5話 もうひとつの結末
ある日の練習終わり。皆が帰る中、一人黙々と素振りを続ける高校球児がいた。
「精が出るな」
「あ、ああ……」
声の主は、龍山学院のエース。大村航大であった。
「なあ、倉田」
「何だ?」
「高校でも、続けてたんだな。野球」
航大は言った。
「当たり前だ。俺のやりたい事なんだから」
倉田 政弘。打撃も守備もそつなくこなす万能型の選手で、三塁を守っている。
彼は一年ながら紅白戦で航大率いる一年チームとして出場し、そのままレギュラーになった。
「もう、無いんだっけ。お前が居たチーム」
「ああ。俺たちの卒業とともにチームは解散したよ。あのときは世話になった」
航大と倉田。二人には全く接点がないように見えるが、実は違う。
「まさか、航大が転校してくるなんて思っても居なかったよ、あのときは酷かったな」
二人はある思い出話を懐かしむように、談笑を続ける。
それは誰も語ることのなかった、もうひとつの終わりの話であった。
二年前。航大は、ある試合で居場所を失った。
復帰に時間のかかる怪我だけでなく、心も疲れ切った彼。そこに追い打ちをかけるように監督はこの世を去り、彼は逃げるように京都の町から出て行った。
今、振り返っても転校初日の航大の顔は酷かった。
両目にはクマ。ぼさぼさの髪に生気の抜けた面構え。
必要最低限の会話しかせず、いつもぼんやりとした表情。
かと思いきや過度な付き合いを避け壁をつくる。航大には、いつしか近寄りがたい雰囲気をまとっているように感じられたのだとか。
クラスメイトからは早くも避けられ始め、彼がクラスから孤立するのは時間の問題だった。
そんなある日の放課後、航大に声をかけてきた二人組の男女がいた。
「よう、今日も眠そうだったな」
「……ああ」
倉田だった。これが航大が彼とした最初の会話である。
「お、さっそくぼっちの倉田くん。友達をつくろうと躍起になってますねぇ」
もう一人はおどけた調子で倉田をからかう女子、水谷。
「ぼっちは余計だ。俺は友をつくれないんじゃない。つくらないだけだ」
「またまた~。できないんでしょ! どっちも一緒みたいなもんだから」
航大の横で、勝手に会話が展開していく。航大はただそれを聞き流していると、ふと話を振られた。
「で、部活は決めたのか?」
「いいや」
部活など、航大にやる気はない。府を跨いでいるから、自身の噂などないのは当たり前だが、どうもその手の話題は苦手だった。
「なら、うちのクラブチームとかどうよ?」
「クラブチーム?」
何をやらせる気だ、と航大は疑いの目を向ける。
「和泉丘シニアって野球のチームだ。人数はギリギリ九人なんだが、大歓迎――」
嫌な予感はしていた。悪気はなかったかもしれないが、航大にとっては苦痛だった。
「いや、よしておくよ。野球は興味ない」
きりきりするような胸の痛みを我慢し、平然を装って断りを入れる。
だが、水谷もそう簡単に引き下がらない。
「ま、マネージャーとかでも歓迎……してるんだけど、どうかな?」
彼女もグルだった。後から聞けば、二人は小学校からの幼馴染らしい。
「やめてくれないか」
航大はその一言で二人を黙らせた。
「俺はもう、何もしたくない」
航大はそう言って教室から去った。二人は航大を追いかけては来なかった。
それから勧誘もなく日は過ぎていき、彼らと話すこともなく季節は冬。
航大は完全にクラスから孤立していた。
が、彼がそんなことを気に掛ける様子はない。
他人などどうでもいい。
そんな思考が彼を支配していた。
どうも、野球を辞めてから動かない生活を続けていると、体が鈍ってしょうがない、と航大は思っていた。
体育の時間、いつもより体が重いことに気がついてこのままではまずいと感じた航大は、軽く運動を始めた。
見るのも嫌だった野球道具。
だが彼は学校生活を送る中で野球に対する嫌悪感を次第に忘れていき、グローブをはめてボールを握るところまでできるようになっていた。
