりと鍵は空中で回る。
窓から差し込む日に照らされてキラリと光り、その度に思うのだ。
自分にとってこれは何の鍵か
喜びという感情の扉を開く鍵。
過去の思い出を思い出す時に使う鍵。
綺麗なのだ。
だが、どこか足りない。
けれど、見ていて飽きない。
その様は、人間のよう。
俺はこの鍵を何に使いたいか。
いつかこの鍵が俺の開きたい扉の鍵であるように。
この鍵を使う扉に会えるように。
「またな」
きっとまたこの鍵と会えるだろうから。
それまでの間はこの鍵を大切に閉まっておこう。
引き出しの中に鍵を閉まい、先程まで読んでいた本のページを捲る。
そのページには俺の閉まった鍵と同じ鍵の絵が描かれていた。
アンティークものを色々見たいなーと思いながら書きました。