まだ投げることはできない。肩は完治したとはいえず、まだ腕を振り回すと痛みが走る。
「もう無理、か」
痛みなど、航大にとってはどうということはない。だが、問題は心の部分だった。
してしまったことは、かつての仲間がどう思おうが航大の責任である。
試合に負けたことも、監督の死も全部抱え込んだ。
自分が野球の表舞台から去ることで、なかったことに。そう航大は考え、野球から離れた。
だが、野球の神様は意地が悪い。
『なら、うちのクラブチームとかどうよ?』
もう二度と、あんな思いはしたくなかった。それなのに。
「頼む! お願いだ!」
倉田は言う。
たとえ何度頼んでこようが同じこと。航大は断った。
「その話はもう断ったはずだ」
「私からもお願い!」
水谷も頭を下げる。二人揃って、何をしている。と航大は呆れ顔で軽蔑の目で二人を見る。
「これ、見たんだ。お前すごいやつだったんだな! 力を貸してくれないか」
手には一年前の雑誌。そこにあるのは一年時、エースナンバーをつけた北近畿シニア時代の航大の姿。
「やめてくれ、って言わなかった?」
「それは……その。お前が野球辞めた経緯は詳しくは知らない。それでも野球経験者として助けてほしいんだ、俺たちを」
助けてほしい。彼と彼女の目は真っすぐ航大を捉えていた。
「助けて、ほしい……?」
水谷が説明する。
「昨日、うちの選手一人が怪我しちゃって。肉離れ。最後の大会には出られないって……」
「ポジションはどこだ」
「え?」
きょとんとした水谷の顔。気が抜けそうになったが、航大はなんとか平静を保つ。
「どこだ、と聞いている」
「あ、ああ……。外野だ」
そう聞いて、航大は息を吐いた。
(投手、じゃないのか。それならやれる余地はある)
だが外野に要求されるのは広い守備範囲と肩の強さ。航大の肩はまだ満足に動かない。
「たった一試合でいい。今のうちではどことやっても初戦すら勝ち上がれない弱小チーム。最後の思い出にしたいんだ」
「最後……?」
航大は気になった。中学最後とはまた違った意味の『最後』。
その意味を知ったとき、航大は目を丸くした。
「和泉丘シニアは、解散するんだ」
「解散……?」
水谷が事情を言う。
「ええ。選手九人、マネージャーの私を含め全員三年生だからね」
次の大会で全員が卒団。メンバーはゼロで活動休止となり、実質解散となる。
「まだ、わからないだろう。下級生に声をかければ入ってくれるかもしれない。だからーー」
「それじゃ、駄目なんだ」
明確な否定をされ、眉にしわを寄せる航大。
その理由を問うと、どうしょうもない答えが返ってきた。
「……私、実は来年の夏に転校するんだ」
水谷の転校とチームへの影響には大きな繋がりがあった。
和泉丘シニアは彼女の母が保護責任者としてチームの監督を務めている。
彼女一家がこの街を離れるということは、チームの運営ができる人はいなくなる。
よそに頼むのも難しいことから、次の大会を最後にチームを解散することにしたのだとか。
「だから、最後なんだ。このチームが俺たちの居場所だった」
居場所。航大にとっては反応せざる負えない言葉。
言葉はずしりと航大の心にのしかかる。
居場所があることが、人の生きる理由にもなるこの社会。
失えば、生きづらくなる危うさを持つ。その重みは航大が誰よりも知っている。
「仕方ない奴らだ。一試合だけだというなら、いいだろう」
「ありがとう! 本当に助かる!」
「よかった……!! 本当に……」
二人の暑苦しさに鬱陶しさを感じながらも、それほど彼らのことを嫌っていないことに航大は気づく。
(野球を始めたあの頃に。まだ不得手なことが多かった時期と重なるものがあるのかもな)
そんなことを思い、紆余曲折ありながらも中学最後の大会へと航大たちは進んでいく。
航大が助っ人として入る練習初日。
それは北近畿シニアと比べてはいけないほど、目も当てられない有様だった。
(こりゃ、どんなチームが相手でも負けは必至だな)
トンネルや憶測誤って頭を越す打球。もはや守備の形を成していない。
何も期待などしていない。してはいけないと思いつつ、強豪チームにいた航大としては、勿体無さが心に残る。
「きちんとした指導者がいないだけでここまで違うとは」
「……その、前いたチームはそれだけ凄かったの?」
水谷が聞いてくる。
「ああ。気を抜けばポジションを取られる。俺にとっては居場所である反面、追い抜かれることへの恐怖はあった。今となってはもうどうでもいいことだが」
「そう……なんだ」
水谷は何も言わなかった。自分と違う世界で生きてきた人間を目の前にして言葉が出ないのだろう。
そう、彼女も倉田も航大とは違う。
「楽しくもあったし、悔しい思いもした。やりきった部分もあれば、もっとやれたと感じることもある」
中二で野球を辞めることになるとは思わなかったが、心のどこかでは納得していた。
「大村はさ、どうするの?」
「……わからないな」
野球がすべてだったから、それを失えばずっと心に穴が空いたまま暮らしていく。そんな未来が航大に想像できた。
「野球は……これっきり?」
「だろうな。今は続けたいという気にはどうしても、な」
航大は簡単な挨拶を終え、その日の練習に取り組んだ。とはいっても北近畿シニアにいた頃の練習メニューとは遥かに違い、ぬるいものだった。航大にとってはかろうじてリハビリになるかといった程度。
だが、ぬるま湯に浸かろうと関係ない。
できるならコールドゲームではなく、七回までやった上で最後の試合を成立させる。
それが彼らの望みである。
そのためにできることを航大は考えた。
守備は今すぐにでも手を付けたい。
だが新参者が指示をしても煙たがられるだけだ。それに航大自身が目立って変に騒がれるのは何としても避けたかった。
考えた末、航大は倉田や水谷を通じて思ったことを伝えることにした。彼らの言うことならチームメイトは素直に聞くだろう。
その効果は確実にあった。
黙って見るのが堪えられない守備は少しずつ改善され、たまにエラーこそあるがその数は格段に減った。
それだけで十分、彼らはよくやっている。
航大はその様子を見守る……。
秋、冬と季節が移り変わり、桜につぼみがつく季節になった二月終わり。
あれから週一回というペースでチームでの練習に取り組んだ。
航大はリハビリにはなるかといった程度の練習量をこなし、来るべき日に備えていた。
まもなく、航大たちは中学の最高学年になる。
新たな春の訪れは終わりの始まり。
航大、倉田、水谷の三人は練習後、レストランに来ていた。
「いよいよだな、最後の大会」
「ああ」
「早いものね」
最後の瞬間は確実に近づいていた。
「本当に無くなるのか……。実感ないな」
チームは春の大会の終わり、敗退で活動休止。管理する人もいなくなるので実質解散である。
静寂が流れる。
「……終わる瞬間に立ち会える経験なんてなかなかないよね!」
水谷なりの冗談のつもりだったが、誰も笑わない。笑えないのだ。
「お互い、試合が終わったあとどうするんだ?」
航大は二人に尋ねる。
「私は向こうでもマネージャーとして野球に関わりたいって思ってる」
「俺はどうだかな。多分野球はこれっきりかな。野球の実力はいまいちだし、続けてもずっとベンチ外だろうし」
お互い対照的である。航大はそうか、とだけ返し詳しく聞くようなことはしなかった。
ただ、一言だけこう告げた。
「後悔だけはしないようにな」
日は過ぎ、ついに運命の日がやってきた。
結末はとうに見えている。
明らかな負け戦だが、泣くも笑うも和泉丘シニア最後の公式戦。花を添えるべく、航大はスパイクの紐をぎゅっときつく縛った。
ライトを守る航大は試合の様子を見守る。
相手は航大から見れば大したことない相手。だが、今は所属チームが違う。彼ら基準では到底敵わぬ相手だということを忘れてはならない。
初回。早くもチームは綻びを見せた。
二アウトまでは練習通り。そこから簡単なフライをうっかり落とすと、あっという間に四失点。
後続を断ちベンチに戻ると、早くも選手たちから実力差を嘆く声が聞こえた。
「まだまだこれから! いくらミスしてもこれが最後の公式戦なんだから、練習でやってきたこと出し切ろう!」
マネージャー水谷がチームを鼓舞する。監督役の水谷母はただ黙りその様子を見守る。
(あくまで顧問……か。北近畿とは違うが、このチームも悪くない)
どこか心地よさを感じ始めた航大だったが、終わりは近づいていた……。
試合は進み、なんとかモチベーションを保っていた選手たちも集中力が切れ始める中盤。
和泉丘の選手たちは精一杯やっている。回が進むに連れて失点は減り、ついに。
打球が飛ぶ。難しいライン際。取れば攻守交代。航大が守る外野の前に落ちそうな打球。
気がつけば体が動いていた、とでも言うべきか。
彼は打球に突っ込み、球を地につけることなく捕った。
「ナイスプレー!」
「さすが助っ人!」
五回初めてゼロに抑えたことと、航大のファインプレーでベンチは明るくなった。
だが五回までに七失点している和泉丘には別の問題があった。
「この回で終わりか……」
そんな弱気な声が聞こえる。
無理もない。コールド規定は五回以降七点差。つまり、この回一点取れなければ試合が終わる。
二アウト。最後の一人は大村航大。彼自身も打撃は得意ではないため期待されても困るのだが、和泉丘は、航大以外で期待できる打者がいない。
やれやれ、と息を吐く航大。
ベンチでうなだれる選手たちに向かって彼は言った。
「居場所は求めるものではなく、自らつくり、切り開いていくものなのかもしれない。それがお前らと何ヶ月か助っ人として関わって得たものだ」
「航大……」
倉田は彼を真っ直ぐ見る。
「俺は打撃は苦手だ。それでも希望の一端くらいは見せられるかもな」
航大自身が決めるのではない。少なくとも今の主役は彼ら、和泉丘の選手たちだ。
「だから、その後は頼むぜ器用貧乏。最後くらいは良いとこ俺や水谷、チームのみんなに見せてくれ」
この打席だけでいい。
彼らにとっても、俺にとっても最後だ。
色々散々な目にあって、運にはとことん見放されたが……。
最後くらいは、野球の神様らしいことをしてくれ!
初球、真ん中高め。
何千球のうち幾度と見てきた甘い球を航大は振り抜いた。
左中間を真っ二つに割るような鋭い打球が飛んでいく。
航大は一塁を回り、二塁を陥れた。
「繋いだ!!」
奇しくもこれがチーム初安打。あとは彼に託す。
「倉田くん……」
水谷は倉田の背中を見つめ、その姿を見守る。
「全く……俺は器用貧乏じゃねえっての!」
彼は打席に立つ。重いバットを握りしめて。
何でもそつなくこなせど、極めるに至らず。
それが倉田政弘のこれまでである。
「俺だって……三年、ただ野球をやってたわけじゃない!」
初球の真っ直ぐを力んで空振りする。
あえてフルスイングしたことで、迷いは消えた。
(夢。全国の舞台。たどり着けはしなくても、いつかは足を踏み入れたかった。今度こそはってそう思った)
天才とは航大のことを言うのだろう。倉田自身との差は歴然なのだと。
(全国の舞台で躍動する大村航大。あの記事を見て、すごいと思った。住む世界が違うんだと思ってた)
だが、彼も一人の人間だということを知った。彼にだって悩み悔やむことがあることを知った。
(最初は嫌々だったが、ここまで協力してくれた。せめて、あいつにホームを踏ませたい!)
二球目。緩い変化球にタイミングが合わず、バットが早く出た。
(当たれ……!)
辛うじてバットの先にボールが当たりファール。
(格下相手に遊び球はない。変化球を見せて、次は直球。ヤマを張る!)
三球目。無我夢中でバットを出す。その間もなくして、今までにないほど重い感触が倉田の両手に伝わった。
「飛んでけ!!」
大飛球は、外野の頭を越し――。
倉田は半信半疑のまま、駆け出す。
一塁を踏んだあたりで、外野手が呆然と打球を見送るのを見て、確信した。
「入った……!」
和泉丘シニアの選手たちが大喜びでベンチを飛び出す。
航大がホームを踏み、少し遅れて倉田が帰ってくる。
まるでサヨナラ打でも打ったかのような盛り上がりだった。
航大が、チームメイトが出迎える。
「やるじゃん、倉田」
「お前のお膳立てのおかげだ。ありがとな、航大」
倉田はこの日のことを絶対に忘れないだろう。初めて彼を下の名で呼んだことも。
和泉丘シニアは全力を出し切った。
コールド負けを防ぎ、最後まで戦い抜いた。それでも勝負の世界はときに非情に試合の幕を引く。
「ストライク! バッターアウト!」
最後の打者が倒れ、和泉丘シニアは最後の大会を終えた。
泣く者もいれば、清々しい表情のものもいる。
航大はその様子を遠目で見つめていた。
そして、自身の野球の本当の終わりを実感する。
(これで、本当に終わったんだな。全部、やり切った。これでいい……)
空は時間が経てども、雲一つなく青く澄んでいた……。
試合後、チームは解散し、それぞれの帰路に就く。
航大と倉田、水谷の三人はまだ球場最寄りの駅前に残っていた。
「終わったね」
「ああ、終わった。でも最後にしてはかなりいい試合だったと思うな」
「そうね。これで和泉丘も終わりか……」
駅前の時計の短針が三を指し示し、三つの影は日が傾き始めていることを知らせる。
そろそろここを去る時間だと察した航大は言った。
「俺は、この辺で帰るわ。ありがとうな」
そう言うと、倉田は航大に問う。
「……本当にもう野球はやらないのか?」
未練などもうない。今日の試合で十分だ。と、航大は満足していた。
問題は彼の方だ。
「その言葉、そのままそっくりお前に返す」
「俺は……その……」
倉田は迷っているのだろう。
今日の一打は奇跡と呼ぶに等しい。故に不安なのだろう。
弱小チームの選手が高校でも野球を好きだと想い続けられるのか。
「ある一投一打が人を引き離すこともあれば、逆もある。くだらん事を気にして迷うな」
好きなら好きでいいじゃないか。
「ま、頑張れよ」
そう言うと航大は背を向けて手を振り、駅に向かって歩き出す。
「おう、じゃあな! それぞれの道で、いつかまた会うことがあれば……その時はよろしくな!」
「またね! 航大くん!」
倉田はそう返し、彼の背が消えるまで、二人は航大を見送った。
「あの、さ……」
「何?」
倉田は水谷に何か言いたそうにしていたが、何かを決心し言葉を発した。
「俺さ……もう一度野球やってみる」
「倉田くん……!」
彼の心は変わった。航大の一発は間違いなく彼の心に響いたのだろう。
「それでもし、全国に行けたらさ。そのときは俺とーー」
それ以上は、もしそうなったらの話。
「わかった。私も頑張るからさ。……待ってる」
二人は消えゆく夕日を見つめながら約束を交わした。
ある物語が終わり、その続きが始まる。
彼が彼女に会えたのか。
その後どうなるのかはまた先の話。
大村航大
龍山学院野球部一年。背番号一
ポジション 投手
経歴
新宿リトル→北近畿シニア→和泉丘シニア
→龍山学院
マイ・プレイス主人公。
かつて十年に一度と呼ばれた幻の天才。
とある理由より野球から離れたが、京子や中村との出会いがきっかけで野球の舞台へと戻ってきた。投球は140キロ台の直球に手元で曲がる変化球を練り混ぜ、打者を打ち取るスタイル。
打者の癖を見て、狙い球を絞る能力を身につけた。
彼がリトルシニアの頃の話は自分からしたがらない。
また、野球を一時辞め、高校入学までの一年ほどの空白があったが、野球から完全に離れていたわけではなく、解散濃厚の弱小チームの助っ人としてその最後を見届けた。
倉田政弘
龍山学院野球部一年。背番号五
ポジション 三塁手
経歴
和泉丘シニア→龍山学院
走攻守そつなくこなす器用貧乏。油断した相手に大飛球を放つといった、意外性の一面を持つ。
現在は存在しない和泉丘シニア最後の主将。
野球は中学で辞めるつもりだったが、航大が助っ人に入った和泉丘シニア最後の試合がきっかけで、もう一度野球をしたいと思うようになる。
水谷夏音 (かのん)
和泉丘シニア→???(現在不詳)
和泉丘シニアマネージャーで中学時代の倉田、転校してきた航大のクラスメイト。
和泉丘シニア最後の戦いを見届け、夏休み明けに家族の都合で転校した。
倉田も彼女が今どこで何をしているのか、詳しくは知らない。